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2016年6月3日、都内にあるFacebook Japan本社において「Facebookにおけるメジャーメントについて」と題されたプレス向け発表会が開催された。米国Facebookで広告の効果測定について研究を行うマーケティングサイエンスチームのフレッド・リーチ氏やFacebook Japanにおける同チームの責任者である大志摩 丈嗣氏らが登壇し、Facebookがどのようにして広告の効果測定を行っているのか、Facebook広告の効果を最大化させる方法、そして他メディアとの使い分けのヒントなどが語られた。
広告主に成長してもらうためのマーケティングサイエンス
今回開催されたプレス向けラウンドテーブルの主題は、Facebookが自社広告の効果を測定し、それを最大化するためにどのような研究を行っているかということ。その研究を担っているのがマーケティングサイエンスチームで、フレッド・リーチ氏は同チームの研究開発部門責任者を務めている。
「研究者やアナリストがグローバルな組織の中で、マーケティングの課題とその解決策を模索しています。どのようなキャンペーンが有効なのか、将来マーケティングはどのような姿になっていくのかを研究しています。目的は、広告主にビジネスの価値を本当の意味で理解してもらい、ビジネスを拡大してもらうこと。広告主のみなさんの成長が、Facebookの成長でもあるからです」(リーチ氏)
コアとなる取り組みは3つあるという。ひとつはユーザーのインサイト、つまりどのように考え、どのように行動するかを捉えること。もうひとつは、Facebookとその広告がもたらす効果を測定すること。言うまでもなく、これが研究の中心テーマでもある。そして最後のひとつが、新しい効果測定手法の開発だ。移りゆく時代に即した効果測定の手法はどのようにあるべきか、その研究と開発を続けているのだという。
効果測定に関しては、“3つのR”にフォーカスして研究している。
Reach(リーチ)
どの程度の人数にリーチしたのか、リーチした人たちは本当に目指したターゲットだっったのかどうか。
Resonance(反響)
どのように広告が見られたのか、広告を見たユーザーの考え方や意向を変えることができたのかどうか。
Reaction(行動)
広告を見て購入、購買に至ったのかどうか。
研究の対象となっているのは、Facebookに掲載されている広告だけではない。広告効果の研究に関してはニールセンなどとパートナーシップを組んで取り組んでいるという。
2018年末までには1人が3つ以上のデバイスを持ち歩くようになると言われている現在、モバイルだからこそ生まれる効果も見逃せない。米国では65%の人が買物中にモバイルデバイスを見ていると言われ、環太平洋地域ではTVを見ながらモバイルデバイスを使う人が50%にのぼるという。Facebookはモバイルと相性がよく、こうした「ながら利用」や「すき間時間」の利用が多い。
「世界中で16億5千万人、日本だけでも2500万人が毎月Facebookを使っています。そのうち96%がモバイルからのアクセスです。インスタグラムも世界で4億人、日本では1200万人に使われていますが、こちらは100%モバイルです。世界中で使われている79億のデバイスが新しいムーブメントを生み、マーケターにも新たな手法をもたらしています」(リーチ氏)
モバイルは広告掲載や購買行動に大きな変革をもたらしている。大きなポイントは、広告に触れてから購買にいたる道のりがリニアではなくなっている点にあるという。
「たとえばモバイルで、ある製品の広告に触れ、その製品に興味を抱き、最終的にデスクトップPCからショッピングサイトにアクセスして購入する。そのような事態が多くなっており、旧来のcookieを使ったデバイスごとのトラッキングでは広告効果を測定するのに十分とは言えなくなっています」(リーチ氏)
