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米フェイスブックが、あらたなデジタル通貨「リブラ」を使った金融サービスに乗り出す方針を明らかにした。全世界で27億人の利用者を抱えるフェイスブックがデジタル通貨に乗り出したインパクトは大きく、7月17日、18日に行われたG7で「最高水準の規制が必要」と総括されるなど、リブラをどう位置付けるべきなのか侃々諤々の議論となっている。
リブラは仮想通貨ではない?
米フェイスブックは2019年6月18日、デジタル通貨「リブラ」を使った金融サービスを2020年からスタートすると発表した。デジタル通貨を発行することで、利用者が互いに送金したり、ショッピングの決済に利用できる。フェイスブックは現時点で27億人の利用者を抱えており、このサービスが実現すれば、一夜にして全世界を網羅する巨大な送金・決済プラットフォームが出現することになる。
リブラをめぐる市場の反応は千差万別である。
仮想通貨(暗号通貨)の業界では、リブラがドルやユーロと一定比率で交換できるタイプの通貨であることから、本当の意味での仮想通貨ではないと捉える人が多いようだ。リブラは、ビットコインなど既存の仮想通貨と同様、ブロックチェーン(分散型台帳)の技術を使っているが、ビットコインとの最大の違いは価値の源泉にある。
ビットコインは、管理通貨制度における法定通貨と同様、利用者の信用をベースに、通貨そのものに価値が生じており、別の資産の価値を裏付けとしたものではない。
一方、リブラは、ドルやユーロといった既存通貨による価値の裏付けがあって成立するので、それ自体に根源的価値が生じているわけではない(詳細はまだ明らかではないが、複数通貨によるバスケット方式で価値を担保するものと思われる)。
自身には価値が生じないという点から、リブラについては、仮想通貨ではなく大規模な電子マネーと見なすことも可能であることから、本格的な仮想通貨の普及を目指す人たちにとっては、少し失望したという面があるようだ。
実際、リブラの発表を受けて、日本の通貨当局は、仮想通貨にはあたらないという見解に傾きつつある。最終的な判断がどうなるのかは分からないが、ビットコインと同列の位置付けにはならない可能性が高い。
ビットコインが決済に使われないのは当たり前
リブラが既存の法定通貨をベースにしたのは、フェイスブックがリブラを決済手段として普及させることを狙っているからである。
ビットコインに代表される仮想通貨は価格変動が激しく、決済手段としては使いものにならないという指摘は多い。一方、リブラは主要通貨との一定比率での交換を保証することで、決済通貨としての利便性を最優先している。
もっとも、この指摘は少々本質からズレたものであり、価格変動があることと、決済通貨として不適切であることは、本来は別の問題と考えた方が良い。
多くの人が、ビットコインを決済に使わないのは、本当の価値がいくらなのかまだ確定しておらず、今後、値上がりするかもしれないとの期待をまだ持っているからである。
考えてもみてほしい、今、自分が日本円以外の通貨を持っていて、今後、激しくその通貨が値上がりする(つまり円が値下がりする=円安になる)と予想しているのなら、その通貨で決済するだろうか。
言うまでもなく答えはノーである。つまりビットコインについては、その価値が(ゼロであることも含めて)市場として完全に定まるまで(つまりボラティリティが低くなるまで)、決済に使う人が現れないのは当然のことである。
リブラについても、ビットコインと同様の仕組みにするという選択肢はあったはずだが、それではボラティリティが低下するまで決済に使うことはできなくなる。
フェイスブック上での各種決済サービスなどを想定している同社としては、価格の安定が何より重要であり、それゆえに、法定通貨を価値の裏付けにしたものと考えられる。
ではリブラは、単に規模の大きい電子マネーなのだろうか。大きな枠組みとしてはそのように位置付けて良いだろうが、必ずしもそうとは言えない部分がある。
【次ページ】実質的には仮想通貨に近いリブラ、そのポテンシャルとは?