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2017年11月、クックパッドが料理動画への本格参入を開始し、さらに2018年3月、ライブ配信アプリ「cookpadTV」もリリースした。ライバルたちから1年以上遅れてのこのスタートは、遅きに失するのだろうか? それとも20年間、日本の食を支え続けたノウハウが新興のクラシル、デリッシュキッチンをしのぐのだろうか。料理動画事業を進める3社の違いを見ながら、市場の未来を予測する。
「料理動画の雄」の称号は誰の手に?
クラシルは2014年創業のベンチャー企業、delyが運営する。代表の堀江裕介氏は学生起業から幾多の試行錯誤を繰り返し、料理動画配信を思いついたのが2016年2月のことという。スピードを重視し、着想から1週間でビジネスを料理動画に方向転換(ピボット)した。レシピ動画という金脈を掘り当てた同社の快進撃はまだまだ続いている。また、クラシルは「シズル感」を大切にしており、カメラのアングルがコロコロ変わる。手順ごとに手元に寄ったり俯瞰だったりとカット割りも凝っていて、その編集力には定評がある。
一方のデリッシュキッチンは2015年創業のエブリーが運営。社長の吉田 大成氏はグリー出身で、SNSゲームのヒット作品を手がけた。そこで、「1分のスキマ時間」の有効性に着目し、動画メディア事業をスタートしたそうだ。エブリーは料理動画だけでなく、20代~30代女性向けの「KALOS」、ママ向けの「MAMA DAYS」などさまざまなライフスタイル系動画を展開している。ただ、デリッシュキッチンの動画は上からのショットだけだ。カメラを固定し、わかりやすさを重視しているとも言えるだろう。
クックパッドは1997年に有限会社コインとしてスタートし、会社名やサービス名の変更を経て、2017年には月間6,000万PVを突破。日本最大級のグルメサイトで、料理が持つコンテンツ力のすさまじさを感じさせる。このクックパッドがいよいよ動画にも進出し始めたのは2017年11月のことだ。
クックパッドの料理動画事業は2018年3月現在、3つに分けられる。第一に、「cookpad studio」。誰でも料理して動画を撮影できる動画スタジオを作り、クックパッドユーザーに開放している。第二に、「cookpad storeTV」スーパーの売り場のサイネージ端末に、商品を宣伝する動画を配信する。
そして料理動画第三の事業として3月、クッキングLIVEアプリ「cookpadTV」をリリースした。cookpadTVでは料理をする専門家に対して、コメント機能を利用してリアルタイムで質問することができる。1分動画だけでは難しい、双方向性(インタラクティブ)なコミュニケーションが売りだ。
では、ここからはそれぞれの有料オプションや戦略の違いなど、みていこう。
有料プランで差、何を付加価値とするのか
3社の有料プランには明確な差がある。
クラシルは有料オプションとして、糖質制限ダイエットや産後の離乳食といった、専門性の高いレシピの提供に力を入れている。こうしたレシピは専門家のアドバイスが欠かせず、従来であれば本を読むしかなかった。万人が好む料理を作るテレビの料理番組もあまりこの手のレシピは見かけない。
デリッシュキッチンは3月から有料プランをスタート。雑誌に力を入れていて、「オレンジページ」や「サンキュ」といった雑誌を有料プランで見ることができる。エンタメ性が高く、見た目にも楽しく簡単な料理を手軽に見ることができるのが特徴だ。
クックパッドは、基本的に全コンテンツを無料とし、サイトでは270万品以上のレシピに対して、有料プランで検索機能を強化している。殿堂入りレシピ、デイリーランキング、ダイエットや働くママなどの目的別レシピ、人気順検索といった、「失敗しない」ための検索が強化されている。
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