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サッポロでは、「異次元スピードでの経営変革」という中期経営計画の下、グループを挙げて働き方改革に取り組んでいる。そこでは、より働きやすい環境を整備するとともに業務見直しによる労働生産性向上をめざしており、その一環として社内問い合わせ対応という“減らしたい業務”にチャットボット型AIを導入した。導入を手掛けたサッポログループマネジメント グループIT統括部営業情報グループ課長代理 河本英則氏に聞いた。
止める・減らす業務の対象にした「社内問い合わせ対応」
2026年、サッポログループは創業150年を迎える。同グループではこれを見据えた長期経営ビジョン「SPEED150」として、「世界に広がる『酒』『食』『飲』で個性かがやくブランドカンパニーを目指す」を掲げ、「異次元スピードでの経営変革」を第一次中期経営計画テーマとした。
そうした中、人事、経理、ITなどの間接部門で構成された機能分担会社 サッポログループマネジメント(以下、SGM)でも、“グループ・事業会社の経営基盤に変革をもたらし、利益創出に貢献する事”とのミッションの下、その遂行に全力を挙げている。
経営基盤を変革する上で、必要不可欠だったのは「働き方改革」。業務内容を調査してみると、社内問い合わせ対応や会議に多くの時間が割かれており、労働生産性の低さが課題となっていたという。
そこで「働き方改革★2020」の名の下、テレワークやスーパーフレックス、インターバル制度など働きやすい環境を整備するとともに、業務のあり方・やり方を抜本的に見直すことになった。ここでSGMが焦点を当てたのは「止める・減らす業務」の洗い出しで、社内問い合わせ対応はまさにその筆頭格だった。
求めている回答を即座に得られる仕組み、それにAIが合っていた
サッポログループマネジメントグループIT統括部営業情報グループ課長代理 河本英則氏は次のように振り返る。
「『もっとクリエイティブに仕事をするにはどうしたらいいか』、それが出発点でした」
中でも問題だったのが社内問い合わせだ。「ナレッジが属人化している」「FAQの所在がわからない」「FAQが更新されていない」など、さまざまな課題があり、問い合わせする側も問い合わせを受ける側も疲弊していたのだという。
「実現したかったのは求めている回答を即座に得られる仕組みで、社員が本来の仕事をする時間を生み出すことでした。特に、念頭に置いていたのは営業担当者のサポートで、これによってお客さまにもっと向き合える時間を捻出したいと考えました。私自身が営業出身で切実にそう思っていたからです。この仕組みづくりにAIが合うのではないかと思っただけで、最初からAIありきのプロジェクトではありませんでした」
そしてAIに関する情報収集を開始するのだが、そこで重視したのは製品情報収集ではなく、すでにAIを導入した企業やこれからAIを導入しようとしている企業との本音の情報交換だった。プロジェクト全体を通じて、ここが最も大きな気づきを得たプロセスだった。
河本氏は仕組みの導入効果を具体化させ、運用イメージまで明確にすると、社内問い合わせAI構想を論文にまとめ、提言制度を活用して実現を訴えた。
論文は予選を通過、経営陣を前にプレゼンテーションを行った結果、ゴーサインが出たのみならず、「実は長らく実現したいと思っていた」「どうせなら営業のみならず全社を対象に」と明かされ、激励されたという。
経営陣に実現したい思いがあったのに、なぜこれまでは顕在化しなかったのか。この点について河本氏は次のように推測する。
「考えてみれば、こうした業務変革を誰よりも望んでいるのは経営陣で、それに資する最先端の技術情報にも一般社員以上に触れています。しかし、下手にトップダウンプロジェクトとすれば人をどうアサインして体制を作るかという難しい問題も出てきますし、社員にとってはやらされ感が生じるかもしれません。そこへボトムアップでアイデアが上がってきたので『ぜひやりなさい』となったように思います」
【次ページ】テキストマイニングの知見を評価してチャットボットAIを導入
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