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ツイッターが2017年10~12月期に、2013年の上場以来、純利益9,100万ドル(約99億円)となる初の黒字を計上した。これに反応して株価は上がったが、一部のアナリストは「儲けの出る体質への改良が必要」と指摘する。また、ほかのIT大手による買収説も絶えない。「迷走」と揶揄されるツイッターがいかにして真の復活を遂げるか、有望とされる動画広告収入を軸に探る。
ツイッターの回復は一時的か
上場以前から赤字を垂れ流してきたツイッターが初の黒字化を達成したニュースは好感を持って受け止められた。発表のあった2018年2月8日の株価は一時、前日比30%高の35ドルを付け、2018年3月現在も30ドル以上のレベルを維持している。
カナダの金融大手BMOキャピタルマーケッツのアナリスト、ダニエル・サルモン氏はこれを評して、「動画広告収入の増大と人工知能(AI)によるフィードの適正化により、ツイッターは着実な回復途上にある」と
評価した。サルモン氏はさらに、「ツイッターが経費を抑制し続けることができれば、回復は確かなものになる可能性がある」と期待を寄せている。
だが、この黒字化は販促費や研究開発費などの経費を前年比28%削減したことで達成された面が大きい。事実、売上自体は前年比2%しか伸びていない。
米金融大手ジェフリーズのアナリスト、ブレント・シル氏は、「コスト削減はすでに限界に達しており、2018年には利幅を改善することが、より難しくなる」と
見る 。同氏は、「売上のさらなる伸びと広告収入の増大がなければ、さらなる収益改善が望めない」とする。
この「広告収入の増大の難しさ」こそが、ツイッターの収益改善を阻む構造的かつ根源的な問題であるのだが、なぜ解決が困難なのであろうか。
ツイッターの広告収入が伸びない、3つの理由
第1に、最大文字数が140字から280字という短文投稿のSNS形態そのものが、ユーザーの滞在時間を制限し、それが広告主の出稿意欲を下げている。ネット広告においては、滞在時間を増やすほど広告を見てもらえる機会が増えるためだ。
メディア測定調査企業のコムスコアによれば、ツイッターの平均的なユーザーの1日あたりの滞在時間はわずか
1分に過ぎない。これに対し、SNSとしての性格は大きく異なるものの、よく比較対象になるスナップチャットのユーザー(25歳未満)の1日あたりの平均滞在時間は40分を超える。
そのため、スナップチャットを運営するスナップの2018年の米国内における広告収入は11億8,000万ドルに上り、ツイッターの広告収入を2,000万ドル上回ると、米ネット調査企業のeMarketerは
予測する。
第2に、ツイッターの全世界におけるユーザー数の2017年10~12月期の前年比の伸びは4%を達成したものの、7~9月期と比較すれば横ばいであり、「飽和状態」にある。米国内のユーザー数だけで見れば、7~9月期の6,900万人から10~12月期の6,800万人へと減少しているのも、広告主にとっては懸念材料だ。
これには、ボットや悪質なユーザーの追い出しによるコンテンツの「質の向上」、アップルiOSのサファリブラウザー上で、ツイッターを使ったサードパーティーアプリのユーザー認証によるサインインができなくなったことが響いているとされる。だが、同じように「質の向上」でユーザーの滞在時間が減ったフェイスブックでは、逆に広告収入が増えている。
第3に、ネット広告がグーグルとフェイスブックという大手2社の複占状態であるため、広告主はツイッターを敬遠して、広告の投資利益率(ROI)が高いグーグルとフェイスブックに出稿することを望む。フェイスブックがニュースフィードの質の向上のため広告枠を減らしても、あふれた広告の大半はツイッターに流れず、限られたフェイスブックの枠を取り合っている。
そのため、フェイスブックの広告料金が2017年10~12月期に前年比で43%上昇する一方、ツイッターの広告料金は下がっている。また、eMarketerは2018年に世界のデジタル広告市場における出費で、ツイッターのシェアが前年比0.8%落ち込むと
予想している。まさに、「富める者はさらに富み、貧しき者はさらに貧しくなる」構図である。
米調査企業のピボタル・リサーチのアナリスト、ブライアン・ウィーザー氏は、「ツイッターが(短文投稿がメインコンテンツである)ニッチの殻からすぐに抜け出すことはない」と
分析する。ツイッターが、広告が殺到する「なんでも屋」グーグルやフェイスブックと互角に戦うには、戦略の変更が必要なのだ。
【次ページ】SNSにおける生き残りは動画広告にあり、ツイッターの致命的な弱点は?
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