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準天頂衛星システム「みちびき」の高精度測位サービスは2018年11月に提供が予定される。2017年に「みちびき」の3機が打ち上げられたことにより、4機体制を整備し、世界初のセンチメートル級の測位を実現できるようになった。我々の暮らしや未来の生活はどのように変わっていくのだろう。
「みちびき」とは何か
みちびきとは、準天頂軌道の衛星で構成される衛星測位システム(Quasi-Zenith Satellite System:QZSS)のことである。衛星から位置情報を計算するシステムであり、全地球測位システム(Global Positioning System:GPS)と同じように衛星により現在地を測定できる。
みちびきはGPSと互換性があるため、「日本版GPS」と呼ばれることもあり、GPSの役割を補完することを期待されている。GPSでは誤差数メートル単位だった位置測定の精度を数センチにできるという特徴を持つ。
みちびきの初号機や2号、4号は高度3万6,000キロメートルで赤道面に対して角度をもたせた軌道を描く「準天頂軌道」を回る衛星である。地上から見るとこの軌道上にある衛星は「8の字」で動く。
みちびきは2010年9月11日に初号機を打ち上げられ、JAXAにより運用されている。2011年に内閣府が「4機体制を整備した後、7機体制を目指す」としていた。
2010年の初号機打ち上げから追加で3機(準天頂軌道2機、静止軌道1機)を開発し、2017年度に打ち上げを実施した。また、「2023年度をめどに持続測位可能な7機体制での運用を開始する」と決定されている。
4機以上の衛星で衛星測位は可能である一方、より安定して位置情報を得るために、より多くの衛星が必要としている。
なぜ「みちびき」は必要なのか、これまでの経緯
なぜみちびきが必要なのだろうか。それは、GPS衛星のみでの運用では都市部や山間部、障害物により電波が遮断されて可視できる衛星が減ることによりサービスの精度が落ちてしまうことがあるからだ。
一方、GPSは米国が運用しているため、日本だけの取り組みでは高精度な測位が難しかった。こうした問題を解消するため2006年から文部科学省・JAXA、総務省、経済産業省、国土交通省が連携し、2010年9月に「みちびき」初号機を打ち上げることとなった。2017年には、「みちびき」の2、3、4号機の打ち上げに成功し、4機体制を整備した。
2018年、みちびきが4機体制になると、このうち3機はアジア・オセアニア地域の各地点では常に可視できるようになり測位誤差が改善が期待できる。
みちびきはGPSと互換性があり、安定した高精度測位に必要な衛星数「4」を維持できるようになる。GPS衛星も活用しつつ、測位信号を補強することでセンチメートル級の高精度な測位を可能とする世界初の高精度衛星測位サービスを2018年11月から提供する予定だ。
また、GPS互換性があるみちびきの受信センサーは安価であり、この点でも位置情報や空間ビジネスが期待できる。
「みちびき」にどんなことができるのか
準天頂衛星システム「みちびき」の高精度測位サービスは2018年11月から提供が予定されており、自動車分野をはじめとしたさまざまな分野での新技術の開発やビジネスの実用化が期待されている。
内閣府は2018年7月19日、「準天頂衛星システム利活用促進タスクフォース 第1回」を開催し、官民一体となって準天頂衛星システムの利活用の促進に向けた取り組みを加速していくことを目指し、議論・検討を行っている。
準天頂衛星システム「みちびき」が提供するサービスの主な機能は、(1)GPSの機能を補完する衛星測位サービス、(2)GPSの機能を補強する測位補強サービス、(3)メッセージサービスから構成される。
2018年11月からは、測位関連では、「衛星測位サービス」「センチメータ級測位補強サービス」「サブメータ級測位補強サービス」が提供され、メッセージ関連では、「災害・危機管理通報サービス」と「衛星安否確認サービス」が提供される予定だ。
政府や外郭団体などにおいても準天頂衛星システムに関する実証などの取り組みが進められている。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、平成29~31年度の研究開発「準天頂衛星を活用した無人航空機物流事業の促進(ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト)」において、「みちびき」の高精度測位情報を活用して自律的に飛行経路の変更など精密に飛行する技術(ダイナミック・リルーティングシステム)の開発を進めている。
本年度からは、本格運用される準天頂衛星システムの高精度位置情報を活用し、無人航空機による離島などへの安全な物流の実現に向けて飛行実証を行い、平成32年度の実用化を目指している。
日本では、少子高齢化・人口減少などによる離島・過疎地における物流網の維持が大きな課題である。これに対し、「みちびき」の高精度測位情報の活用により、一定の空域内における多数の飛行経路を設定した高密度運航を実現することで、無人航空機の活用による物流分野の省人化・コスト削減が期待されている。
経済産業省の取り組みでは、世界有数の交通渋滞国のタイの首都バンコクにおいて、豊田通商が事業主体となり、渋滞緩和に向けた実証を行っている。準天頂衛星システムなどを活用し、車線単位の渋滞情報を把握し、情報に基づいた高精度な自動車向けルートガイダンスの実証である。
【次ページ】「みちびき」に対応した民間企業のサービス
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