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これまで多くの組織において、データアナリティクスはIT部門が管轄してきた。しかし近年、ユーザー部門・現場におけるセルフサービス型のアナリティクスとデータ・サイエンスを推進する組織「ACE(アナリティクス・センター・オブ・エクセレンス)」を設置する企業が増えてきた。ACEはどのような役割を担い、組織に働きかけているのか。ガートナーのディレクター , アナリスト、ジュリアン・サン氏が解説した。
アナリティクスの4つの段階
企業においてデータアナリティクスを推進するに当たり、その推進役に「ACE(Analytics Center of Excellence)」といったチームが置かれることが増えてきた。
ガートナーのサン氏は、「BICC(Business Intelligence Competency Center)という名前にしている企業もあるかもしれない。データウェアハウスに基づいて複数の分析をただ行うだけではなく、仕事の範囲を広げて、ビジネス部門へのサポート機能を追加したり、インサイトを提供したりしたい場合は、ACEという名前を採用することも考えてほしい」と話す。
ACEのゴールは、価値の高いアナリティクスを提供することであり、そのアナリティクスの段階は難易度と価値により4つに分けられる。
1.記述的アナリティクス
「何が起きたのか」を伝えるもの。たとえば、マーケティングあるいは営業の実績データを、グラフなどを使って可視性を提供し、ダッシュボードなどで示す。
2.診断的アナリティクス
記述的アナリティクスで分かりやすく可視化されたデータに対し、「なぜそのような結果になったのか」を分析して示すもの。
3.予測的アナリティクス
データと分析を基に、マーケティングの予測をする、顧客の行動分析をする、不正検知する、リソース割り当てに使うなどの予測を示すもの。
4.処方的アナリティクス
エンタープライズの意思決定モデルに基づく包括的な分析モデル。「組織としてどのような行動をとれるのか、何をすべきなのか」を具体的に示し、組織の意思決定をサポートする。
予測的アナリティクスを魔法の杖のように考えている人が予測モデルをつくっても本当に使えるのはごく一部に過ぎない。そして「処方的アナリティクスができている組織は非常にまれで、できていても実験的なレベル。すべての組織に、すべての場面で適用できるものではない」という。
なお、処方的アナリティクスは方向性としては目指すべきものだが、そこに必ず到達しなくてはいけないわけではない。ビジネスにとって価値の高いアナリティクスを提供するというゴールを改めて確認しておく必要があるだろう。
ユーザー部門のセルフサービス化を進める必要性がある
では、そのゴールを達成するために、どのような組織モデルがふさわしいのだろうか。長年企業は、さまざまなシステムを集約し、中央型・集中型のチームを置いてきた。そして、中央のチームが、組織内に分散しているさまざまな部門(カスタマーサービス、マーケティング、営業など)に対してサービスを提供してきた。
しかし今後、人材が減っていく中で、集中型チームではリソースの不足が予測される。組織がそのアナリティクスをある程度の規模感をもって実現する上で、それがボトルネックにすらなることがあるだろう。
集中型になるのを避ける理由はもう一つある。通常、アナリティクスに関して外部のコンサルティングサービスを使うことは難しい。その企業の行っているビジネスや業界・領域、社内の政治的な力関係を理解するのにかなりの時間を要するためだ。
「集中型が進んでいるACEも、それと同じような問題を抱えがちだ」とサン氏は話す。つまり、IT部門はデータやツールには長けているが、分散した各部門からの専門性の高いリクエストを、IT部門の人間が十分に理解することは難しい。それにより、対応に必要以上の時間がかかる、アナリティクスそのものにも専門性の不足が反映されることになる。
では、分散型がよいのだろうか。分散化すれば、確かにリクエストへのレスポンス速くなり、専門性も担保されるだろう。しかし、あまりに分散化が進むと、各部門でのセルフサービスの側面が強くなりすぎるのも問題がある。組織全体でデータの一貫性が失われ、ベストプラクティスの共有がなされにくくなる。
そこでサン氏が提言するのが、各部門にACEとの窓口となる「データ担当者」を据えることだ。「各部門のメンバーの中で、毎日データを見ている人、非常に高いレベルのデータリテラシーを持っている人、分析に長けている人を見つけてほしい。彼らとACEとの協業によって、アナリティクスの価値をさらに高めることができるだろう」(サン氏)。
【次ページ】「プロトタイプ・ファースト」のアプローチを採用する
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