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  • 2017/05/25 掲載

宇宙ビジネスにとってドローンは脅威か? アクセルスペース中村友哉氏に聞く

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超小型人工衛星を開発するベンチャーとして注目を集めるアクセルスペースが、三井不動産のビル「Clipニホンバシビル」に移転した。アクセルスペースは2008年に設立され、2013年に世界初となる民間商用超小型衛星の打ち上げに成功したベンチャーだ。19億円の大型資金調達を実施し、2022年までに全球毎日観測プラットフォーム「AxelGlobe」の構想を進めている。アクセルスペースの代表取締役 中村 友哉氏に、オフィス移転の経緯や目的、中村氏の考えるイノベーションや、アクセルスペースの近況などについて話をうかがった。
(聞き手/構成:編集部 中島 正頼、執筆:井上猛雄)

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2013年に世界初となる民間商用超小型衛星の打ち上げに成功したアクセルスペースは、イノベーションをどう捉えているのか

アクセルスペースがコワーキングスペース併設の新オフィスに移転した狙いとは?

 アクセルスペースが入居している「Clipニホンバシビル」は、大企業とベンチャー企業の出会いによる共創やビジネス創出を目的としたコワーキングスペース「31VENTURES Clipニホンバシ」を併設している。

 三井不動産は、これまで起業家やクリエイターのみならず、大企業の新規事業担当者など、数多くのユーザーを巻き込んだコミュニティ「31VENTURESクラブ」を運営してきた。会員になると、31VENTURESオフィスのコワーキングスペースの利用のほか、ビジネスモデルの構築支援や専門家の紹介など、さまざまな支援をしてもらえる。

 今回、三井不動産は日本橋に新ビルを建設し、さらなるオープンイノベーションへの取り組みを強化。ユーザーの拡大と利便性の向上を目指す方針だ。地上3階建てのビルには、規模を拡大した「31VENTURES Clipニホンバシ」が1階へ移転して、新装オープンした。セミナー会場の収容数は移転前の2倍となる100名に拡大し、ワークスペースの座席も90席に増えた。さらに31VENTURESの会員ならば、本施設以外の他施設(千葉県柏市のKOILや幕張)も共通で利用できる。

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(クリックで拡大)

移転した「31VENTURES Clipニホンバシ」。セミナースペースやワークスペース、ミーティングルームなどが用意されている。同ビルの2階と3階にはアクセルスペースが新オフィスを構えた


 また同ビル2階と3階には、冒頭で紹介したアクセルスペースが入居。アクセルスペースは、もともと神田小川町にオフィスを構えていたが、人員も急増して手狭になっており、新オフィスを探していたという。代表取締役の中村 友哉氏は、求めていた新オフィスの条件について次のように語る。

「我々は衛星を製作しているため、衛星を搬入・搬出するトラックを横付けできる道路があること、動線上に段差がなく、エレベーターの間口が広いこと、複数の衛星を同時に組立てられる広いクリーンルームを備えることに加え、衛星移動用クレーン導入のために天井の高さも必要でした。また営業面や人材確保の観点からも、都内の立地を希望しました」(中村氏)

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アクセルスペース 代表取締役
中村 友哉氏

 当然ながら、このような厳しい要件を満たす物件は、そう簡単には見つからず、困り果てていた。そこで三井不動産に相談したところ、「それならば、いっそのこと新たにビルをつくりましょう!」と提案を受けたという。「いま新オフィスに入居していますが、我々の要望を最大限に聞いていただき、大変満足しています」と中村氏は語る。

 アクセルスペースは1階のセミナースペースなどを利用し、今後さまざまなイベントを開催することで、宇宙ビジネスに興味のある人々の呼び込みを狙っている。

「オフィスの近くにコワーキングスペースがあれば、新しい価値を作りたい仲間が集まり、会員相互のインタラクションが生まれます。出会いのチャンスが多いほど、イノベーションが起きる確率も高まるでしょう」(中村氏)

 アクセルスペースは1階にあるセミナースペースなどを利用し、今後さまざまなイベントを開催することで、宇宙ビジネスに興味のある人々の呼び込みを狙っている。

「三井不動産さんは、いま日本橋にライフサイエンスのベンチャーを集めようとしていますが、まだ宇宙関連のベンチャーはほとんどありません。ものづくり系のベンチャーは、これまでは本郷や秋葉原を中心に集まっていましたが、我々がこちらに移転したことを契機に、今後多くのベンチャーにも進出してもらえると嬉しいですね」(中村氏)

宇宙はイノベーションを起こさないと産業にならない

 これまでもアクセルスペースは、宇宙ビジネスにおけるオープンイノベーションの重要性を説いてきた。中村氏は「イノベーションは、既存ビジネスの延長線上では起こりません」と指摘する。

「まさに宇宙はイノベーションを起こさないと産業にならない分野です。しかし、従来の宇宙開発は、基本的に最先端のモノをつくることが中心で、ビジネス面での利用方法を真剣に考える企業は少なかったと思います」(中村氏)

 つまり、宇宙というと科学分野や安全保障などの利用に限られたものだったのだ。国が高いお金を払って、衛星画像を買うことも多かった。しかし、それではビジネスの裾野も広がらない。中村氏は、「宇宙から地球を見る」という付加価値には、非常に高いポテンシャルがあり、さまざまな用途で利用できると踏んでいる。

「宇宙から地上を見ると、いろいろなことを発見できます。ただし衛星画像をそのまま渡しても大きなビジネスにはなりません。ユーザーが求める情報を衛星画像から抽出し、初めてビジネスになるのです。そのために、どういう業界で、どんなニーズがあるのかを把握する必要があります。まだ自分たちのビジネスに宇宙が使えるということを、夢にも思っていない企業がほとんどのはずです」(中村氏)

 そうなると、やはり偶然の出会いが大事になる。「宇宙からこんなこともわかる! ならば次はこれ」という気づきが生まれるかもしれない。中村氏は「我々が心がけているのは、宇宙がビジネスに使える時代になったことを周知していく点です。まさに31VENTURES Clipニホンバシを、宇宙の活用法を考えるための”きっかけの場”にしたいと考えています」と語る。

 ただし宇宙ビジネスというと、かなりセンシティブな情報を扱うこともあるだろう。それがオープンイノベーションの足枷になることはないのだろうか? この点について、中村氏は楽観的に考えているという。

「機密情報や保持すべき情報は、衛星のハードウェア部がほとんどを占めるからです。オープンイノベーションは、衛星の利用方法やアプリケーションにあり、ハードウェアの中身には関係しません。あくまで衛星画像から、どんな情報を抽出し、それを産業にどう使えるのかという話になります。企業同士で外部から見える情報を出し合い、新しい価値を生み出すことが重要です」(中村氏)

 もうひとつ重要な点は、大企業との連携だ。アクセルスペースは、ベンチャーとの連携はもちろん、大企業との関係も模索している。

「やはり大企業が動いてこそ、宇宙が産業になっていくと思います。トレンドとしても、大企業がベンチャーと組んで新規ビジネスを進めようというムードになっています。我々は多くの業界で使える情報プラットフォームをつくり、異なる業界とWin-Winの関係を築きたいと考えています。そういう事例をいくつ作り出せるのか、それがキモになります」(中村氏)

【次ページ】 「上空から地上のデータを収集する」意味でドローンはライバルになるか?
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