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  • 2018/04/02 掲載

ビッグデータ全盛の時代に「スモールデータが重要」と叫ぶワケ

新連載:中西 崇文のAI未来論

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昨今、人工知能(AI)という言葉を耳にしない日がないほど、頻繁に取り上げられている。実際、AIは我々の生活にも浸透しつつあるが、そのブームを支えているのは「ビッグデータ」であると言っても過言ではないだろう。ビッグデータの分析の仕方によっては、これまで気付かなかった新たなインサイトを導き出すことが可能だからだ。ではAI時代において、ビッグデータがなければイノベーションを起こすことはできないのか。実は、必ずしもビッグである必要はないと筆者は考えている。

武蔵野大学 データサイエンス学部 データサイエンス学科長 准教授 中西 崇文

武蔵野大学 データサイエンス学部 データサイエンス学科長 准教授 中西 崇文

武蔵野大学 准教授、国際大学GLOCOM主任研究員
1978年、三重県伊勢市生まれ。2006年3月、筑波大学大学院システム情報工学研究科にて博士(工学)の学位取得。2006年より情報通信研究機構研究員。ナレッジクラスタシステムの研究開発、大規模データ分析・可視化手法に関する研究開発等に従事。2014年より国際大学GLOCOM准教授・主任研究員。データマイニング、ビッグデータ分析、分脈構造化分析の研究に従事。2019年から武蔵野大学 データサイエンス学部 データサイエンス学科長 准教授。国際大学GLOCOM主任研究員、デジタルハリウッド大学大学院客員教授。専門は、データマイニング、ビッグデータ分析システム、統合データベース、感性情報処理、メディアコンテンツ分析など。

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AIは非常に身近な存在となった
(©chombosan - Fotolia)

データからモデルを創るAI

 現在のAIが優れているところは何かというと、学習により自動的に判別、判断、予測、意思決定する能力を持つところにある。たとえば、顔認識は、学習により自動的に誰かを判別する能力を指す。学習という点も押さえておかないといけない。

 顔認識の場合、目の形が切れ長だから○○さんであるなどという細かなルールを入力しなくても良い。学習によって自動的にそういったルールを自ら獲得できるのだ。このような学習を実現するのに必要となるのが、データだ。

 これまで、人が大量のルールを作り出し入力することが必要であった。そのルールを人が作り出すことの限界があった。しかし、今日、学習は、データによって人が大量のルールを入力する手間を省くことができるようになった。

 これは、AI技術として学習機能が向上したことが大きい。しかし、もっと大切なことは、インターネットによって大量にデータが散在し、利活用できる環境が整ったことにある。学習のためのデータは、その環境を通じて手に入れられるようになったのである。

 これは、人が作っていた公式やモデルをAIがデータにより生み出すことができるようになったともみることができる。

データさえあれば、さまざまな法則の導出や意思決定を自動化できる

 これまでの物理法則をはじめ、さまざまな公式のほとんどは、偉大な先人によって作られたものである。

 また、伝統工芸などは、職人や匠(たくみ)と呼ばれる人が長年の経験から勘やコツというものを積み上げることによって生み出された。勘やコツは、潜在的なものであるが、これを表出化することができれば、公式やモデルといったものになるだろう。

 このように、人は、自身の経験から、その経験を一般化するような公式、モデルを作り出し、その公式、モデルにのっとり、現状を把握したり、予測したり、意思決定をしてきた。

 したがって、AIについても、過去のデータから、人の手を借りることなく、公式、モデルを学習という機能によって作り出し、意思決定することができるのではないか。つまり、データさえあれば、我々はAIを使って、自動化できるというわけだ。

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データさえあれば、我々はAIを使って自動化できる
(©chombosan - Fotolia)

 実は、自然科学においても、これは大きなパラダイムシフトだ。これまで、科学者が経験から公式やモデルをつくりあげていたが、AIは、データから公式、モデルを自動生成し、現状を把握したり、予測したりすることができる。データがその世界を知るための根源になるという考え方だ。このような科学を第4の科学、データ中心科学と呼ぶこともある。

 昨今のAIブームは、もちろん技術の進展も重要であるが、それよりも、データドリブンに物事を考えられるかが特に重要である。つまり、どのような領域、分野に着目し、どのようにデータを取得し、そのデータを活用し、新たなインサイトを導き出し、社会に展開するかが鍵となるのだ。

【次ページ】スモールデータで独自のインサイトを発見する

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