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  • 2013/07/02 掲載

サントリー、ベネッセ、常陽銀行が語る、企業Webサイト構築・リニューアル成功の秘訣

ユーザー調査でわかった驚くべき事実とは!?

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今や企業のWebサイトは、宣伝や広報の媒体としてのみならず、顧客との関係を強化するうえでも重要な存在になった。しかし、Webサイトを確実にビジネスに結びつけることができている企業は、まだごく一部に過ぎないのではないだろうか。こうした中、サントリー酒類やベネッセコーポレーション、常陽銀行らが取り組んでいるのが、徹底した顧客志向のWebサイト戦略だ。その重要性について、サントリー酒類の室元隆志氏は「ユーザーをしっかり見つめないとWebビジネスは成功しない」と指摘する。各社担当者が、自社のWebサイトの構築やリニューアル時、キャンペーン時に行った成功事例や失敗事例について、つまびらかに語った様子をお届けしよう。

顧客を知って得た「体験」

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サントリー酒類
デジタルマーケティング開発部長
室元隆志氏
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常陽銀行
営業統括部
調査役
丸岡政貴氏
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ベネッセコーポレーション
家庭学習事業本部
デジタルマーケティング部
事業戦略課
課長
川崎洋氏
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ビービット
取締役
武井由紀子氏
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Web担当者Forum
編集長
安田英久氏
 企業のWebサイト構築、あるいはリニューアルにおいて、徹底した顧客(ユーザー)視点を取り入れることで、企業のビジネスに直接貢献する仕組みを実現する企業が増えてきた。

 5月27日に行われた「『ユーザ中心ウェブビジネス戦略~顧客心理をとらえ成果を上げるプロセスと理念』出版記念セミナー(ビービット主催)」では、ユーザー中心のWebビジネスに取り組んだ企業の担当者が一同に介してパネルディスカッションが行われた。

 登壇者は、サントリー酒類 室元隆志氏、常陽銀行 丸岡政貴氏、ベネッセコーポレーション 川崎洋氏、主催のビービット 武井由紀子氏。モデレータはWeb担当者Forum 編集長 安田英久氏がつとめた。

 本ディスカッションではまず冒頭、モデレータの安田氏が「ユーザー観察の中で、企業担当が顧客を知るということはこういうことなのか! そりゃそうだ! と感じた体験」を登壇者に問うた。

 この質問に対して口火を切ったのが、ベネッセコーポレーションの川崎洋氏だ。通信教育で知られる同社は、Webサイトのリニューアルにより、わずか1ヵ月足らずで新規入会申し込みの年間目標を達成した成功体験を持つ。

 とはいえ、以前は「なぜ入会申し込みをしてくれないのか悩む日々もあった」(川崎氏)という。同社はWebのほかにもテレビCMやDMなど、さまざまなプロモーション活動を行っていたが、DMとWebサイトがほぼ同じような内容であった。そのような中で川崎氏は、サイトリニューアルを進めるうちに、ユーザーの身になってみると「そりゃそうだ!」と気づいたことがあったという。

 価格がよく分からないということはその1つだ。

「Webサイトは子供よりも保護者である親が見るもの。サイトにアクセスする前にDM等などでぐらいだから通信教育に興味があり、価格を知っているのは当然だと思い込んでいた。しかし実際のユーザーである親の行動を観察してみると、入会ボタンを押す瞬間にこそ、いくらになるのか改めて確認したくなるのがわかった。。そこで入会ボタンの近くに価格や途中退会できるのかなど、申し込み前に気になることが分かる工夫を凝らすと、すぐにコンバージョンが上がった。」(川崎氏)

 このようにユーザーを観察してみると、企業担当者が想像もしない基本的なところでつまずいていたことが分かるケースも多い。

 「ユーザーをしっかり見つめないとWebビジネスは成功しない」と語るのは、サントリー酒類の室元隆志氏だ。同社は、サントリーのビールをおいしく飲めるお店を紹介する「サントリーグルメガイド」というページを自社サイト内に展開している。

