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  • 2021/05/21 掲載

崩れ始めたアリババ・テンセントの市場支配、中国テック企業は新たな競争フェーズへ

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4月、中国の市場監督管理総局は、独禁法違反があったとして、アリババに約3,000億円の罰金を科した。また、国内主要テック企業34社が呼び出され、違反行為がないかを調査し、1カ月以内にその結果を公表することを求めた。今回、違反行為として指摘されたのが「二者択一」と呼ばれる行為だ。特にアリババとテンセントは、それぞれが独自の経済圏を作り、傘下の企業にライバルのスマホ決済などに対応しないよう暗に求めてきた。新たなビジネスを着想したスタートップ企業も、アリババやテンセントという巨人と競争しなければならず、結局2社がどの市場も支配する状況が続いていた。今回の取り締まりによって中国テック業界の競争ルールは変化し始めた。
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アリババは独禁法に違反したとして罰金3,000億円を科された
(写真:AFP/アフロ)


3,000億円の罰金、34社の呼び出し……何があったのか?

 2021年4月10日、中国国家市場監督管理総局(市場監管総局)は、アリババに対して、市場での支配的な地位を乱用して「反壟断法」(独占禁止法)に違反する行為があったとして、2019年の営業収入の4%である182.28億元(約3,000億円)の罰金を科すことを発表した。

 しかし、事態はここで終わらなかった。4月13日に市場監管総局は企業行政指導会を開催。百度(バイドゥ)、テンセント滴滴(ディディ)、京東(ジンドン)、拼多多(ピンドゥオドゥオ)、美団(メイトワン)、字節跳動(バイトダンス)、携程(シートリップ)など34の主要テック企業が呼び出され、自社内に独禁法違反行為がないことを1カ月以内に調査し、その結果を公開することを求めた。

 違反行為があった場合は、アリババ同様、営業収入の一定割合を罰金とするなどの重い処罰が下ることになる。これにより、中国テック企業は成長戦略を大きく見直す必要が出てきている。

 市場監管総局が問題にしたのは、「二選一」(二者択一)と呼ばれる排他行為だ。アリババは2015年から、自社のECで商品を販売する業者に対して他のプラットフォームでは開店しないように迫り、それを無視する販売業者に対してはアリババが運営するEC「タオバオ」の規則やデータ提供、アルゴリズムなどの技術手段を用いて、不利な状況を作り出した。

 つまり、タオバオだけに出店するように求め、それを無視する業者には利用者動向のビッグデータを提供せず、検索結果の下位にしか表示されないようにするなどの冷遇をし、販売業者に圧力をかけたのだ。タオバオか、それ以外かを選ぶ二者択一を事実上強要した。


行き過ぎたアリババとテンセントの競争

 一部の報道では、大きくなりすぎたアリババに対する狙いうちというニュアンスも伝えられているが、独禁法違反の罰金は営業収入の3%または4%が相場になっており、アリババの場合は収入が桁違いに大きいので巨額の罰金になったにすぎない。

 3月3日には、現在中国で新ビジネスとして競争が激化している社区団購(地域の生鮮品個人商店をプラットフォーム化するビジネス)で、アリババ、テンセント、ピンドゥオドゥオ、ディディ、美団の主要テック企業がそれぞれに出資する5社に対して、不当廉売などにより50万元から150万元(約2,500万円)の罰金を課している。

 市場監管総局が公開している統計によると、2020年には独禁法違反で109件を処罰し、罰金額の合計は4.5億元(約76億円)となっている。また、経営者の告発は485件だった。

 あらゆる市場で競争が厳しい中国では、ライバルに勝つために独禁法に触れる行為が常態化しており、市場監管総局は毎週のように企業の処罰と経営者の告発を行っている。

 なお、独占禁止法を意味する「反壟断法」の「壟断」とは、土手や畝の意味で、孟子の「必ず壟断を求めて之に登り、左右を望して市利をあみせり」という一文から生まれている言葉。つまり、他の商人よりも不公正に有利な状況で取引をすることを指している。

 特に、中国の2大スマホ決済サービス「アリペイ」と「WeChatペイ」をそれぞれ運営するアリババとテンセントの間では、スマホ決済に関係する生活系サービスでの競争が格別に激しく、以前から行きすぎた競争が指摘されていた。

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アリババとテンセントは、ほぼすべての生活系サービスで支配的な地位を築いている。自社が運営するサービスと、主な出資先を一覧表にしたもので、出資している企業はこの他にも多くある。スタートアップ企業にとっては、アリババかテンセントの出資を獲得することが、成長の必須条件になってきている

【次ページ】新ビジネスもすべて横取りされてしまう現状
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