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  • 2021/04/19 掲載

米インテルの半導体工場新設が、日本経済「大打撃のフラグ」と言えるワケ

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米国と中国が重要製品の国産化を急ピッチで進めている。背景には、EV(電気自動車)シフト、企業のデジタル化、そして米中分離(デカップリング)による世界経済のブロック化という要因があり、この流れは一時的なものではない。日本経済は米中がビジネス面で連携することを前提に組み立てられており、この図式が崩れてしまうと大打撃を受ける。このままデカップリングが進んだ場合、日本は厳しい状況に置かれることになる。
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米インテルのファウンドリー事業参入は、米中分離の象徴か?日本経済も大打撃を受ける可能性がある……
(写真:ロイター/アフロ)

世界を驚かせた米インテルの決断とは

 世界最大の半導体メーカーである米インテルは、2兆円もの金額を投じて米アリゾナ州に新工場を建設すると発表した。インテルは半導体の開発から製造までを一貫して行う垂直統合型デバイスメーカーである。近年は工場を自前で持たないファブレスメーカーが増えており、一時はインテルもファブレス型への移行を模索したことがあったが、同社本来のビジネスモデルを考えれば、新工場を建設すること自体は特段、驚くような話ではない。

 だが、今回の発表は世界の半導体関係者を驚愕させた。その理由は、同社が他社の半導体を受託製造する「ファウンドリーサービス」への進出を併せて表明したからである。

 画像処理やAI(人工知能)チップを手がけるエヌビディアや、スマホ関連チップを開発する米クアルコムといった半導体メーカーは、設計だけを自社で行い、実際の製造は他社に委託するファブレスメーカーである。製造という現場実務をアウトソーシングすることで、高収益で身軽な経営を実現できることが強みだったが、こうしたファブレスメーカーからの依頼を一手に引き受けてきたのが、台湾積体電路製造(TSMC)や韓国サムスン電子といったアジア企業である。

 つまり、台湾や韓国などアジア企業が製造の受託をしてくれなければ、米国の半導体産業は十分な量の半導体を確保できない。

 このところ、コロナ後の景気回復期待から、あらゆる製品への需要が急速に高まっているが、とりわけ半導体については著しい需要増大が続いている。その理由は、コロナ危機をきっかけに、ビジネスのデジタル化やAI化が急ピッチで進んでおり、機器類に搭載する半導体不足が深刻になっているからである。今後は自動車のEV化や自動運転化も一気に進むので、半導体の需要がさらに増えるのは確実だ。

 長期にわたって不足が懸念される半導体を安定供給するため、最大手のインテルが他社製品の製造も含めて、生産能力を大幅に拡大させたという図式である。

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米インテルの方針転換は、世界の半導体関係者を驚愕させた。その理由とは?
(Photo/Getty Images)

新工場建設は米中分離(デカップリング)の象徴か?

 しかしながら、今回の生産能力拡大の目的はそれだけではない。新工場建設とファウンドリーへの進出には、安全保障問題への対処という地政学的ニュアンスが伴っているのだ。背景にあるのは米中のデカップリング(分離)である。

 トランプ前大統領は、中国を敵視する方針を明確にし、中国からの輸入に高い関税を課したことから米中は事実上の貿易戦争状態となった。トランプ氏は関税を課すことで、中国が苦境に陥ると単純に判断した可能性が高いが、現実はまったく逆であった。

 中国は近年、内需経済への転換を急ピッチで進めており、米国への輸出に依存しない経済体制を構築しつつある。一部の中国企業は米国の関税引き上げで大打撃を受けたが、米国向け輸出の一部は国内消費に回されたほか、ベトナムなど東南アジアを経由して米国に再輸出されたので、中国経済は思った程、大きな影響を受けなかった。


 中国はこれまで米国向けの輸出が滞ることを何より恐れており、米国にとってはそれが最大の交渉カードとして機能してきた。だがトランプ氏がこのカードを使い切ってしまったことで、中国には恐れるものが何もなくなった。トランプ氏による対中政策は中国に打撃を与えるどころか、中国は自らの経済運営に自信を持つようになってしまったのだ。この結果、中国と東南アジア各国の連携強化と米中分離(デカップリング)が加速するという皮肉な結果をもたらしている。

 今回のインテルの新工場建設は、こうした状況で決断されたものであり、一連の出来事は、中国(およびそれに連なるアジア経済圏)と米国の深刻な分断を示す出来事であると考えた方が良い。

【次ページ】米中分離で日本経済が大打撃を受けるカラクリ
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