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- 2021/07/22 掲載
「2021年版 交通政策白書」の要点を解説、コロナ後の交通はどう進化する?
連載:MaaS時代の明日の都市
「交通政策白書」には何が書かれている?
白書。ニュースなどで見聞きするわりには、言葉の意味を知らないという人もいるかもしれないので簡単に説明しておくと、政府の各省庁が、所管する行政活動の現状や対策・展望などを国民に知らせるための報告書のことだ。今回紹介する「交通政策白書」は、交通政策基本法の規定に基づき、交通の動向および政府が交通に関して講じた施策・講じようとする施策について毎年、国会に報告するものだ。6月15日に閣議決定された2021年版(オリジナルは令和3年版としているが記事では西暦で表記する、以下同じ)では、下記の4部構成となっている。
- 第1部 2020年度交通の動向
- 第2部 コロナ禍を乗り換え、進化する交通
- 第3部 2020年度交通に関して講じた施策
- 第4部 2021年度交通に関して講じようとする施策
全体で300ページ以上というボリュームであり、全部は紹介できないので、要点を絞って紹介することにする。
交通を取り巻く社会・経済はどう変化?
まずは120ページ以上を割いている第1部。ここでは最初に交通を取り巻く社会、経済の動向を紹介しており、人口や国内総生産(名目GDP)といった基本的な統計から、パソコンやスマートフォンの保有状況といった身近なデータまでを詳しく紹介している。個人的に興味を引いたのは「就業者数」だ。少子高齢化の国なのに、2012年以降は増加している。女性と高齢者の就業者数が増加していることが大きく、鉄道や路線バスなどの定期券利用者数は増えており、全体での利用者も増加しているそうだ。
もちろん新型コロナウイルス感染症の影響についても触れている。たとえば、2020年の訪日外国人旅行者数は前年比87.1%減の412万人となり、1世帯当たりの公共交通運賃への支出は前年から50%減少したとある。国内・海外を問わず移動が全面的に自粛・制限されたことがわかる。
コロナの影響はやはり甚大だった
続く「輸送量とその背景および交通事業等の動向」という項目では、まず輸送量とその背景を紹介。公共交通の81.5%を鉄道が分担し、国内貨物輸送の実に91.9%をトラックが担当していることや、運輸部門の二酸化炭素排出量は全体の18.6%を占め、うち自動車が86.1%を占めていることなどが紹介されている。目を引いたのは、2020年度の新型コロナウイルス感染症による交通への影響として、貸切バス、乗合バス、タクシー、航空、鉄道、旅客船の各分野について、事業者への調査結果を載せていることだ。
最も落ち込みが大きかったのは、第1回の緊急事態宣言が発出された時期で、全分野についてほとんどの事業者が収入3割減となった。中でも貸切バス事業者は5割以上減少が最大97%、高速バスでは7割以上の減少が92%、航空機国内線は前年の1~2割、国際線は1割以下という深刻な数字が並んでいた。
一方でトラック輸送主要24社の輸送量は2019年と同程度の水準で推移しており、宅配便の個数は前年を1~2割程度上回っているなど、移動と物流で対照的な結果になったことがわかる。
【次ページ】移動に関する価値観はどう変化?
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