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- 2020/07/01 掲載
常見陽平氏:就職氷河期は再来しない、企業の敵は出口見えない“採用”氷河期
新型コロナウイルスが「新卒採用」に与えた影響
──まず、今年の新卒採用の現状について、新型コロナウイルスの影響も含めてお聞かせください。常見 陽平氏(以下、常見氏):一部のメディアでは「就職氷河期の再来」といった表現も使われていますが、決してそうではありません。リクルートの就職みらい研究所のデータによると、内定を持っている学生の数は、4月1日時点で昨年を10ポイントほど上回っていました。つまり、序盤までは空前の売り手市場で、かつ空前の青田買い戦線だったのが事実です。
それが、新型コロナウイルスの影響で分断されてしまったと考えるべきでしょう。合同説明会も大学内の説明会も2月下旬あたりから中止が相次ぎました。ただし、企業が採用活動をやめたわけではありません。社員の安全を守り、学生への感染を防ぐためです。一方で、オンライン面接が増えるなど手法は多様化しました。
肝心の求人ですが、就職情報会社やマスコミが行った調査によると、たしかに昨年度よりも「減らす」という企業が増えていますが、報道で煽られるほどではないです。むしろ、コロナによる業績の悪化や、ビジネスモデルの変化が今後、どのように影響するか。21卒よりも22卒の方が、求人数や、求める人材像の変化などが起こる可能性があります。
──一部では、内定取り消しも話題になりました。
常見氏:たしかに、業界によっては市場の影響を受けて採用を控える企業があるのも事実です。私が所属している国際教養学部は、航空業界や旅行・観光業界を目指す学生が多いので、夢がかなわなかった学生もいます。
甲子園が中止になって号泣している球児が印象的でしたが、他にも同じ苦しみを味わっている学生がいることは忘れてはいけませんし、何らかのフォローは必要だと思います。
ただ、就活の歴史を振り返ると、インターネットの登場やルールの変更、リーマンショックなどの大きな変化が何度も起きていて、そのたびに新しい産業への人材の移動が起きています。なので、学生さんには前向きになってもらいたいですし、企業のHRパーソンには、こういうときこそ採用をやめてはならないと強調したいですね。
オンラインを強いられて見えてきたリアルの価値
──約2カ月間、オンラインを強いられたことで、逆に見えてきたリアルの価値はあったでしょうか。常見氏:緊急事態宣言の約2カ月間は、良くも悪くもさまざまなテクノロジーが試された期間だったと思います。テレワークをはじめ、本来ならもっと慎重に検討していたであろう仕組みが強制的に導入されました。たとえば、多くの企業が面接や会社説明会をオンラインに切り替えましたし、大学の講義もオンラインで行われました。その結果、たしかにリアルの必要性も見えてきたと思います。
ある商社は、途中まではオンラインでも、最終面接だけはリアルで行うと決めました。事実、リアルでないと分からないことはたくさんあります。たとえば、テレビ局に行けば、掲示物やそこに出入りする人々からメディアの現場の雰囲気を感じられますし、いかにもエリート集団で堅いと思っていた総合商社に行ってみたら、意外とジャケパンスタイルの人がいてイメージが変わったとか。オンラインかリアルかの2択ではなく、うまく融合することが大切なのだと思います。
──オンライン面接は、学生にはあまり評判が良くなかったという声もあるようです。
常見氏:テクノロジーに関しては学生の方が上手という面もあるうえ、企業が手探りだったのも事実だと思います。ただ、あと1~2年もすれば、双方ともに使い方もこなれてくるでしょうし、新しいツールも出てくるでしょう。
むしろ、もっと問題なのは、就活がこの四半世紀にわたり、ほぼ“一方通行”だったことだと思います。今から約25年前、リクルートナビ(リクナビ)が始まったとき、立ち上げた人たちは「これからはインターネットでフラットな世界が実現する。企業と学生が対等な関係でインタラクティブに就活ができるようになる」と期待しました。
しかし、残念ながら、そうはなりませんでした。いまだに企業と学生の間には上下関係があり、それがオンライン面接にも反映されるのかもしれません。
【次ページ】「リクナビ問題」が明らかにしたHRテック成功のポイント
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