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  • 2018/12/25 掲載

【2019GAFA展望】受難の[F](フェイスブック)、だが将来への種はまいた

連載:米国経済から読み解くビジネス羅針盤 

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頭文字をとってGAFAとも呼ばれる米テクノロジー大手4社のグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンにとって、2018年は社会やユーザーとのつながりにおいて「激動」「転換点」と形容することがふさわしい1年であった。そこで、GAFA各社の2018年中の施策や変化、出来事を総括しながら、2019年の同社の行方を展望していきたい。1社目は、ジェットコースターのような下降や上昇を繰り返し、全体的には“ひどい受難の年”となったフェイスブックだ。
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2018年4月10日、国会議事堂前に並べられたザッカーバーグCEOのパネル。
情報流出事件の証言を行うべく米上院公聴会に出席した同氏への、抗議の意味を持つ。

(写真:AFP/アフロ)

相次ぐスキャンダルで信頼を失った1年

 2018年1月4日、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は新年の抱負で、「フェイスブックはヘイトスピーチの拡散、国家によるフェイスブックの政治利用、そして「時間の無駄」との批判など、重要課題の解決に取り組む」と宣言した。

 具体的には、「フェイスブックは広告量をあえて減らし、友人や家族とのつながりの原点に立ち返る」ことを約束したのだった。この自主的で機先を制した改革により、同社は信頼を取り戻し、より大きな発展の基礎を固めるはずであった。

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 ところが、事態はザッカーバーグCEOの思惑とは正反対の方向に進み始める。最も打撃が大きかったのは、3月17日に報じられて大問題となった、英選挙コンサルティング企業ケンブリッジ・アナリティカによるフェイスブックのユーザー情報悪用だ。

 およそ8700万人分にのぼる膨大な数のユーザーの嗜好や性格の詳細なデータが、ケンブリッジ・アナリティカのような第三者アプリ開発者にアクセス可能な欠陥仕様によって投票行動の操作や誘導に悪用され、2016年の米大統領選挙の結果を実際に左右した可能性が浮上したのだ。

 しかも、フェイスブックは悪用を防止する十分な対策をとらなかったばかりか、サードパーティー開発者にデータを渡さないと公言した後も、データへのアクセスを許していたことが明らかになった。

 広告精度向上のために個人の嗜好(しこう)や政治的性向がセンセーショナルに誇張されるフェイスブックの「コミュニティ形成」の手法は、英国の欧州連合(EU)離脱、ミャンマーでの少数民族迫害、フランスにおける暴力的な反政府抗議などに決定的な役割を果たした可能性も指摘されており、フェイスブックは一部から「民主主義の敵」とさえ非難されるありさまだ。

 その後も、6月にぶっつけ本番の機能テスト中のバグにより、1400万人文の秘密のグループを含む投稿を全員に意図せず公開してしまったことが発覚、9月にはハッカーによる攻撃で2900万人分のフェイスブックユーザーの個人情報が流出したことが明らかになり、12月にはユーザーの閲覧許可のないものを含む最大680万人の写真データの流出の可能性が発覚するなど、基本的なセキュリティ問題が後を絶たない。

 これに加え12月には、フェイスブックがマイクロソフトやアマゾン、ネットフリックスを含む150のテクノロジー企業に対して、ユーザーやその友人の明確で納得した上での同意なく、プライベートメッセージを含む広範な個人データへのアクセスを認めていたことが報じられた。こうしたデータが、フェイスブック利用者に対する「知り合いかも」通知の重要な判断要素になっていた可能性が指摘されている。

 不祥事が次々と報じられる中、フェイスブックには「信頼できない企業」とのイメージが染みついてゆく。オンラインアンケートのサーベイモンキーによれば、もともと低かった同社の好感度は2018年3月に5%と、2017年10月の33%からさらに28ポイントの急落を演じた。

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 広告効果を「水増し」したとして10月に代理店から提訴された問題なども氷山の一角に過ぎず、「自浄能力に欠ける経営陣の、ガバナンスに関わる根源的な問題が表面化した一連の事象」として世論に捉えられるようになってきた。

