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- 2021/07/21 掲載
テレ東的・YouTube成功法則、なぜWebでも「テレ東ならでは」の動画を出し続けられる?
登録者100万人のYouTubeチャンネルはプロダクトアウトで始まった
──まず、テレ東BIZの成り立ちを教えてください。立花剛氏(以下、立花氏):テレ東BIZは、『ガイアの夜明け』『ワールドビジネスサテライト』などの経済番組を見逃し配信していた会員制有料動画配信サービス「テレビ東京ビジネスオンデマンド」と、90万人(2021年4月時点)の登録者を抱えていたYouTubeチャンネル「テレ東NEWS」が統合して2021年4月に生まれました。
テレビ東京ビジネスオンデマンドは2013年3月、テレ東NEWSは2019年4月に本格スタートしました。私はテレ東NEWSの立ち上げにも携わっていますが、ほんの4、5人のチームでの走り出しでした。
──テレ東BIZ(旧 テレ東NEWS)のYouTubeチャンネル登録者数は、今や100万人を超えていますね。立ち上げの契機は何だったのでしょうか。
立花氏:実はチャンネル自体は、もともとかなりプロダクトアウトです。番組で使われなかった素材をなんとか活用できないかという視点で始まりました。
実際、私はネット配信を担当する前、『ガイアの夜明け』のディレクターを担当していたのですが、60分番組の取材で、30分のテープを100本くらい回していました。その素材が非常にもったいない、という思いがありました。
それから2年で少しずつ変遷があり、今は「経済」という軸を定めてコンテンツを配信しています。ただ最初のころは本当に「プロダクトアウト」型で、現場のディレクターがやりたいことを試す場でもありました。
テレビではどうしても、時間的な制約や「型」が存在するわけです。『ガイアの夜明け』を例にすると、何か課題があり、それをどう克服するか──。そうした既存の型にはうまくはまらないものや、異なる表現を試す場が、テレ東NEWSだったのです。
──実際、その試みの結果はどうでしたか?
立花氏:コンテンツに関して言えば、解説もののテーマや表現方法の幅が非常に広がりました。たとえば、ある本を解説するにしても、それが40分を超えるような尺では、なかなかテレビでは放送できません。しかし、Webではそうした尺のしばりがありません。実際、2020年の視聴数上位には、30分を超えるアメリカのトランプ前大統領に関する暴露本の解説も入ってきました。
またWebでの試みが地上波で採用されたケースがあります。新型コロナによって都市封鎖となったロンドンの街を記者が歩きながらじっくり解説したのですが、世界中で移動が制限されている中で、多くの反響がありました。それを見た地上波のディレクターがテレ東の各海外支局員に依頼して同様の手法を駆使して地上波での放送につなげました。
チャレンジを続けてつかんできた、経済動画へのニーズ
──テレ東NEWSでは30分以上の解説も人気というお話がありました。直感的には、YouTubeで30分以上の長尺の動画はあまり見られなさそうです。立花氏:はい、私もそう思っていました。だからこそ、これだけYouTubeでも長尺の動画が再生されるというのは驚きでした。
良いか悪いかはいったん置いておいて、コンテンツ作りに関してはマーケットインという考え方がそれほど強いわけではないです。「この題材なら、このくらいの尺は必要だろう」「このくらい説明しないと腹落ちしない」と突き詰めていったら、結果的に尺が長くなったというのが正直なところです。
逆に、非常に短い尺で発信しているものもあります。たとえば、「2分で見るガイアの夜明け」などもその1つです。今は、いろいろな長さの尺を試しながら、視聴数を分析している段階です。
──ユーザーのニーズという点で、テレ東BIZの人気コンテンツはどのようなものがありますか?
立花氏:テレ東BIZは、オンデマンド配信とYouTubeチャンネルが統合したという背景から、YouTubeとテレ東プラットフォーム(Webページおよびアプリ)という2つのチャネルがあります。出しているコンテンツはほぼ同じですが、月額課金制のテレ東プラットフォームでは、テレ東の経済番組の見逃し配信を行っています。
YouTube、つまり旧テレ東NEWSでの人気コンテンツの1つは、「官邸キャップ篠原の政治解説」というコーナーです。テレビ東京政治部の篠原 裕明 記者が、たとえば菅総理に会見で質問してその後の解説をする動画を配信しています。この前の党首討論後にも篠原記者をスタジオに置き、立憲民主党の枝野 幸男 代表や国民民主党の玉木 雄一郎 代表に出演してもらい、討論の手ごたえを伺いました。2時間超の党首討論動画をテレビでそのまま流すのは難しいですが、ネット配信ではそれも実現可能です。
ほかにも、『Newsモーニングサテライト』豊島 晋作 解説メインキャスターの「豊島晋作の “人に話したくなる” 国際ニュース」など、テレ東記者や日経新聞の編集委員がパーソナリティを務める連載動画も人気です。
一方、公式プラットフォームでは、圧倒的に地上波放送の見逃し配信が人気です。そもそも有料会員自体が、『WBS』『ガイアの夜明け』『カンブリア宮殿』などを目的に契約する方が多数派だと見ています。
──ビジネスや経済に関する動画コンテンツに対して、ユーザーはいま何を求めているのでしょうか。
立花氏:テレ東BIZのYouTubeでの人気コンテンツに含まれるような、深い解説が求められていると見ています。2010年代にスマホが爆発的に普及し、「5W1H」を伝えるストレートニュースは、ある程度スマホで簡単に摂取できるようになりました。つまり、単純なニュースは「ググればわかる」時代なのです。
そこから「もう少し詳しく知りたい」という、知的好奇心を満たすようなものが、経済系のコンテンツには求められていると思います。
【次ページ】なぜ「テレ東でしか作れないコンテンツ」が生まれるのか
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