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- 2021/03/31 掲載
楽天が「日本郵政」「テンセント」と資本提携、どんなメリットが期待できるか?
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資本提携の3つの目的
楽天は2021年3月21日、第三者割当増資を行い2,423億円を調達すると発表した。日本郵政、中国のネット企業テンセント(騰訊控股)、米ウォルマートなどが株式を引き受ける。日本郵政は今回の増資で約1500億円を投じる予定となっており、増資が完了すれば楽天の大株主となる。今回の資本提携には、(1)携帯電話事業を見据えた財務体質の強化、(2)楽天市場のサービス強化、(3)中国EC市場への足がかり、という3つの目的があると考えられる。いずれの項目も、従来の楽天の経営方針を大きく変える可能性がある事項であり、楽天の経営は大きな転換点を迎えつつある。
楽天は2020年4月に携帯電話事業に本格的な参入を開始し、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクに続く4番目の大手キャリアとしてサービスを提供している。携帯電話のビジネスは典型的な設備産業であり、巨額の初期投資が求められる。通信会社ではない企業がゼロから通信インフラを整備するのは容易なことではない。ソフトバンクグループが通信事業に参入した際には、インフラ構築の手間を省くため、既存の通信会社を丸ごと買収したが、楽天が参入を検討したタイミングではもはや売りに出ている通信会社は存在していなかった。このため同社は、KDDIの支援を受けると同時に、自力でのインフラ整備を余儀なくされている。
巨額の先行投資が続いたことから、盤石だった楽天の財務体質は徐々に悪化している。同社が携帯電話事業への参入を表明したのは2017年のことだが、同年12月期の同社の自己資本比率は11%だったが、直近の決算では5%まで低下した。携帯電話事業には追加で1兆円以上の投資が必要という現実を考えると、財務基盤の強化はほぼ必須となっていた。
一般的にネット企業というのは、時価総額に対して設備投資負担が軽く、良好な財務体質になるケースが多い。楽天も当初は、有効な資金の使い道が見つけられないほどキャッシュが余っていたが、相次ぐ買収や新規事業への参入によって、資金を出す企業ではなく、受け入れる企業に変貌した。
資金の出し手から受け手へという資本政策の転換は、同社の今後の経営戦略にも大きな影響を与える。他社との協業をどのように維持していくのかという、新しいノウハウが求められるからだ。
楽天と日本郵政の物流を一体化
各社が出資した金額の多くは、携帯電話関連の設備投資に充当されることになるが、資金を出した日本郵政側の狙いは何だろうか。最も大きいのは物流面での提携だろう。日本国内においてアマゾンは楽天にとって最大のライバルであり、アマゾンはサービス内容を強化するため、独自の物流インフラの構築を進めてきた。今やアマゾンはネット通販というよりも物流企業に近い存在となっている。一方、楽天は出店者から出店料を徴収するビジネスモデルだったことから、物流は各出店者に任されていた。アマゾンが自社物流網を使った高度なサービスを展開したことから、楽天も、一時は自前の物流インフラ構築を試みたものの、うまくいっているとは言えない。
誰が物流インフラを構築するのかでサービス内容は大きく変わるため、結果として楽天とアマゾンの顧客層は分断化が進んでいる。もし楽天がアマゾンから顧客を奪いたいと考えているのであれば、物流システムの高度化は必須だろう。自前の物流インフラが乏しい以上、外部との提携が必要であり、現時点において楽天と本格的に組める相手は日本郵政しかない。
同社は日本郵政と共同で物流拠点や配送システムを構築するほか、データ共有も進めるとしている。今後は日本郵政と一体化する形で楽天市場の物流システムの高度化が進む可能性が高い。日本郵政は、傘下の日本郵便を通じて全国に2万4000カ所の郵便局を擁している。郵便局内に楽天モバイルの申し込みカウンターが設置されるので、郵便局のインフラを携帯ショップとしても活用できるはずだ。
楽天は携帯電話の競合3社と比較して圧倒的に店舗での営業力に欠ける一方、日本郵政は郵便局の収益確保に苦戦している。楽天と日本郵政の提携がうまく機能すれば、楽天モバイルのシェア拡大が期待できると同時に、日本郵政にとっては、新しい手数料収入を確保する道が見えてくる。
【次ページ】「ウォルマート」「テンセント」との連携がもたらす効果
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