リーチ氏らはcookieだけに頼った場合の測定で、どの程度の誤差が出るのか実際に調査を行ったという。その結果リーチについては58%も過大な数字となり、1人に表示した回数は35%も少なく数えられていた。実際にはcookieでトラッキングできる数字ほど広くはリーチしておらず、同じユーザに何度も表示していたのだ。一方で、66%のコンバージョンをトラッキングできずに見失っていた。こうした誤差を修正し、広告の正しい効果を知るためのアプローチが、人ベースでの分析という訳だ。
Facebook広告の本当の効果を知るための手法を研究
リーチ氏に続いて登壇したのは、Facebook Japanで同様の研究に取り組む大志摩 丈嗣氏だ。
現在のオンライン広告ではどれだけ多くの人にメッセージを届けられるかという数だけではなく、質も課題になっている。その質を向上させるためには、人々の行動や考え方を理解していかなければならないと、大志摩氏は言う。
そのために、特定の属性の人の行動を調査したり、Facebookユーザーと他メディアのユーザーとの違いを探ったりしているとのこと。
「こうした研究の結果、Facebook広告では高いターゲティング精度を実現しています。実際に7つの広告で効果測定を行ったところ、Facebookでのターゲット含有率は95%、他サイトでは62%以下という結果でした」(大志摩氏)
リーチした数やそこに含まれるターゲットユーザーの数も重要だが、最終的に広告主が知りたいのは「広告を見て態度が変わったかどうか」という点に尽きる。この課題に対してFacebookは、デバイスではなく人を中心としたリフト調査を行うことで、純粋な広告効果を計ろうと取り組んでいる。
「ある人が広告を見てコーヒーを買ったとします。その人が広告を見たからそのコーヒーを買ったのであれば、それは広告の効果と言えます。しかし、初めからその銘柄のコーヒーを買うつもりだったのであれば、広告を表示した効果はなかったと考えるべきです。純粋な広告効果を測定しようと思ったら、ユーザーの意向が本当に変化したのかどうかまで探る必要があるのです」(大志摩氏)
それを知るためにFacebookは次のような調査も行っているという。たとえば、広告を掲出する際、まずターゲットとなるユーザーをランダムに2つのグループに分け、一方のグループにのみ広告を表示する。広告を表示したグループで商品を買った人の数から、広告を表示しなくても商品を買った人の数を引くことで、純粋な広告効果を探ろうという試みだ。こうすれば、他メディアに広告を掲載している場合であっても、「Facebook広告を見たから商品を買った人」だけを数えることができる。
広告効果という話題で大志摩氏は、静止画広告と動画広告の効果の違いにも触れた。動画広告は制作の手間はかかるものの、その認知度は静止画広告の2倍におよぶという。大志摩氏は実際に効果が高かったクリエイティブをいくつか示した上で、特に高い効果を上げるためのポイントを次のように語った。
「モバイルで見られることが多く、音を出さずに再生されることが多いという視聴条件を考え、字幕を添えるなど音を出していなくても内容を理解できるよう作り込まれたものが、高い効果を上げています」(大志摩氏)
マーケティングリサーチ会社とともにクロスメディア効果測定も実施
Facebookが取り組んでいるのは、自社広告の効果測定手法の開発だけではない。2014年からは大型キャンペーンにおけるクロスメディア調査にも取り組んでいるという。そのパートナーとして選ばれたのが、カンタージャパンだ。カンターグループはマーケティングリサーチサービスをグローバルに展開しており、世界トップ100ブランドの90%以上をサポートしている。
「カンタージャパンはFacebook Japanとともに、さまざまな商品カテゴリ、ターゲット層を対象にブランド認知への成熟度を調査しました。実施したのは、Facebook単体ではなくメディアを横断した効果測定です」(カンタージャパン デジタルソリューション ディレクター 関井 利光氏)
メディアを横断して効果測定を行ったのは、メディアごとにターゲットユーザーへのリーチやコンバージョンを測定することで、広告投資の効率化に役立つ情報を引き出すのが目的だ。その結果浮かび上がったのは、テレビ広告への投資の偏りだった。
【次ページ】オンラインから実店舗で買ったユーザーをトラッキングする試みも
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