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イーロン・マスク氏が率いる米宇宙開発企業のスペースXの業績が非常に好調で、打ち上げロケットの圧倒的な信頼性と価格破壊を武器に業界トップを保っている。一方で、宇宙船開発の進ちょくは遅れており、その影響で前澤友作氏の月旅行計画が中止になったことは日本でも知られるところだ。こうした中、ジェフ・ベゾス氏の経営する競合の米ブルーオリジンに猛烈に追い上げられ、スペースXの優位性も脅かされている。2035年に世界で290兆円を超えるとされる宇宙市場において、マスク氏・スペースXは「王者」をキープできるのか、予測する。
売上「前期比89%増」で絶好調
スペースXの業績が絶好調だ。米国の宇宙開発領域でトップを走る同社の売上は2023年1~12月期でおよそ87億ドル(約1.4兆円、前期比89%増)にまで伸びたと、米市場調査企業のサクラが
推計している(冒頭の図)。
そして、売上の半分近くに相当する41億ドル(約6,619億円、前年比121%増)をたたき出したのが、衛星インターネット通信サービスの「スターリンク」だ。5月時点の顧客数は99カ国で300万を突破しており、通信衛星は6219基(6月時点)を打ち上げた。最終的には4万2000基にまで増やし、インターネットにアクセスできない地域を完全に解消する野心的な計画を打ち出している。
スターリンク衛星は、スペースXが自社開発した商業打ち上げロケット「ファルコン9」によって次々と軌道に乗せられている。同ロケットは、同じエンジンを大量生産することでコストを下げたほか、1段目のエンジンを逆噴射して洋上あるいは陸上へ着陸できるため回収・再利用が可能だ。このような経済性が高く評価され、衛星だけでなく宇宙船や補給船の打ち上げにも活用されている。
このように、打ち上げ費用が1回につき約6,000万ドル(約96.8億円)のファルコン9や、その発展型で超大型重量貨物打ち上げに使われる「ファルコンヘビー」(費用は打ち上げ1回で1億2,500万ドル、約201.7億円)など、ロケットの打ち上げを以前より安価にしたことが、「スペースXが選ばれる理由」だ。
米ITニュースサイトのテッククランチが入手した同社の
内部文書によると、同年の営業利益はおよそ30億ドル(約4,840億円)に達した。また、米投資サイトのバロンズが6月末に
報じたスペースXの時価総額は2,100億ドル(約33.8兆円)に上る。表面的には、同社の業績は順風満帆であると言えよう。
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