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2017年1年間に国内で生まれた日本人の赤ちゃんが推計94万1,000人で、2年続けて100万人の大台を下回ったことが、厚生労働省の調べで分かった。しかも、団塊ジュニア世代の女性が出産適齢期を過ぎ、20~30代の女性が減っているため、出生数の減少に拍車がかかっている。安倍晋三首相は少子化を国難と位置付けたが、過疎地域では1年以上にわたって1人の赤ちゃんも生まれない地方自治体が出るなど、加速する少子化が地方消滅の引き金になりつつある。中央大文学部の山田昌弘教授(家族社会学)は「30年も前から指摘されていた少子化問題に抜本的な対策を講じなかったツケが表れた」と指摘する。
2017年の推定出生数は過去最少を更新
厚労省によると、2017年1年間の国内出生数は94万1,000人と推計され、前年を3万6,000人下回った。統計の残る1899年以降、最も少ない数字で、死亡数が134万4,000人に上ることから、出生数が死亡数を下回る自然減は初めて40万人を突破する見通し。
自然減は実に11年連続。40万人という数は神奈川県横須賀市や大阪府枚方市、香川県高松市など中核市の人口に該当する。自然減は前年に比べて約7万2,000人増えており、人口減少ペースが加速している。
日本人の出生数は戦後のベビーブームで団塊の世代が生まれた1949年に最多の269万6,638人を記録した。1953年から100万人台に落ちたものの、団塊の世代の子どもに当たる団塊ジュニア世代が生まれた1970年代前半に200万人台を回復した。しかし、その後は減少の一途で、2016年に初めて100万人の大台を割っている。
厚労省が日本を含む先進7カ国の人口1,000人当たりの出生率を比較したところ、2017年の日本が7.5で最も低かった。2015年の米国は12.4、英国は12.0、フランスは11.8と大きな差がついている。
政府は国民の結婚や出産の希望が実現すれば、合計特殊出生率(1人の女性が一生に産む子どもの数)が1.8まで回復するとしている。しかし、出産適齢の女性が急激に減少している中、合計特殊出生率が多少上がっても、出生数は減り続ける。
合計特殊出生率が過去最低の1.26だった2005年の出生数は106万2,530人。これに対し、1.44の2016年は97万6,978人でしかない。2017年に40歳になった女性は85万1,720人いるが、25歳の女性は58万6,853人。出産適齢の女性減少が出生数の減少を加速させているわけだ。
厚労省人口動態・保健社会統計室は「合計特殊出生率は横ばいで推移しており、少子化が加速しているとはいいにくい」と悠長に語るが、2017年で2歳の女児は49万225人。よほどのベビーブームでも起きない限り、出生数の回復は望めそうもない。
にぎわい失い「このままでは町が消滅」
出生数の減少は人口減少が進む過疎地域の自治体により深刻な打撃を与えている。その1つが鎌倉時代末に後醍醐天皇が鎌倉幕府打倒を掲げて挙兵した笠置山のふもとにある京都府笠置町だ。町は人口約1,400人、2013年11月から2015年4月まで1年半にわたり、出生数ゼロが続いた。
JR笠置駅前には約40の店舗が連なり、商店街を構成しているが、半数以上がシャッターを下ろしている。買い物をしている人はまばらで、高齢者が大半。駅前ににぎわいや活気は感じられない。
町の出生数は2016年2人、2017年1人と辛うじてゼロを免れているものの、子どもの数が激減している。町内唯一の笠置小学校児童は27人。10年前に80人以上いたのに比べ、3分の1になった。人口もピーク時の1947年に比べ、4割に減少している。
「このままでは町が消滅する」。危機感を抱いた町は2016年、国の地方創生加速化交付金を活用してまちづくり会社を設立した。JR西日本から委託を受ける笠置駅構内に若者向けの店舗を誘致し、定住促進に力を入れ始めたが、まだ成果は見えない。
町企画観光課は「これが最後のチャンスと考え、住民の力を結集してまちづくり会社をスタートさせた。子どもの生まれない町に活気は出ない。何とかして地域を立て直したい」と意気込むが、町を取り巻く環境は厳しさを増すばかりだ。
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