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6月14日、FIFAワールドカップ・ロシア大会が開幕し「西野ジャパン」が世界の強豪国に挑むが、それとは別に「Jリーグで優勝し、最終予選を勝ち抜くとワールドカップに出場できる」サッカーもある。電脳空間のサッカー、「eサッカー」だ。2018年5月まで、Jリーグ機構はeスポーツの第1回「eJリーグ」を実施し、8月にはFIFAの第1回「eワールドカップ」も開催される。まさに2018年は「eサッカー元年」といえる。eサッカーに限らずeスポーツ市場全体も活気づき、eスポーツのプロチーム・SunSisterに所属するXhanZ選手は「これまで『娯楽』として捉えられていたeスポーツだが、徐々に周知されてきた」と話す。
eスポーツとは?2018年アジア競技大会ではデモ種目に
スポーツ系ゲームの「対戦モード」で「プロ」のゲーマーが勝敗を争って優勝を目指す競技、それが「eスポーツ」だ。
アメリカではバスケットボールのNBA、アメリカンフットボールのNFLが参入し、競技人口は全世界で1億人ともいわれている。賞金は日本円で10億円を超えるなど高額化し、ビジネスとしてもその周辺に大金が動いている。
その興隆ぶりを受けて2018年アジア競技大会(ジャカルタ)ではデモ種目に、2022年アジア競技大会(杭州)ではメダルを授与される正式種目に採用され、「2024年のパリ五輪も有望か?」と、うわさされている。
日本でも2月に日本オリンピック委員会(JOC)加盟を目指す「日本eスポーツ連合(JeSU)」が発足。4月にはOCA大阪デザイン&IT専門学校がプロゲーマー養成を目的とする学科を開講した。各種目の大会やプロゲーマー個人にもスポンサーが付き始めている。
eスポーツのプロチーム・SunSisterに所属するXhanZ選手は「これまで、日本だとどうしてもeスポーツが『娯楽』として捉えられていた。しかし賞金が出たり番組で大々的に取り上げられるようになったりしたおかげで徐々に周知され、盛り上がってきた」とビジネス+ITの取材に答えてくれた。
カーレーサーのように企業ロゴでいっぱいのユニホームを身にまとい、コントローラーを操って海外の強豪プロゲーマーを鮮やかに打ち負かす。男子中学生の憧れの職業は、YouTuberの次はプロゲーマーになるかもしれない。
2018年はeサッカー元年、Jリーグ・ワールドカップが開催
eスポーツには、世界で最も競技人口が多いスポーツ、サッカーもある。今年はJリーグ発足25周年でもあり、リアルなサッカーも熱いが、電脳空間「eスポーツ」のサッカーもまた熱い。
日本の「eサッカー」は2018年、高額懸賞金問題やプロライセンス問題、キワモノ視する世間の偏見などをドリブル突破して大きな発展を遂げようとしている。他のスポーツに先駆けFIFA(国際サッカー連盟)もJリーグ機構も、すでにeサッカーのサポーターだ。
3月、Jリーグ機構は「eJ.LEAGUE」の開催を発表し明治安田生命がスポンサーに付いた。ゲーマーは実在のJリーグのクラブを名乗り、そのユニホームを着る。一次リーグを突破した15名による決勝大会(5月開催)の結果、浦和レッズ(かーる選手)がサガン鳥栖(選手は本物のアヤックスユースのGK)を下して初代王者に輝き、チェアマンからの優勝皿を手にした。
浦和のかーる選手は「日本代表」として6月にオランダで開かれる「EA SPORTSTM FIFA 18 Global Series Playoffs(eワールドカップ世界最終予選)」(128名)に出場し、勝ち抜けば8月、第1回「FIFA eWorld Cup 2018」本大会(32名)の出場権を獲得できる。つまり、Jリーグでの優勝がそのままワールドカップへとつながっているのだ。
eワールドカップの主催はFIFAとゲームソフトメーカーのElectronic Arts(EA)で、EA製の「EA SPORTS FIFA 18」が公式使用球ならぬ「公式使用ゲーム」。リアルなサッカーのロシア大会同様に多くのスポンサーが付き、ゲーム画面や対戦中のゲーマーの表情が全世界にテレビ中継される予定だ。
なぜFIFAもJリーグ機構も、足もボールも使わない、テレビゲームのサッカー競技会をアシストするのか?
Jリーグ機構の村井満チェアマンは日経新聞のインタビューで、高齢化するサッカーファンの若返りを狙っているとほのめかしながら、「リアルのサッカーファンとビデオゲームのサッカーファンのシナジーとか、クロスセルみたいなことが発生してきます」「少なくとも、将来的にeスポーツの市場が成長していくのは間違いない」と述べている。
そのeスポーツのマーケットは今、全地球的規模で拡大中で、言葉は悪いが巨大な利権も生み出そうとしている。
eスポーツの市場規模は右肩上がりで拡大中
オランダのアムステルダムに本社があるNewzoo Europe社は毎年2月、eスポーツの市場調査「Global Esports Market Report」の結果を発表している。
2018年版によると、競技会や選手のスポンサー収入、観戦チケット販売収入、広告収入などをひっくるめた2018年の全世界のeスポーツ市場規模は9億600万ドル(約1050億円)で、2016年の4億9300万ドルから2年間で83.7%増加と見込んでいる。2021年の予測値は16億5000万ドル(約1800億円)で、3年間で82.1%成長する(1ドル=110円で計算)。
プロゲーマーの試合を会場やテレビやネットで見る観戦者数も、2016年は全世界で1億6000万人だったが、2018年は34.3%増の2億1500万人になると予測されている。2021年には3億700万人に達すると見込まれ、3年間で42.8%増える計算だ。
eスポーツは全世界で、市場規模もそれを見て楽しむ人の数もどんどん拡大している。FIFAもJリーグ機構も「eスポーツを通じてファンが増え、サッカー界全体が盛り上がればいい」と思っているはず。
もし「サッカーは足でするものだ」「ゲームなんて不健康だ」と距離を置いていたら、チャンスに乗り遅れただろう。
Newzoo Europe社は「Global Esports Market Report」2018年版でゲーム実況配信サービス「Twitch」の視聴数でカウントしたスポーツゲームの人気ランキングも公表している。
上位はやはり格闘技系、バトル系が多いが、EAのFIFAシリーズ『FIFA17』と、5月29日にロシア大会版を無料アップデートした『FIFA18』を合わせると、ランキング上では第10位のポジションに食い込む。
eスポーツ界でサッカーはマイナーな存在だといわれているが、まったく日が当たらない存在でもない。人気に火が付けば、上位を狙うチャンスはある。
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