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  • 2018/02/01 掲載

新たな「TVの時代」が到来、NetflixとAmazonビデオは何を破壊したか

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有料の動画配信サービス、いわゆるVOD(ビデオ・オン・デマンド)のビジネス自体は、試験的なものや定額制以外のモデルも含めて、10年以上前から存在した。NetflixとAmazonプライム・ビデオの強さについて述べた前編に続き後編となる今回は、これらの定額制動画配信サービスの利用者が昨今の日本で増加している理由を6つ紹介したい。
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多くのオリジナル作品を用意しているAmazonプライム・ビデオ
(出典:Amazonのウェブサイトから引用)


理由1:価格破壊

 「Netflix」「Amazonプライム・ビデオ」「Hulu」が提供する「月額数百円から1000円程度で見放題」という価格帯は、加入のハードルを大きく下げている。DVDレンタル料金に換算しても、数枚程度で元が取れる計算だ。CSの映画専門チャンネルやWOWOWなどの有料放送、月ごとのレンタル枚数に制限がある宅配DVDレンタルと比べても、この割安感は半端ではない。

 無論、「DVDレンタル化されているが、配信されていない作品」は各サービスとも膨大であり、一般的なDVDレンタル店の品揃えには遠く及ばない。が、一部の超コアユーザーを除いた多くのユーザーは「配信されている作品を消化する」だけでも十分に高いコスパを感じているのが実情だ。

理由2:視聴環境の向上

 定額制動画配信サービス普及にあたり最初に掴むべき顧客は、映像視聴に多くの娯楽費を割くアーリーアダプター――映画ファンやアニメファン――だが、彼らのなかでも非デジタルネイティブ世代である中高年層は、長らく配信での作品視聴に難色を示していた。PCの小さな画面で観るのを敬遠したからである。もちろん、PCやセットトップボックスを介してTVモニタに出力する手段も用意されていたが、機器の準備や接続で生じる手間に気後れするユーザーは少なくなかった。

 その状況を一変させたのが、2014年11月に米Amazonが発売し、日本でも2015年9月から販売した「Fire TV Stick(第一世代)」だ。その名の通りスティックタイプの同商品をTVのHDMIポートに直接挿すと、最小限の設定で家庭内のPCなどと無線LANでつながるため、リビングのTVモニタで手軽に配信を楽しめるのだ。

画像
Amazon Fire TV Stick
(出典:米Amazonのウェブサイトから引用)


 Fire TV Stickの白眉は、Amazonが自社サービスだけでなく、競合他社であるNetflixやHuluをはじめとした国内外多数の定額制動画配信サービスも視聴できる仕様とした点にある。「Fire TV Stick」は動画配信サービスを劇的に身近な存在に押し上げた功労者なのだ。

 さらに2010年前半は、40インチ、50インチオーバーのフルHD液晶テレビの価格下落が進んだため、Fire TV Stickの登場時には多くの家庭に「大画面でエンタテインメントを楽しむ」ためのインフラが普及していた。時期を同じくして、ネット対応テレビの発売も相次ぎ、リモコンに最初から「Netflix」ボタンが備わっているモデルも登場する。

 その時点で多くの配信作品はHD対応となっていたため、レンタルDVDのSD画質を凌駕し、かつ地デジ画質やブルーレイ画質に迫る画質が、安価で利便性の高い配信で享受できるようになった。映画ファンやアニメファンが“許容”できるレベルの配信視聴環境が、ようやく整ったのである。

理由3:質・量の充実

 各サービスとも、あまねくすべての映画やアニメやドラマを配信ラインナップとしてそろえているわけではない。しかし、それを補うのが前編で言及したNetflixオリジナル映画・ドラマ・アニメや、Amazonプライム・ピデオのオリジナルバラエティ番組だ。各サービスとも、そこでしか観られないオリジナル作品を、質・量ともに年々充実させている。

 昨今では、うるさ型の映画ファンがSNSなどで年末にベスト10を投稿する場合、配信専用作品(映画、ドラマ)などをランキングに含めたり、配信ドラマランキングを別立てとするケースも見られたりするようになった。Netflixの『ストレンジャー・シングス 未知の世界』『マインドハンター』、Amazonの『ミスター・ロボット』、Huluの『ナイト・オブ・キリング』『ビッグ・リトル・ライズ』など、映画ファンのお眼鏡に叶うドラマ作品は枚挙に暇がなく、彼らは「時間がいくらあっても足りない」と嬉しい悲鳴を上げている。

 かつて海外ドラマは2000年代に『24 -TWENTY FOUR-』『LOST』『プリズン・ブレイク』『SEX AND THE CITY』といった作品が日本での海外ドラマブームをけん引し、多くのファンを生んだ。昨今では当時以上に野心的・意欲的な作品が多数製作され、ジャンルも加速度的に多様化している。

 この傾向は、人種・年齢・文化背景を超えて誰もが理解できる作品をもって世界的メガヒットを狙わざるをえないハリウッド大作映画に対するカウンター、とも考えられるだろう。米国では「大味な超大作はもううんざり」という気分が、何年も前から製作側にも視聴者側にも鬱積している。結果として、最大公約数的なエンタテインメントの枠に留まらない、いっぱしの映画ファンが“批評”の俎上に乗せたくなる、エッジの立った作品がドラマシリーズとして相次いで企画された。

 Netflixは日本オリジナル作品の製作注力も目立つが、それを象徴するのが、2017年8月に公開された同社のCM「人間、明石家さんま。」だ。Netflixオリジナルドラマ『Jimmy ~アホみたいなホンマの話~』の企画・プロデュースを務めるさんまは、このCMで「(TVの)地上波が苦しくなっているのも事実」とした上で、「正直言うと民放さんよりもいい製作費を(Netflixに)出していただいて」「(作品づくりについてNetflixは)自由にやらせてくれる」と発言している。



 なお、Netflixオリジナルアニメ作品の独占配信権取得料は、1クールの総製作費(一般的に1億円台後半~3億円程度と言われる)の大半を占める――という話を業界関係者より伝え聞いていることも、ここに付記しておこう。

【次ページ】定額制動画配信サービスが普及する理由4,5,6
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