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- 2017/08/16 掲載
人類初の宇宙レース!HAKUTOが「日本でなければ実現できなかった」と語る理由
デザイナー、プログラマー、弁護士も“参戦”
アフレル主催の「Robotics Education Day 2017」に登壇した河本氏は「月をハブとすることで、人類の活動領域を広げられる。我々は月の資源探査も目指している。開発した月面探査ローバーで、月面で“水”を発見し、将来的に水を酸素と水素に分解して、ロケットの燃料として補給できるようにする。地球と月の間に定期運航船を作りたい。その第一歩のプロジェクトが『au×HAKUTO MOON CHALLENGE』だ」と説明する。
HAKUTOは、袴田武史氏がファウンダー兼代表取締役を務めるベンチャーのispace社、同社CTOで東北大学教授の吉田和哉氏と同氏の研究室、さらに「プロボノ」と呼ばれるボランティアで構成される100名ほどの民間チームだ。同チームは研究・開発・運営はもちろん、それを支えるエンジニア、デザイナー、プログラマー、弁護士、ビジネスマンといった多様な人々で構成される。彼らは、国際宇宙レースであるGoogle Lunar XPRIZEの優勝に向けて挑戦を続けているのだ。
ここで、HAKUTOチームの取り組みを紹介しよう。同チームは、基本機能の実現性を地上で検証する「プロトタイプモデル1」のローバーを2011年に開発した。さらに地上でシステムの実効性を検証するための「エンジニアリングモデル」を2013年に開発。そして打ち上げや宇宙環境に耐えうる部品や構造を設計に盛り込んだ「プリフライトモデル3」まで進化させ、2016年6月に「フライトモデル」のデザインを発表したという状況だ。
河本氏は「この間わずか6年というスピードだった。開発時間が短かったのは、HAKUTOに関わる多くのサポーターやボランティアの力があったからだと思う」と振り返る。
このフライトモデルの前に、吉田教授の技術サポートを受けつつ開発されたプリフライトモデル1は、Google Lunar XPRIZEの「モビリティサブシステム中間賞」も受賞している。ここでHAKUTOのローバーは、月面でも機能する性能を有することを見事に証明し、賞金50万ドルを獲得したという。
「中間賞はトップ5に贈られるもので、我々のほかAstrobotic、Moon Express、TeamIndus、Part Time Scientistsが受賞した。しかしAstroboticはすでにレースから離脱し、独自ミッションで月に行くことになっている」(河本氏)
国際宇宙レースに課せられた3つのミッション
Google Lunar XPRIZEの参加チームには、3つの大きなミッションが課せられている。1つ目は「月面に純民間開発ロボットを着陸させる」ということ。もちろんローバーだけでなく、月に向かうロケットとランダーと呼ばれる月面着陸機も必要だ。ローバーを載せたロケットは宇宙空間に飛び立ち、約38万㎞という距離を航行し、ランダーで月に軟着陸する。そしてローバーが月面へと降り立つという流れだ。2つ目のミッションは、月面に降り立ったローバーを着陸地点から500m以上移動させることだ。月の環境は地球と異なり非常に過酷だ。昼の温度は摂氏100℃以上にも達する。一方で夜になると-150℃以下になり、昼夜の寒暖差は250℃も開いてしまう。そんな月面環境で、クレータや岩石を避けながら500m先に進んでいかねばならない。ローバーにはすぐれた耐環境性が求められる。
3つ目のミッションは「高解像度の動画や静止画データ」を地球に送信することだ。ローバーには前後左右に4つのHDカメラが搭載され、合計で360度の映像を撮影でき、高解像度映像と静止画のデータパッケージ「Mooncast」を地球に送ることも重要な使命だ。ただしローバーから直接、地球に通信することは難しい。そこで月面着陸機であるランダーの中継器を通して、地球に電波を送ることになるという。
【次ページ】日本の職人技を詰め込んだ「SORATO」のスゴい中身
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