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中国では、無人配送車による荷物や料理の配送が始まっている。新型コロナウイルス関連のニュースで、無人配送車やドローンが荷物や飲食物を配送している映像を見かけた方も多いだろう。無人配送は、突然出てきた技術ではなく、以前から中国では無人配送技術の開発と試験が行われている。しかし、そこには乗り越えなければならない“壁”も多い。「2022年までの時限爆弾」を抱える、中国の無人配送の現状と課題をみていこう。
実証実験の日本と営業運営の中国
中国では、店舗からオンラインへの大変革が始まっている。店舗小売は新小売(ニューリテール)になり、飲食店はフードデリバリーに対応し、頭打ちと言われているECも地方に拡大した。
さらに「ソーシャルEC」という新しいスタイルのECも登場してきている。利用者が共同購入することで安価に購入できる同スタイルは、末端配送という利便性も相まって、利用者が急増している。当然、配送量も爆発的に増加をしている。しかも、中国も人手不足の時代になり、2022年には末端物流が破綻をすると言われている。
こうした課題に目を付けたのが、テック企業だ。現在、複数のテック企業が、無人配送の分野に参入をしている。日本でも同様の実証実験は各地で実施されている。しかし、日本と中国の大きな違いは、中国では実証実験のフェーズは終わり、すでに多くの企業が営業運用フェーズに入っているということだ。
2020年1月ラスベガスで開催された「CES2020」では、フランスの自動部品メーカー「
Valeo(ヴァレオ)」と、外売(フードデリバリー)を展開する「
美団(メイトワン)」が共同開発した無人配送車「eDeliver4U」が話題となった。
eDeliver4Uは、全長2.8m、幅1.2m、高さ1.7mの無人カートで、庫内には17人分の料理を収納できる。運行速度は時速25km、最高速度は時速50km。満充電で100kmの走行が可能であるという。
メイトワンでは、2019年4月に独自開発の小型無人配送車「小袋(シャオダイ)」の公道試験を始めており、無人配送サービスの投入を急いでいる。なぜなら、ライバルの
餓了麼(ウーラマ)ではすでに6.5万件の無人配送を行うなど、実績を着々と積み上げているからだ。
“完全”無人配送の難しさ
しかし、無人配送は簡単ではない。なぜなら、「完全に無人」はほぼ不可能だからだ。料理を載せるのは人がやらなければならないし、ドローンから無人配送車へのトランジットも多くの場合人手になる。さらに、お客さんに届ける時は、スタッフが届けるか、顧客自身にセルフで受け取ってもらわなければならない。
たとえば、あなたのオフィスがビルの32階にあったとして、無人配送車から「料理をお届けにあがりました。今、1階ロビーにいます。取りにきてください」と通知されるのだったら、そのサービスはあまり利用したくないだろう。人の配送なら、32階のあなたのデスクの横まで届けてくれるのだ。
結局どこかで、人が介在せざるを得ない。つまり、「どのように配送デバイスと人を組み合わせると、コストを下げ、同時に利便性が高まり、配送時間が短縮できるか」という問題を考えなければならないのだ。
無人配送のテクノロジーでは、配送環境を「幹線」「支線」「末端」の3つに分類し、それぞれに異なる配送デバイスを利用し、次々と料理をリレーしていくトランジット方式が一般的だ。
「幹線」は長距離の移動で、時間短縮を図るため、ドローン配送が向いている。「支線」は短距離の地域配送で、無人配送車が向いている。「末端」はビル内の配送で、多くは人間が担当するが、配送用ロボットの投入も考えられている。エレベーターメーカーと共同開発を行い、エレベーターと通信をすることで、配送用ロボットはエレベーターに乗り、目的階に移動し、届け先まで料理を届ける。
この幹線、支線、末端のすべてを自動化するか、あるいは人間を組み合わせるか、また荷物の載せ換えであるトランジットを自動化するか、人間が行うかなど、各社考え方が異なっている。この分野で最も早く営業運用をしたのは、外売の餓了麼(ウーラマ)だ。
【次ページ】ウーラマは全配送ルートの7割をドローンに、メイトワンは「無人配送車+人」
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