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数多くのヒット曲を手掛ける音楽プロデューサー亀田誠治氏、『アメトーーク!』や『ロンドンハーツ』などのヒット番組を手掛ける“加地P”こと加地倫三氏、モデレーターとして世界的ダンサーのKITE氏が日本最大級のチームリーダーカンファレンス「PxTX」に登壇した。多くの観客、視聴者を夢中にさせるパフォーマンスを生み出すため、“リーダー”として何を意識しているのか。
最高のパフォーマンスを生むチーム作り
KITE氏:まずチーム作りで気をつけていることについてお聞きします。僕たちダンサーは、普段は10人ぐらいのチームを組んで活動をしています。僕が心がけているのは「メンバー同士の距離感」です。会うのがダンスの現場だけだと、個がぶつかるのでギスギスしてしまうんです。そのため、ダンスとは関係ない時間も共有するようにしています。メンバー全員でボーリングをしたり、また毎年、石垣島で開催される海神祭「ハーリー」(ボートレース)に参加したりして、何でも言いやすい環境を作ることを大事にしています。
亀田誠治氏(以下、亀田氏):僕の場合、最小のチーム単位は「アーティストと僕」の1対1の関係なんです。音楽を作っていく上で大事にしているのは、とにかく「アーティストの話を聞く」ことを心がけています。僕は1日のうち3~4時間ぐらいは人の話を聞いているんです。アーティストが楽曲で何をやりたいかはもちろん、その日の調子やプライベートについても会話をすることもあります。僕が聞き役として相手の映し鏡になることで、そのアーティスト自身の中で考えが整理され、気づきが生まれやすくなったりします。
加地倫三氏(以下、加地氏):僕の場合、「制作チーム」と「演者(出演者)さん」という2つのチームがあります。演者さんとの打ち合わせでは、僕らが1カ月半ぐらい練った企画でも、演者さんがなかなかうなずいてくれないことがあります。そういうとき、ごり押ししても本番で良いパフォーマンスができないので、両者とも得をしません。だから、演者さんにやりたくない雰囲気が見えたら、まずは相手側の立場に立つことにしています。そうすると自分の企画の良くない部分が見えてくる。相手がやりたくないことは、絶対にやらせないようにしています。
亀田氏:もう1つ、僕がチーム作りで重要視しているのが「トライはしてみるけど、極力、無駄な道は歩かないようにする」こと。たとえば、映画の主題歌を作るときは、僕とアーティストだけではなく、クライアントもそのチームに入りますよね。そこで蛇行運転してしまうと、誰も幸せになれない。だから、一度トライして、何かが違うと感じたときは「ごめん!」と謝って、すぐに切り替えることを意識しています。
加地氏:謝ることは重要ですよね。
亀田氏:10-FEETというバンドとレコーディングした時、リーダーのTAKUMAくんがすごくいいことを言っていたんです。「僕たちは『ありがとう』と『ごめんなさい』でここまできました」と。素晴らしいアーティストはそういう謙虚さを持っているんですよ。ポジティブなオーラを持っていて、たくさんのファンを生み出している。「ごめんなさい」「ありがとう」は、リーダーにとってすごく重要なキーワードだと思います。
メンバーの意見がぶつかったときの解決法
KITE氏:チームで新しいダンスを作っていると、色々な意見が出てぶつかるときがあります。僕はそういうときの解決法として、「最初の発想に立ち戻る」ことをしています。行き詰まっていた部分と逆の発想を試したりと、別の局面から選択肢を増やすようにしています。そうして最終的にみんなが納得するものを作っています。音楽の場合は、どうやって、新しいものを作り出していくのですか。
亀田氏:ダンスの作り方と共通項は多いと、話を聞いて思いました。音楽でも、「なぜこの曲をつくることになったのか」という原点に立ち返ることはすごく重要です。というのも、ものづくりをしていく上で初期衝動に勝るものはなかったりするからです。初期衝動というと“思いつき”のようなものと思われがちですが、実はそこに至るまでの積み重ねてきたバックグラウンドがあるからそこ生まれるものです。その過程と発想を見失わないことが、いいクリエイティブを生むためには大切ですね。
KITE氏:クライアントとアーティストの意見が食い違った場合はどういう解決法を採っていますか。
亀田氏:クライアントとアーティストの意見が、東と西ぐらい分かれるときがあります。そういう時はしのごの言わずに「音楽そのものに訊け」を原理原則に持ちながら、さらに双方の意見を合わせてベスト・オブ・ベストを考えていきますね。僕は両方の良い部分、集合のベン図で表したときの重なりの部分を試していくことにしています。2つのチームの初期衝動が合わさると、思いもよらなかった良い方向にベクトルが伸びることもあります。 振り切ることも大切ですが、時にあえて間(あいだ)をとるということも大変有効です。
KITE氏:両サイドの初期衝動を大事にするということですね。
加地氏:僕は企画が降ってくるタイプではなく、きっかけがあって企画を考えるタイプです。たとえば制約があれば、その制約から企画を考える。制約があることで、面白いものができたりする。しかも自分の引き出しになかったものなので、それが次から自分の引き出しに入る。プラスしかありません。だから否定的な意見は大事にしています。
KITE氏:制約という話に通じると思いますが、僕のダンスのジャンル「ポップ」には歴史的な決まりがあります。だから新しすぎると、「それはポップじゃない」と言われてしまうんです。ポップを守りつつ、枠組みのギリギリか、そこから首だけが出ているぐらいの感覚を意識することで、新しいものを生み出しています。
亀田氏:音楽も同じです。しかも私たちの細胞の中には、誰もが名曲だと感じる何十年、何百年前の音楽やメロディーが浸透しています。 伝統と革新を繰り返していく中で、「これはちょっと新しすぎたかな」という感覚は共有しながらも、その「新しすぎ」の中にも良いところがあれば、そこに自信を持ってフォーカスしていくのがリーダーの役割です。
伝統と革新を繰り返していく中で、「これはちょっと新しすぎたかな」という感覚は共有しながらも、その「新しすぎ」の中にも良いところがあれば、何かしらフィードバックの言葉をかけてあげるのがリーダーの役割です。
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