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- 2018/07/13 掲載
日本の16強進出をアシストしたFootballテック、W杯でファウルが減った理由
「クリーンなサッカー」を演出するFootball Technology
FIFA WORLD CUP RUSSIA 2018は、「クリーンなワールドカップ」として記憶されるかも知れない。と言っても、日本をはじめ各国のサポーターが行ったスタジアムでのゴミ拾いのことではない。ピッチ上でのファウルや揉め事が、今大会はこれまでより少ないことについてである。予選リーグ時点では退場者数が過去最小ペースという報道もあった 。これは、FIFAが導入促進をしているFootball Technologyによる効果だろう。
FIFA(国際サッカー連盟)はもともとフェアプレー精神の徹底を推進しているが、特に近年は精神論に止まらず、テクノロジー導入によって競技の仕組みまでも変えることを急ピッチで進めている。
これまでは「審判の目」のみに頼っていたことで、誤審や見逃しなどの問題があった。こうした課題に対して、テクノロジー×データの力で、ヒューマンエラーを極力排除し、あいまいさのない=しこりを残さない試合のコントロールを行おうというのが、FIFAの大方針である。
FIFAはこのロシアワールドカップにおいて、主要テクノロジーとして3つの“Football Technology”を打ち出している。
ゴールラインテクノロジー(Goal Line Technology:GLT)、ビデオアシスタントレフェリー(Video Assistant Referee:VAR)、電子パフォーマンス&トラッキングシステム (Electronic Performance and Tracking Systems:EPTS)が、それである。
これらはすべて、リモートセンシング映像や位置情報によって、選手やボールの動きを捕捉する技術である。
Football Technologyの先駆けGLT
この3つのFootball Technologyの先駆けとなったのが、GLTである。GLTは2014年のブラジル・ワールドカップで初めて導入された技術であり、ソニー傘下の英ホークアイ・イノベーションズが手がけている。ゴールラインを割ったかどうか判断が難しいシーンにおいて、多方向から撮像したカメラ映像を総合解析し、ゴール判定を行う技術である。
ゴールは試合を決定付ける要素になるため、誤審の影響が極端に大きいことから、FIFAはまずここから技術導入を始めている。
今大会では、筆者も生で観戦した日本対コロンビアにおいて、コロンビアの放ったシュートに対し、日本のGK川島選手がゴールライン際でボールをかき出したものの、このプレーがGLT判定対象となり、映像を検証した結果、コロンビアのゴールとして認められたということがあった。
微妙なシーンだけに、GLT導入以前であれば、サポーターからのブーイングや試合後に物議を醸す可能性のあったシーンでだった。
しかし、ボールがゴールラインを割っていることをスクリーン上で明示されると、皆納得せざるを得ない説得力があり、その後も試合はスムーズに進んだ。
【次ページ】サッカーのあり方を変えるポテンシャルを持つVAR
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