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  • 2018/08/07 掲載

なぜ日本を応援してくれたのか? サッカーW杯で「日の丸ハチマキ姿」のロシア人がいたワケ

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ロシアでは「ほとんど英語が通じない」にも関わらず、今回のワールドカップでは多くのロシア人がハチマキを頭にまきつつ応援をする場面が見られた。この裏にはGoogle翻訳の進化や、サポーターたちの努力があった。現地でしかわからない、「日本代表サポーターの戦い」を紹介しよう。
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SNS・メディア経由で広がったハチマキのムーブメントがロシアのファンを巻き込んだ
(筆者撮影)


Google翻訳にリアル「ほんやくコンニャク」の将来を見た

 ロシアではほとんど英語が通じない。各国の英語力を毎年発表しているEF EIP(英語力指数)ランキングでは日本が37位でロシアが38位、前大会開催国のブラジルは41位だ(2017年)。

 街中に沢山いるFIFAの公式ボランティアメンバーは、ほとんどが英語話者であったが、彼ら以外と話す場合には、観光名所や高級店を除けば、大抵の人々は”one, two, three…”さえもおぼつかない状況だ。

 そのような環境下で大活躍をしたのが、スマホのGoogle翻訳アプリである。筆者が接した多くの現地の方々が、まずスマホに話しかけて、英訳・和訳された言葉を聞かせてくれた。

 短い会話であれば概ね理解でき、こちらもスマホに話しかけて返事を返す、というやり取りが何度もあった。

 2014年に参加したブラジル大会の時はGoogle翻訳にテキストを打ち込む「筆談」が多かったのだが、今回は音声による「会話」がほとんどだった。

 音声認識と翻訳の技術向上の延長線上には、スマホがドラえもんの「ほんやくコンニャク」を実現する未来があるのでは、とすら感じた。

 Google翻訳には、もう一つ驚くべき機能がある。カメラとAR機能を使って、目の前の文字をリアルタイムかつオフラインで翻訳できる機能だ(オフラインでは和訳は未対応)。

 ロシア語のキリル文字は、多くの日本人には縁遠く、読解が困難である。

 特にレストランでの注文は難儀することが多いため、この機能によってメニューが読めるようになり助かった、というサポーターは多い(ちなみにロシア料理は非常に美味しく、日本食が恋しくなることは一度もなかった)。

 これは、AR×文字認証×自動翻訳技術を持つWord Lens社をGoogleが買収し、Google翻訳にWord Lens(サービス名)を組み込んだことで、ユーザー数が一気に広がったものである。

 前回ブラジル大会直前の2014年5月にWord Lensが買収されたが、認知度の低さもあり、当時はこの機能を使っていたサポーターは少数であった。

 その後、オンラインで日本語対応を開始したこともあって認知度が高まり、今大会では多くのサポーターに好評を博した。

 ロシア人は親切で献身的な人が多く、言葉が通じなくとも挨拶程度のロシア語とボディランゲージで交流は十分にできたものの、このような技術によって、より有意義なコミュニケーションが取れるようになり、非常にありがたかった。

画像
AR機能でロシア語をリアルタイム英訳。ニュアンスの把握くらいなら十分な精度だ。(左:翻訳前、右:翻訳後)
(筆者撮影)

知らなければモグリ? Facebook現地観戦コミュニティの果たした役割

 知人・友人「誰と行くんですか?」、筆者「1人ですよ」、知人・友人「ひとりで行って危なくないですか? お金もかかりませんか? ひとりじゃ寂しくありませんか?」――ワールドカップ旅行について周りから受ける質問の定番である。

 筆者のワールドカップ旅行は、基本的に一人旅である。そして、個人手配で現地に訪れるファンの多くが、同様に一人旅をする人が多数派だ。しかしながら旅の間中ずっと1人かと言うと、そうではない。

 サポーター仲間と宿のルームシェアもするし、食事やパーティを共にする友人も、スタジアムで一緒に応援する仲間もいる。行く先々で行動を共にする仲間を変えながら旅をする「ワールドカップ式トラベル」を支えているのはSNSであり、そこから派生するコミュニティだ。

 今大会、現地渡航をする日本人ファン・サポーターの間で共通のプラットフォームとなっていたのが、Facebookの日本代表の海外現地観戦コミュニティである。

 日本代表サポーターとして著作もある村上アシシ氏が運営するコミュニティには約1,800人が参加しており、ロシアワールドカップに向けて活発な情報交換や交流が行われた。

 その中で、共に旅をする仲間が見つかったり、現地でパーティを一緒にしたり、と各人の楽しみの幅が広がっていった。

 このコミュニティは、大会期間中もさまざまな現地情報が飛び交い、大いに旅の助けとなった。

 ワールドカップ参加者でよく聞く言葉に「日本では会ったことがないのに、4年ごとに現地でだけ会う友人」という格言(?)がある。

 「ワールドカップに行く」という人種は今の日本社会ではまだ珍しいかも知れないが、SNSがその「希少種」であるファン・サポーターをつなぎ、ネットワークを強固にしている。

【次ページ】ロシア人グループで「ニッポン」コールが沸き起こったワケ
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