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  • 2021/03/22 掲載

メルカリが「アリババ」と提携、EC経済圏拡大はビジネスチャンスとなるか?

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フリマアプリのメルカリが越境ECで中国アリババと提携し、出品者が国内と変わらない手続きで中国に商品を販売できるようになった。中国では、コロナ危機をきっかけに、海外旅行に向かっていた消費意欲が国内に向かっており、ネット通販は空前の売上高を記録している。加えて東南アジア経済と中国経済との一体化が進んでおり、ECサイトを通じて、自由に商品の売買ができる環境が整いつつある。一体化されたアジア経済圏の出現は日本にとってはビジネスチャンスでもあるが、中長期的には日本が中国経済に取り込まれるリスクも高まってくる。
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メルカリはアリババの越境ECと連携したが、その影響とは?
(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

出品者は簡単に中国に商品を販売できる?

 メルカリは2021年3月1日、越境ECの分野でアリババグループと提携すると発表した。これによってメルカリの出品者が、アリババが中国で運営する「淘宝」と「閑魚」で商品を販売できるようになる。

 同社は2019年に代理購入サービスを提供する「Buyee(バイイー)」と提携。メルカリの商品を外国に販売する仕組みを整えており、今回の中国向け販売も、Buyeeの代理購入プラットフォームを使って行われる。メルカリに商品を出品すると、通常はメルカリ上で商品が閲覧できる状態になるが、一部の商品は「淘宝」と「閑魚」のサイトでも表示される。

 アリババグルーブは中国において、個人向けネット通販サイトとして「淘宝」「閑魚」「天猫」「AliExpress」などを運営している。このうち「AliExpress」は主に海外の利用者を想定しており、それ以外は中国国内向けのサービスである。「天猫」は基本的にBtoC(企業対個人)のサイトであり、企業の出品者が個人向けに商品を販売している。これに対して「淘宝」はCtoC(個人対個人)のサイトで、個人の出品者が個人に商品を販売する。「閑魚」は「淘宝」から派生したサービスでフリマアプリとなっており、日本で言えばメルカリにもっとも近い。

 今回の提携によって、メルカリに出品された商品の一部は、中国の個人向けECサイトである「淘宝」「閑魚」で表示されるので、中国の消費者が購入できる。中国の顧客から注文が入った場合、当該商品をBuyeeが代理で購入し、検品や梱包を実施した上で中国の顧客に発送する。メルカリの出品者から見れば、国内の事業者に販売するのと同じ手続きであり、越境ECであることを意識する必要はない。

 中国はすでに商取引の4割近くがEC化されており、コロナ危機で海外旅行がままならないことから、旺盛な消費欲がネット通販に向かっている。中国では11月11日は、「1」の数字が続くことから「独身の日(光棍節)」と呼ばれており、ネット通販各社が大々的なセールを行うことで知られている。今年はその規模が前代未聞のレベルまで拡大し、アリババグループ全体では、セール期間中で何と8兆円もの売上高を記録した。ちなみに楽天の年間取扱高は4.5兆円なので、アリババは独身の日のセール期間中だけで楽天の約2年分を売り上げてしまった計算になる。

 中国は近年、急速に豊かになっており、都市部の生活者は日本と同等かそれ以上の消費を行っている。このため、中国のネット通販サイトに出品する日本の事業者は着実に増加している。メルカリの提携によって、この動きが個人にも広がる可能性が出てきたと言って良いだろう。

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中国の旺盛な消費欲を受け、中国のネット通販サイトに出品する日本の事業者は増加している。メルカリの提携によって、この動きが個人にも広がる可能性もある
(写真:ロイター/アフロ)

中国IT大手が東南アジアのECサイトを次々に買収

 アリババなど中国のEC事業者は、海外から中国向けに出品するニーズが大きいことをよく理解しており、越境ECがスムーズに進むようインフラを整備している。具体的にはアリババグループのサイトに出品したい海外事業者を支援する企業を通じて、商品の輸入や通関、流通などを代行するというものである。

 アリババグループのサイトに出品するためには、サイトごとに設定されたさまざまな条件をクリアする必要があるが、有償ではあるものの、サポート事業者がこうした作業や手続きを代行してくれる。こうした越境ECは、実は東南アジア全域に拡大しており、アジアでは中国を中心とした巨大なEC経済圏が構築されつつある。

 東南アジア全域に展開しているECサイト「Lazada」は、東南アジアのアマゾンなどと呼ばれていたが、2016年にアリババが1000億円を投じて買収し、アリババとの一体化が進んでいる。Lazadaはマレーシア、タイ、ベトナムなど6カ国でサイトを展開している。各国のサイトにおける基本的なデザインは同一であり、言語が違うだけなので、仮に東南アジア内で転居しても、ほとんど同じ感覚でサイトを利用できるだろう。当然のことながら、これは出品者にとっても同じことが言える。当然、国によって諸条件は異なるが、基本的なプラットフォームは統一されているので、事業者にとって参入障壁が低い。


 Lazadaと並んで東南アジアでは「Shopee」というECサイトも有名である。ShopeeはLazadaと同様、シンガポールを拠点とする企業で、東南アジア各国にECサイトを展開しているが、創業からわずか4年でLazadaを追い抜き、東南アジア最大のEC事業者に成長した。

 Shopeeには中国のネット企業大手であるテンセントが出資しており、アリババ=Lazada連合と激しいシェア争いをしている。また、アリババと並ぶ中国のECサイトで同じくテンセントが出資するJD.comは、ベトナムのECサイト「Tiki」に出資し、筆頭株主となっている。中国の有力IT企業がこぞって東南アジアの大手ECサイトに出資しているという状況であり、ECサイトを通じて東南アジアと中国は一体経済圏を構築しつつあることが分かる。

【次ページ】日本経済が中国・アジア経済圏に取り込まれる?
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