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  • 2019/01/10 掲載

情報銀行とは何か? 総務省の動きと海外事例に見る「データ流通」の“成功条件”

連載:中西 崇文のAI未来論

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2019年は日本でも「情報銀行」の運用が動き出しそうだ。情報銀行は膨大なパーソナルデータを抱えるアメリカのGAFAに対抗する方法の1つとしても注目されている。本稿では「情報銀行が日本で成功するには何が必要か」と「どのような形でわれわれの生活に浸透するか」を考察してみたい。
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情報銀行とは何か
(© ra2 studio - Fotolia)

情報銀行とは何か?

 そもそも情報銀行とは何か。まず、総務省が2018年5月に「情報信託機能の認定に係る指針ver1.0」で発表した定義を示しておこう。
情報銀行(情報利用信用銀行)とは、個人とのデータ活用に関する契約等に基づき、PDS等のシステムを活用して個人のデータを管理するとともに、個人の指示又は予め指定した条件に基づき個人に代わり妥当性を判断の上、データを第三者(他の事業者)に提供する事業。
 つまり、情報銀行とは、ユーザーから預かったデータをそのユーザーの同意する範囲で運用し、そこから得た便益をユーザーに還元する仕組みを指す。

 各ユーザーからデータを預かりセキュアに管理しながら、そのユーザーごとのポリシーを守りつつ運用し、便益をユーザーに返す新たな形のプラットフォームと考えてよい。

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情報銀行とは

(出典:内閣官房IT総合戦略室「AI・IoT時代におけるデータ活用ワーキンググループ」)


 総務省の情報銀行の定義で言及された「PDS(Personal Data Store)」も説明しておこう。これは、「個人が自らパーソナルデータを事業者に与えるかどうか管理できるシステム」のことである。蓄積、管理するデータについて、個人が第三者へ提供するといった制御機能を有している。

情報銀行が動き出した背景

 日本はアメリカや中国のようなパーソナルデータの流通が盛んではなく、その商業利用には警戒が強かった。その潮目が変わったのが、情報を匿名化すれば積極的にデータを活用できるようになった2017年5月の「改正個人情報保護法の施行」、そしてこの2018年の後半であると筆者は感じている。

 この10月19日、総務省と日本IT団体連盟は「情報銀行認定」に関する説明会を開催。そこには金融、情報通信などさまざまな事業者200社が集まった。

 そもそも、情報銀行について、ビッグデータ流通の環境整備を目指す「官民データ活用推進基本法」(2016年12月に施行)に基づき検討が重ねられ、任意の事業者認定制度が実施されることが望ましいとされていた。今後、日本IT団体連盟がこの審査・認定を担い、2019年3月には認定第1号を出す予定だ。

 この動きもあり、さまざまな企業が情報銀行の実証実験の話題や情報銀行に関するサービスリリースのニュースが多く流れるようになった。

 情報銀行は、下記の5つの要素を持つ。
1.パーソナルデータをセキュアな環境に保持する
2.パーソナルデータが個々のユーザーのものであることをはっきりさせる
3.パーソナルデータがどこにどのように使われているのかをはっきりさせる
4.パーソナルデータの使い道ユーザーが明示的に選択、決定、コントロールできる
5.パーソナルデータの運用で得られた便益をユーザーに還元する

 つまり個々のユーザーからパーソナルデータを預かり、セキュアな環境で管理し、そのパーソナルデータを個々のユーザーと合意したポリシーに則って第三者への提供など運用をし、その運用で得た便益をユーザーに還元するものである。

 通常の銀行の預金→運用→利息の流れにならって、情報銀行ではデータの預託→運用→配当という流れになる。

情報銀行はOne To Oneマーケティングに不可欠

 そもそもパーソナルデータを利活用するニーズが企業から挙がる理由は何か。

 それは、これまで把握できなかった個人のさまざまなデータを集約することによって、個々のユーザーについてより深く知り、そのユーザーごとにカスタマイズされたサービスを提供可能にすることだ。

 つまり、一人ひとりに合わせたマーケティング活動を実施するOne To Oneマーケティングが可能になることがメリットというわけだ。

 パーソナルデータの利活用は、企業にとって「個々のユーザーの行動をより深く知り、その行動から得られるニーズをいち早く気づき、そのニーズに応えるサービスを提供する」といった当たり前の活動に位置付けられる。より顧客満足度を上げるためには、パーソナルデータの利活用は切っても切り離せない。

【次ページ】情報銀行パーソナルデータ流通プラットフォームになるか
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