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  • 2019/01/31 掲載

「スポーツツーリズム」とは何か?市場規模や国内事例まで徹底解説

東京五輪、ラグビーW杯で自治体/企業が熱狂

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プロ野球の沖縄キャンプを見に行ったり、サッカーのアジアカップに出場する日本代表の応援でUAEまで行くような、スポーツが目的の旅行を「スポーツツーリズム」という。世界的には2021年までの5年間で約4倍に拡大すると予測されている超成長市場だ。日本は2019~2021年の3年間、スポーツの大きな国際大会が続けざまにある「ゴールデン・スポーツイヤーズ」を迎えた。スポーツ庁は2021年度の国内スポーツツーリズム関連消費額を、2015年度比72.4%増の3800億円へ伸ばすという数値目標を掲げている。
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世界中をまたにかけてのスポーツ観戦は、もはや珍しくない
(©wetzkaz - Fotolia)


沖縄に122億円をもたらすプロ野球キャンプ

 明日2月1日、プロ野球が一斉に春季キャンプインし、ファンには楽しみな球春がいよいよ到来する。2018年は沖縄県に9球団が集結し(巨人軍は3軍のみ)、多くのファンが沖縄を訪れた。琉球(りゅうきゅう)銀行傘下の経済調査機関、りゅうぎん総合研究所が7月に公表した調査レポートによると、2018年に沖縄で春季キャンプを実施した球団の延べ観客数は約37万7000人で、宿泊、飲食、グッズやおみやげの購入などで沖縄県に122億8800万円の経済効果をもたらした。観客数も経済効果も過去最高を更新した。

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沖縄県のプロ野球春季キャンプの観客数と経済効果の推移

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 2010年からの8年間で、沖縄キャンプ実施球団は9~10球団で変わらなかったが、観客数も経済効果もほぼ右肩上がりで増加し、どちらも約2.2倍に伸びている。

 沖縄県ではこの時期、日本の地域リーグ球団、韓国や台湾や中国のプロ球団もキャンプを行うほか、サッカーのクラブもキャンプを張っている。

 沖縄銀行傘下の経済調査機関、おきぎん経済研究所が5月に公表した調査レポートによると、サッカーは2018年1~3月にJリーグ17クラブ、下部リーグ、海外クラブ合わせて24クラブが沖縄キャンプを実施し、8万4380人の観客を集め、経済波及効果は約20億4700万円だった。ピークの2015年度には約37億5300万円の経済効果がもたらされたという。

 沖縄県の2017年度の入域観光客数は958万人、旅行・観光消費額は7793億円、経済波及効果は1兆1699億円で、いずれも過去最高を更新した(沖縄県文化観光スポーツ部観光政策課)。その数字に比べると約122億円のプロ野球キャンプの経済効果は小さく見えるが、天候が安定しない1月、2月は入域観光客数が最も少なくなるシーズンオフの時期なので、キャンプは落ち込む観光関連収入を底上げしてくれる。「観光」が主要産業の沖縄にとってはありがたいイベントである。

スポーツ&観光の「スポーツツーリズム」とは?

 ひいき球団のキャンプを見に沖縄まで行くようなファンの中には、シーズンに入ると遠征先のビジター(アウェー)の試合を見に行くような熱心な人もいる。それはプロ野球でもJリーグでも同じだ。

 ワールドカップやアジアカップなどサッカー日本代表の海外での試合中継を見ると、スタンドに陣取って声援を送る「ジャパンブルー」のレプリカユニホームを着た一団が映し出される。現地の在留邦人も一部いるが、大半は自分で旅費をまかなって日本からやって来た、ホットなサッカーファンだ。

 野球でもゴルフでもテニスでもラグビーでも陸上競技でも、モータースポーツでも、ファンは国境を越えていく。競技人口が少ないマイナースポーツでも、世界選手権やオリンピックの時は全世界から観戦者が集まる。試合の後は地元の酒場などでファン同士が交流し「あの選手はすごいね」などと語りあう。

 試合のない日は、ふつうのツーリストと同じように世界遺産など観光地を訪れては、お金を使う。2018年6~7月のサッカーのワールドカップ・ロシア大会の時は、過ごしやすい気候の時期ということもあり、ロシア各地の観光地がにぎわった。おそらく2019年のラグビーのワールドカップや2020年の東京五輪・パラリンピックの開催時期には、日本各地の観光地が外国人でにぎわうことだろう。

 このように、スポーツファンが試合やキャンプを見に国内旅行、海外旅行に出掛けることを「スポーツツーリズム」と呼ぶ。選手としての参加、たとえば皇居一周ランナーがニューヨークシティマラソンを走るような参加型もそれに含まれるが、大部分は観戦が目的だ。旅行先では、同じスポーツのファン同士の交流や観光も楽しんでいる。

スポーツツーリズムは5年で4.05倍の超成長市場

 この「スポーツツーリズム」の市場規模は、どれぐらいあるのだろうか?

 英国の調査会社のTechnavioが2017年8月に発表したレポート「Global Sports Tourism Market:Key Drivers and Figures」によると、2016年は世界トータルで1兆4100億米ドル(153兆6900億円/1米ドル=109円で換算)だった。日本の2019年度当初予算のおよそ1.5倍に相当し、2017年のオーストラリアの名目GDP(IMF発表/世界第13位)にほぼ匹敵する。

 その規模もさることながら、驚かされるのはそのめざましい成長力だ。Technavioは2021年の市場規模を5兆7200億米ドル(623兆4800億円)と予測している。5年間で4.05倍、CAGR(年間成長率)41%以上という、超成長市場である。

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世界のスポーツツーリズムの市場規模と将来推計

 日本の名目GDPは2017年で4兆8732億米ドル(2017年/IMF)だが、同年のGDP成長率はプラス1.74%で、もし2018年以後に平均2%成長を遂げたとしても2021年は5兆2749億米ドルどまり。世界のスポーツツーリズム市場は、予測通りに行けば2021年、世界第3位の日本のGDPを上回る巨大なマーケットに成長する。

 もっとも、GDPの数字では負けても、日本経済はこのスポーツツーリズムの成長の恩恵をたっぷり受けられるラッキーなポジションにある。

 2019年はラグビーのワールドカップ(来場者見通し200万人)、2020年は東京五輪・パラリンピック(来場者見通し1000万人)、2021年は参加型生涯スポーツの祭典、関西ワールドマスターズゲームズ(来場者見通し20万人)と、大きな国際スポーツ競技会が続けざまに開催される。

 早稲田大学スポーツ科学学術院の間野義之教授はこの2019~2021年を「ゴールデンスポーツイヤーズ」(黄金の3年間、奇跡の3年間)と名付けたが、その3年間は、ちょうど始まったばかりだ。

【次ページ】自治体、企業にスポーツツーリズム熱拡大中!
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