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- 2022/04/29 掲載
宇宙分野でも進む「脱ロシア」、高まるイーロン・マスクの「スペースX」の存在感
ロシアの情報遮断攻撃を無効化するスターリンク
ロシアによるウクライナ侵攻では、ウクライナを支援するさまざまな取り組みが実施されている。その中でもイーロン・マスク氏による衛星インターネットサービス「スターリンク」支援は、ウクライナ側の情報取得・発信を維持する上で非常に重要な役割を果たしている。情報戦・サイバー戦が激しさを増す中、ウクライナ国内のインターネットインフラを狙った攻撃が激化しており、一部地域ではインターネットが1週間利用できないといった事態も報告されている。
米NBCニュースが伝えた市街戦の専門家ジョン・スペンサー氏の説明によると、市街戦において真っ先に攻撃対象となるのは情報通信インフラという。ニュースや情報へのアクセス手段、またお互いにコミュニケーションをとる手段を遮断することで、反撃するための組織化や情報交換などを阻止することが目的となる。スペンサー氏は、ロシア軍がウクライナの情報通信インフラを攻撃している可能性が高いと指摘している。
しかし、マスク氏のスターリンク支援によって、ロシアによる情報遮断攻撃は無効化された公算が大きい。
スターリンクの衛星インターネットは、受信アンテナとWi-Fiルーターがあれば、どこでもインターネットが利用できるサービス。すでに多数のスターリンク衛星インターネットキットがウクライナに到着しているのだ。
スペースXのグウィン・ショットウェル社長がCNBCに語ったところでは、受信アンテナ、三脚、Wi-Fiルーターを含むスターリンクキットは、すでに数千セットがウクライナに送られたという。
ウクライナでは、到着したスターリンクを設置し、インターネットが利用できることを報告する画像がソーシャルメディアに投稿されている。現地エンジニアの実験では、200Mbps以上の通信速度が記録された。
国際宇宙ステーションをめぐる動き
スターリンク支援をきっかけに、ウクライナ情勢に関して、直接的な関与を強めるマスク氏の発言・行動が増えている。その1つとして国際宇宙ステーション(ISS)に関しての発言・行動が挙げられる。
ISSは、NASA(米国)、ロスコスモス(ロシア)、JAXA(日本)、ESA(欧州)、CSA(カナダ)の5つの宇宙関連組織が実施している国際共同プロジェクトだ。
ロスコスモスの代表ドミトリー・ロゴージン氏は、米国によるロシア制裁発動後、自身のツイッターで、対ロシア制裁がISSプロジェクトの国際協力関係に悪影響を及ぼしていると非難した。現時点でロシアがISSの軌道を管理しており、もしロシアがISSプロジェクトから脱退すれば、ISSは軌道から外れ、地上に落下する危険があると指摘。ISSはロシア上空を飛んでおらず、落下するのは米国や欧州、またインドや中国になる危険があると警告した。
同氏のロシア語ツイートの英語訳は「If you block cooperation with us, who will save the ISS from an uncontrolled deorbit and fall into the United States & Europe(ロシアの支援なしではISSの軌道がコントロールできなくなり、ISSが米国や欧州に落下する危険がある。これを誰が止められるのか)」。
実際、現時点でISSは、ロシアの宇宙船ソユーズの推進力を利用して、軌道がコントロールされている。ロゴージン氏の発言は、このソユーズの推進力がないと、ISSは軌道を外れ、地球に落ちてしまうことを示唆するものと受け取られている。
ロゴージン氏の発言に対し、返答したのがマスク氏だ。
マスク氏は上記ロゴージン氏のツイートに対し、スペースX社のロゴ画像で返信。ロシア以外に誰がISSの軌道をコントロールし、落下を阻止できるのかという問いかけに「スペースX」なら可能だというメッセージを発した格好だ。
ソユーズに取って代わると目されるのがスペースX社の宇宙船「Dragon」。2012年からISSへの物資を届けるカーゴ船として、また2020年からはISSへの有人宇宙船として利用されている。
【次ページ】宇宙インターネット競合企業、スペースXに打ち上げ依頼
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