 ケンブリッジ・アナリティカ事件直後の世論調査では回答者のほとんどが「フェイスブックは信頼できない」との答えを選択する一方、5月から6月にかけて行われた調査では42%が使用頻度を減らしていると回答し、54%がプライバシー設定を見直したと述べた。これは同社が収集できるデータの量や質の潜在的な低下、さらには広告販売にも悪影響を及ぼす可能性がある結果だ。

 そうした中、欧州各国や日本、オーストラリアなどがフェイスブックの違反行為調査や個人情報保護の規制強化に乗り出し、同社は追い詰められている。

それでも広告事業が「無敵」のワケ

 だが、フェイスブックの主力である広告事業は、不祥事のたびに強靱(きょうじん)さを見せてきた。ケンブリッジ・アナリティカ事件発覚直前の株価が185ドルあたりであったものが直後に150ドル近辺まで下落した後、7月には最高値を更新して215ドルに迫るという大逆転劇を演じたのである。

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 ただし7月26日に同社が広告事業業績の伸びの予想を引き下げると、株価は20%近くの急落を演じた。そこから戻す場面もあったものの、12月現在は年初の180ドル近辺よりも下げている。

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2018年に入ってからのフェイスブック株価は、ジェットコースターのような不安定な値動きを繰り返した。現在は年初よりもかなり低い価格で取引され、7月のピークからは約40%も下落している。
(出典: グーグル検索結果)

 とはいえ、底なしの「暴落」ではなく、押し目買いも入るなど、投資家はフェイスブックを見捨てていない。これは、全世界で月間ユーザー数22億7000万人という圧倒的な数の人々にとって、フェイスブックのプラットフォームが毎日の「情報インフラ」になっていることに加え、フェイスブック広告が「入札制」であることも大きい。

 フェイスブックが信頼問題の解決策としてフェイクニュース追放などに注力し、プラットフォーム上の広告枠が減少すれば、売上が減少するどころか、入札制の限られた広告供給に対する相対的な需要がさらに高まる。そのようにして広告料金が自動的に値上がりして、同社の収益は増大する。投資家がこのメカニズムを理解しているから、フェイスブック株は紙くずにならないのである。2018年に明らかになったことは、同社が「焼け太り体質」であるということだ。

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 フェイスブックの広告精度はグーグルと並び最高峰であり、ユーザーの不信感とは対照的に広告主の満足度は極めて高い。フェイスブックに出稿したい企業は減ることがない。そのため多くの投資家は、同社が引き続き優良な投資先だと見ている。

 事実、2018年1~3月期と4~6月期を比較すると、フェイスブック部門の広告収入は伸びが鈍化しているものの、全体の同部門売上は増えている。さらに、7~9月期の売上は137億3000万ドルとアナリスト予想を6000万ドル下回ったものの、前年同期比では32%上昇して、成長が底堅いことを示した。

 また、若年層へのアピールが強い傘下のインスタグラムの売上が急伸している。親会社フェイスブックの広告売上増加の鈍化を、「孝行息子」であるインスタグラムが補う構造が、2018年に鮮明となった。

 言い換えれば、フェイスブックグループのビジネスモデルは成熟の域に達しており、簡単には揺らがないということだ。同社は2019年にセキュリティ対策やプライバシー保護に関する投資を加速させ、投稿検閲員の雇用も増やす計画を明らかにしており、収益はさらに減速する。だが長期的に見れば、これが数年スパンで実を結び始める可能性がある。

 さらに、すでに取締役会で承認済みの150億ドルの自社株買いに加え、90億ドル(約1兆円)の追加自社株買いで株価を手っ取り早く上昇させ、市場と世論の信頼回復を狙う。

 こうした理由から、「フェイスブック株は割安となっており、押し目買いのチャンスである」と推奨する米投資サイトの記事も現れ始めた。ドイツ銀行のアナリストも12月10日付の投資家向け分析で、「フェイスブック株は実際の価値より安く評価されている」と言明している。

【次ページ】将来への種もまいたフェイスブック、「最大の経営リスク」とは
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