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核家族の共働き夫婦やシングルマザー/ファーザーにとって、「育児の効率化」は喫緊の課題だ。時間も人的リソースも限定されている中で、育児をこなすのは並大抵のことではない。そんな育児の負担をITで軽減するのが、「ベビーテック(ベビテク)」である。少子高齢化が急速に進む日本でも、ベビー用品・関連サービスは拡大している。ニーズが高い領域なのだ。
ベビーテックとは
「ベビーテック(BabyTech)」とは、Baby(赤ちゃん)とTech(テクノロジー)を組み合わせた造語です。妊娠から出産、産後の母親、新生児から未就学(小学校入学前)の子供を主軸として、育児と保育に携わるすべての人を支えるITサービスと製品の総称です。具体的には、ITシステムやIoT(Internet of Things)デバイス、Webサービスなどが挙げられます。
ベビーテックは2016年にCES(コンシューマ・エレクトロニクス・ショー:世界最大級の民生用エレクトロニクス製品展示会)で新しいテクノロジーのジャンルとして紹介されました。以来、年々ベビーテック製品/サービスを発表する企業が国内外で増加しています。
ベビーテックの市場規模は
日本国内では少子化傾向が続いているものの、国内ベビー用品・関連サービスの市場規模は続伸しており、2017年では前年比約6.7%増の4兆19億円(矢野経済研究所)と推計されています。
ベビー用品の中にはベビーテックの前身とも言える、ベビーモニターやデジタル系おもちゃもこれまで数多く販売されています。
米国では2018年のベビーテック系ベンチャーの資金調達は、レイトステージ(成熟段階)での大型案件が多かったため、総額で500億ドルを超える規模となっています。
2016~2017年のシードステージ(準備段階)が主だったころでも、調達総額は2億7000万ドルを超えています。中には、一社単体で3000万ドルを調達した企業も複数社存在しました。ベビーテックは将来の成長性を高く買われ、積極的な投資が集中しているのです。
なぜベビーテックは注目されるのか
日本では核家族化の影響などから、子育ての“人的リソース”が減少しています。米国でもこれは同じです。以前は家庭に複数の親族が同居している状態が当たり前でしたが、現在は核家族が基本。そして子供を持つ共働き世帯が半数を超えています。
よほど裕福でなければ育児に人手を借りるということもなく、ほとんどの親がギリギリのリソースの中で、疲れ果てながら子育てをしています。
授乳、体温・排せつなどの健康状態の記録、SIDS(乳幼児突然死症候群)など睡眠状態のケアや対策、室内の安全、遊びや学びなど、育児に対して考え、対応することは無数にあります。そして、乳幼児を相手にしていると親が自由にトイレに行く時間すらありません。
そういった環境の保護者を手助けし、ITに頼れる部分はそれを活用しながら、子供や家族と向き合いたいというニーズにベビーテックは合致しました。
また、保育施設など複数の子供を預かる現場では、子供たちの安全対策や保育士さんたちの業務効率化も大きな課題です。午睡の姿勢確認や、登園管理、保護者との連絡、労務管理など、ここにも、IT活用の大きな需要があるのです。
ベビーテック普及の背景は
この概念が登場した欧米、特に米国では赤ちゃんのころから親とは別の子供部屋に一人で寝かせる習慣があります。また、母親の産後の職場復帰が比較的早く、子供をベビーシッターに任せることもめずらしくありません。
このような事情から、離れたところにいる子供の様子を知りたいという需要があり、ベビーモニターなどが数多く販売されてきました。
センサー技術の進歩とスマートフォンの普及により、リアルタイムの情報を一人ひとりが受け取りやすくなりました。
これにより、単に赤ちゃんの様子を映すだけでなく、センサーで赤ちゃんの体温を監視し、異常があれば警告したり、シッターが哺乳瓶から与えたミルクの量を自動的に記録し、ミルクが飲まれたことを通知したりできるデバイスが登場したのです。
国内でも、睡眠監視は大きなテーマです。欧米で主流のカメラ型のものもありますが、日本ではより確実性が高く、複数の子供を同時に見守れるシステムが複数販売されています。
システムとしても柔軟に展開しやすいよう、バッジ型のデバイスや、マットレスにセンサーを組み込んだ睡眠状態監視デバイスなどがあります。
総務省から保育施設の安全性に寄与するシステムの導入についての支援(補助金など)もあり、すでに多数の保育園に導入されています。
国産睡眠状態監視デバイスの例
また、子供の健康や日々の生活の記録を簡単にするものや、電動さく乳機と連動し、さく乳量と授乳の記録をスマートフォンで簡単にできるものも登場しています。
さらに、年少から年長の幼児を対象にしたタブレット学習システムや胎児の状態を記録するもの、おむつが濡れたら通知するデバイス、赤ちゃんの鳴き声を聞いてその感情をAIが推定し親に知らせるものまで、さまざまなデバイスやサービスが市場に投入されているのです。
世界的に見ても、日本のベビーテックに関するサービスやアイデアの多彩さは、トップクラスです。以下からは、デバイス連動の製品/サービスを紹介しましょう(パパスマイル主催「BabyTech Award Japan 2019」参画製品やサービスを中心に紹介)。
ベビーテックはどんな領域で有効なのか
パパスマイルでは、ベビーテックを以下のように分類しています。
●「授乳と食事」……授乳・食事の記録、スマート哺乳瓶など
●「学びと遊び」……ラーニングトイ、スマートぬいぐるみ、スマート積み木など
●「安全対策」……危険監視システム、位置情報確認、シッター派遣など
●「妊娠」……スマート基礎体温計、身体リズム記録、スマート母子手帳など
●「健康管理」……睡眠監視、水分補給、排せつ管理、小児科医派遣、病児ケアなど
●「施設向け管理システム」……保育従事者向け人員管理システム、施設と保護者の連絡システムなど
以下で製品例とともに詳説していきましょう。
●授乳と食事
●授乳と食事
スマートさく乳機、スマート哺乳瓶、授乳室検索、授乳・食事の記録、アレルギー対策など、子供の授乳・食事に関するもの
赤ちゃんの飲み方を再現したリズムで乳房への負荷感を抑えた電動さく乳機「母乳アシスト電動ProPersonal」と、本体の設定とさく乳・授乳の記録、赤ちゃんの成長記録を行えるスマートフォンアプリ「Pigeon Switch」の連携システム。育児情報提供もスマートフォンアプリの中で行っています。
●学びと遊び
●学びと遊び
ラーニングシステム、ラーニングトイ、スマートぬいぐるみ、スマート積み木など未就学児までを対象とした学び、遊びに関するもの
年少~年長児を対象とした知育10分野を専用タブレット1つで学べる幼児向け通信教育サービス。
問題文自動読み上げ、運筆アドバイス、自動採点、保護者との「学習振り返り」など、タブレット機器の特性を生かした機能を搭載しています。
ミッションと呼ばれる数分で達成可能な学習を、さまざまなジャンルから毎日3つ取り組むことで、子供に日々の学習習慣をつけることも期待できます。
【次ページ】ベビーテックによる安全対策、健康管理とは
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