 そのWebサイトで静岡のおいしい鰻店を紹介し、その鰻店へとWebから送客することで、自社ビールも飲んでもらおうというものだ。

「当時、“静岡 鰻”というキーワードで月間に検索される数は数十万件もあった。そのためWebサイトで特集を組めば、数万人ぐらいは集客できると思った。しかし、いざフタを開けてみると店舗のサイトにアクセスする人が少なくて愕然とした。」(室元氏)

 そこで実際のユーザーの行動を見つめ直して、3日目ぐらいのデータを調べてみると、“三島 鰻”や“浜松 鰻”ならばコンバージョンしていることが判明。実際に店舗を訪れるようなユーザーは、自身のいる狭い地域で検索を行っており、当初のキーワードである“静岡 鰻”で検索する人は静岡の鰻をお取り寄せする人ではないかと思い当たったためだという。

「お客さまの実像を見ないで、数字だけで企画を立てたことが、コンバージョンが少なかった要因。ユーザー行動を見ないといけないかということが身にしみた」(室元氏)。

 最終的には、特集を“静岡”から“浜松”と“三島”の2つに分けて、それぞれの特集に「浜松 鰻」「三島 鰻」というキーワードで検索するユーザーを集客するように対策したところ、期待通りのユーザーが集まったという。対象ユーザーが実際にどういう気持ちでどういう行動をとるのかを理解しなければいけないという教訓だ。

ユーザーをよく分かっていないと、ビジネスもうまくいかない

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 またサントリー酒類では、ビールギフトをカタログでアピールする際に、当初は“シズル感(食欲や購買意欲を刺激するような印象)”があるような、ジョッキについだビールのクリエイティブを作成していた。

「飲む人に向けたカタログであれば、これでよかったのかもしれない。しかし、実際にギフトを検討するお客さまに聴いてみると、贈られた方が箱を開けた際に良い印象を持つのかどうかを重視する。そのため、ジョッキのクリエイティブでは、シズル感がいかにあってもカタログとして効果をあげることは難しかった。そういうユーザーの視点をよく分かっていないと、ビジネス的にうまくいかないことがある。」(室元氏)

 茨城県を主要地盤とする地方銀行である常陽銀行も同じような経験をしたという。

 常陽銀行の丸岡政貴氏は、「当行は預金や融資取引において、県内のほとんどの地域で約4割のシェアがある。そのため、自分たちは、地場の顧客を十分に理解しているはずだと思い込んでいた面があり、わざわざユーザーの調査をしなくても、使いやすい他社のWebサイトを真似ればよいのではないか、という雰囲気があった」と話す。

 しかし、水戸・つくば・宇都宮で調査を開始すると、驚くべき事実が分かったという。

「本店のある水戸では想定していたとおり、住宅ローンを申し込むなら、まずは常陽銀行というユーザーが大半だった。しかし、水戸から距離があるつくばでは想定外の結果となった。同じ茨城県で、シェアも相応に高いにも関わらず、まず常陽銀行の認知度が低い。実際にこうしたユーザーは“住宅ローン 茨城”というキーワードで検索することが多いのだが、当行のWebサイトを見つけられないケースが続出した。」(丸岡氏)

 これまでは、あまり認知度に地域差はないという理解だったが、こうした結果を踏まえて、ユーザーの調査をしっかり実施しないと、実際のお客様は把握できないと感じたそうだ。

 このように、Webサイトを使う実際のユーザーを観察・調査する手法は、ビービット武井由紀子氏の著書『ユーザ中心ウェブビジネス戦略』によると、“ユーザー行動観察”と呼ばれる。

 ユーザー行動観察調査は、<Webサイトのターゲットユーザーとなりうる人に実際にサイトを使ってもらい、そのときの情況、行動、発話を観察することで、サイトに関する仮説を検証する方法>と定義されている。この行動観察によってWebサイトの評価と修正を繰り返しながら、最適な形に収斂していく反復プロセスが、ユーザー中心のWebサイト設計には欠かせないものだ。「Webサイトを成功に導くには、予算やスケジュールがどんなに厳しくても、この作業だけは必ず行うべきもの」(武井氏)という。

【次ページ】まずは簡易的なユーザー行動観察調査を!
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