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日本のスタートアップが宇宙開発史にその名を刻む日が来るかもしれない。日本時間2022年12月11日16時38分、ispaceの月面着陸船(ランダー)がスペースX(SpaceX)のFalcon9ロケットで打ち上げられた。ランダーの月面着陸が成功すれば、民間企業としては世界初の快挙となる可能性がある。
ロボットや実験機器を月面へ、ispaceの輸送サービスとは
月面探査を計画するスタートアップ アイスペース(ispace)の月面着陸船(ランダー)が2022年12月11日、イーロン・マスクが代表を務める航空宇宙メーカー SpaceXの商業用打ち上げロケット「Falcon9」により打ち上げられた。ispaceの民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」のミッション1にあたる。
今回の打ち上げの目標は、同社のメイン事業である、探査・ 資源開発に資する「月の情報と地球-月輸送サービス構築に向けた技術検証」である。
打ち上げられたHAKUTO-Rのランダーは、着陸脚を広げた状態で幅約2.6メートル、高さ約2.3メートル、重さ約340キロ。ランダーの上部には約30キロのペイロード(荷物)を搭載でき、ペイロードを地上から月面に運ぶ輸送サービスを行う。今回搭載されたペイロードは以下の7つ。
ミッションの現状、「23年4月末ごろの月面着陸」の理由
HAKUTO-Rランダーはおよそ4カ月半から5カ月かけて月面に向かう。月面着陸は2023年4月末ごろになる見込み。アポロ計画では打ち上げから約3日で月面に到着していたことと比較すると、HAKUTO-Rランダーは月面着陸までに比較的長い時間がかかることがわかるだろう。ispaceは期間が長くかかるが、太陽の重力を利用して航行することで燃料を節約できるルートを採用し、HAKUTO-Rランダーの積載量を最大化している。
ランダーはロケットから分離され、順調な航行を続けている。打ち上げ準備から月面着陸までのマイルストーンは10段階。2022年12月16日の時点で、マイルストーンの4段階目にあたる、予定の軌道にランダーを投入する「初期軌道制御マヌーバ(宇宙船の軌道を変えるべく推進システムを使用すること)」が完了、2023年1月2日にはミッション運用計画に沿って2回目の軌道制御マヌーバを実施したと発表している。
また、HAKUTO-Rランダーに搭載されたカメラが撮影した画像データの取得にも成功し、ispaceはその画像を公開している。
ispace「月面着陸船打ち上げ」は何がスゴいのか?
そもそもispaceとはいかなる企業なのか? これまでの歴史とともに振り返る。 ispaceは、2010年の創業(前身となるホワイトレーベルスペース・ジャパンの設立)より一貫して「民間による月面探査」を目指している企業である。
ispaceの月面への挑戦が始まったのは12年前にさかのぼる。月面探査レース「Google Lunar XPRIZE」の参加チーム「HAKUTO」として、月面を走行する探査車(ローバー)の開発を始めた。当初は2018年にローバーを打ち上げる予定だったが確保していたロケットの打ち上げを断念し、Google Lunar XPRIZEは月面走行を達成するチームが現れないまま、2018年3月に終了した。
しかしispaceは諦めなかった。月面着陸と月面探査の2回のミッションを行う月面開発プログラム「HAKUTO-R」を始動させ、打ち上げに漕ぎ着けた。今回はHAKUTO-Rの第1弾(ミッション1)にあたり、独自のランダーの月面着陸を目指している。
HAKUTO-Rランダーには、UAE(アラブ首長国連邦)の宇宙機関の月面探査ローバーやカナダ企業のAIのフライトコンピューターとカメラが搭載されていることから、輸送サービスのグローバル化を実現している。
同社は、2017年12月に、シリーズAラウンドで当時の国内スタートアップ企業による資金調達では国内過去最高額となる101億5,000万円を調達、累計調達額は268億円に達するなど、宇宙ビジネスのスタートアップとして巨額の資金調達に成功している点も特徴だ。
では、ispace「月面着陸船打ち上げ」はどんな点で「スゴい」のだろうか。注目すべきは「民間主導」「月面ビジネスを切り開いたこと」の2点だ。
【次ページ】なぜispaceは「SpaceX」と組んだのか?
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