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  • 2018/11/16 掲載

東芝デジタルソリューションズ 錦織弘信社長が描くCPS戦略、匠の技とデジタル融合

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2018年5月に全社変革計画「東芝Nextプラン」において、「社会インフラ」「エネルギー」「電子デバイス」「デジタルソリューション」への取り組み強化を発表した東芝。「デジタルソリューション」事業の重責を負うとともに、ものづくりとデジタルの融合「CPS:サイバーフィジカルシステム」への取り組みのキーとなる企業が東芝デジタルソリューションズだ。同社は自らをどう変革し、生き残りをかけようとしているのか。東芝デジタルソリューションズの取締役社長 錦織弘信氏が語った。
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東芝 執行役専務
東芝デジタルソリューションズ 取締役社長
錦織弘信氏

10年で世界は激変。東芝はCHANGEとCREATEで生き残りをかける

 リーマンショックから10年が経ったが、経済成長率は全世界で4.2%から3.3%へ、先進国では2.8%から1.2%と低迷が続いている。一方で、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)が台頭し、それに続く中国のアリババやテンセントも時価総額を伸ばしている。この10年間で世界の在り方も大きく変わった。

 「TOSHIBA OPEN INNOVATION FAIR 2018」に登壇した錦織氏は「デジタル化の波が押し寄せ、FA(ファクトリーオートメーション)、ロボットやドローンによる物流、リモートオペレーション、監視・防止カメラ、EC社会、スマートストア、シェアリングエコノミーというように、デジタルサービスが普及しつつあります。今後さらにAR/VRも進展するでしょう」と指摘する。

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 いまや世界は所有前提のモノ中心の経済システムから、サービス提供による新しい経済システムに変化しつつある。DXというキーワードが登場してから久しいが、これを東芝では2つの言葉で表現している。つまり、デジタル技術でビジネスを変革し続けるための「CHANGE」と、オープンイノベーションで価値を共創し続ける「CREATE」だ。

「これまでの産業資本主義がDX化されるなかで、既存市場が変革されるだけでなく、まったく異なるディスプラプター(破壊者)が参入し、新市場や価値を生み出すようになってきました。まさに既存プロセスを変え、お客様のバリューアップを実現するデジタル資本主義の世界の到来です」(錦織氏)

東芝の新たな姿と、DXへの取り組み

 東芝は創業の1875年以来、日本で約140年にわたってモノづくりを進めてきた企業だ。からくりで有名な天才発明家の田中久重と、日本のエジソンと呼ばれた藤岡一助という創業者によってスタートした。現在の東芝は、両氏の精神を引き継ぎながら、「社会インフラ」「エネルギー」「電子デバイス」「デジタルソリューション」という新しい4つの事業を強化している。

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CAP東芝の新たな4つの事業ドメイン。「社会インフラ」「エネルギー」「電子デバイス」「デジタルソリューション」が柱だ

 このうち錦織氏が率いる東芝デジタルソリューションズは「デジタルソリューション」を主軸にしつつ、他の3領域を支援するIoTプラットフォームも提供している。同社は今年度からデジタルビジネスを加速させるために、コーポレート事業を新設し、デジタルトランスフォーメーション戦略の体制も整え、DXを推進する「CPS」(Cyber Physical System)の概念を前面に押し出している。

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DXを推進する「CPS」(Cyber Physical System)の概念。CyberとPhysicalを連携させ、現場の経済価値を生み出す

「リアルな現場から収集したデータをデジタルの世界にアップし、それらを蓄積して利活用できるようにします。徹底したシミュレーションを行い、その成果を再び現場に戻すことで、経済価値を生み出せるようにします。これは、まさにCyberとPhysicalの連携であり、現場を持つ東芝だからこそシステムが回るのです。このCPSをつくる手法が“デジタルツイン”と呼ばれるものです」(錦織氏)

 デジタルツインは、現場にある世界を双子(ツイン)のようにコンピュータで再現し、そこでシミュレーションを実施して、現場のリアルな世界に戻すという手法だ。CPSとデジタルツインが東芝デジタルソリューションズのかなめとなる。

CPSのサイクルを実現するIoTブランドの「SPINEX」を全面に

 東芝は社会インフラ、エネルギー、電子デバイスといったモノづくりをリアルな世界で実現してきたという強みがある。さらにIoTデータを活用し、リアルとデジタルを結ぶCPSのサイクルを実現するために、IoTブランドとしての「SPINEX」を展開していく方針だという。

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CPSのサイクルを実現するために、IoTブランドとしての「SPINEX」。エッジコンピューティング、AI、デジタルツインを内包する

 錦織氏は「SPINEXには、エッジコンピューティング、アナリティクスAI(SATLYS)/コミュニケーションAI(RECAIUS)、デジタルツインという3つの特徴があります」と語り、SPINEXの具体的な事例を示した。

 デジタルツインでは、2013年にオープンした自社ビルであるラゾーナ川崎東芝ビルの事例が挙げられる。ここで5年間にわたり徹底的にデータを収集し、IoT×ビルファシリティとしてデータを活用する実証実験を行ってきた。最新の省エネ機器を利用し、人の動きに合わせて空調や照明などを最適制御することで、ビル全体のエネルギーを35.2%、CO2を54%削減。またエレベータは、画像センサを活用したスマートドアにより、人に優しい効率的な運転を実現している。

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デジタルツインの事例。ラゾーナ川崎東芝ビルは、IoT×ビルファシリティとしてデータを活用する実証実験の場になっている

デジタルツインの事例。ラゾーナ川崎東芝ビルは、IoT×ビルファシリティとしてデータを活用する実証実験の場になってりいる。

「ビルのビッグデータとデジタルツインによる最適制御から、省エネ、保守要員の不足解消や故障レスに加え、快適性も両立させました。今後は我々のビルだけでなく、他のお客様も含めて、このソリューションを提供したいと考えています」(錦織氏)

 また同社は、米カーネギメロン大学と共同で、エネルギーシミュレーション技術を研究し、すでに計算時間も半分に短縮したという。将来を見据えて、ビルに必要なエネルギーを自己発電でつくりだす究極の省エネ技術「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル」(ZEB)の実現に向けた取り組みも始まっている。

 もうひとつの事例として同氏が紹介したのが、阪神高速道路との共同研究である「橋梁デジタルツイン」だ。実在する橋をデジタルで忠実に再現するために、8千万点×6方向で5億自由度を収集し、橋にかかる車両荷重を模擬した変形シミュレーションを可能にし、超大規模な解析を実現した。

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阪神高速道路との共同研究「橋梁デジタルツイン」。計5億自由度を収集し、橋の変形シミュレーションと超大規模解析を実現した

「経年劣化の状況を常に把握しながら、災害時の状態把握も含めて、老朽化対策、災害対策、維持管理の効率化を阪神高速道路と共に行っていきます」(錦織氏)

【次ページ】モノづくりの高度化、東芝のノウハウを活用し、難しい技術伝承も解決
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