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  • 2017/12/02 掲載

ついに脱・返礼品か? ふるさと納税で犬、ネコ殺処分ゼロへ

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ふるさと納税の寄付金を活用して収容した犬やネコの殺処分ゼロを目指す地方自治体が徐々に広がってきた。名古屋市や兵庫県尼崎市は犬の殺処分ゼロを達成したほか、徳島県は災害救助犬やセラピードッグの育成で殺処分数を減らそうとしている。いずれも使用目的をはっきり示し、豪華な返礼品を用意していない。ふるさと納税は返礼品競争の過熱がしばしば問題になってきただけに、近畿大短期大学部の鈴木善充准教授(財政学)は「寄付金税制という観点からすると望ましい方向」とみている。
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徳島県神山町の県動物愛護管理センターに収容された犬たち。殺処分ゼロに向けて全国の自治体でふるさと納税の活用が広がりつつある
(写真:筆者撮影)


名古屋市はふるさと納税で犬の殺処分ゼロを達成

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 名古屋市のホームページには、ふるさと納税で寄付した人の名前が並ぶコーナーがある。「目指せ殺処分ゼロ!」を掲げた寄付金のページだ。賛同してくれた人へ感謝を込めて名前を記載している。

 寄付金は千種区の名古屋市動物愛護センターに収容された犬やネコのえさ、薬代、譲渡ボランティアへの支援物資に充てられるが、目を引く返礼品は用意されていない。返礼品と呼べるものは1万円以上の寄付に対して贈られる動物愛護バッジぐらいだ。

 ふるさと納税を活用した寄付金の募集は2016年度、犬を対象に始めた。犬の殺処分件数が2013年度から83頭、59頭、23頭と毎年、減少していたことから、もう少しでゼロを達成できると考えたわけだが、予想以上の反響があった。

市内外の約400人から寄せられた寄付金は1,100万円ほど。収容した221頭のうち、6割が飼い主のもとへ帰り、残りは新しい飼い主の家族となった。その結果、事業初年度で犬の殺処分ゼロを達成した。

 2017年度からはネコにも対象を広げている。2016年度の殺処分数は400頭足らず。名古屋市動物愛護センターは「ネコは収容数が犬の5倍で、目標達成に時間がかかりそうだが、努力を続けたい」と意気込んでいる。

尼崎市は2012年度からふるさと納税で犬の殺処分ゼロに取り組む

 犬の殺処分ゼロを実現したもう1つの自治体が兵庫県尼崎市だ。2013年度から4年間を見ると、2014年度以外は収容中の病死を除いて殺処分していない。

 事業は名古屋市より早く2012年度のスタート。寄付金は2016年度で全国から188件、660万円以上が寄せられた。野良ネコの不妊手術費助成や収容ゲージの購入、啓発活動などに活用している。

 豪華な返礼品はない。寄付した人が希望すれば市報に名前が掲載される程度。寄付金の使い道を明示している点も名古屋市と変わらない。

 ネコは犬と異なり、収容数が多い。このため、殺処分数は2006年度の735頭から2016年度は200頭ほどまで減ったものの、ゼロに近づけるにはもうひと押しもふた押しも必要だ。

 尼崎市動物愛護センターは「ネコの殺処分をなくすには、市民の協力に加えて費用が必要。ふるさと納税の支援はありがたい」と目を細めた。

全国の殺処分数は2016年度で5万6,000頭

 ペットフードメーカーの業界団体・ペットフード協会によると、2016年に全国にいるペットの犬やネコは約1,973万頭と推計されている。内訳は犬が988万頭、ネコが985万頭。15歳未満の人間の子どもは2017年4月現在、全国で1,571万人だから、子どもを上回る数の犬やネコがいる計算だ。

 環境省によると、2016年度1年間に自治体に引き取られた数は、犬4万1,000頭、ネコ7万3,000頭の計11万4,000頭。引き取り数は1974年度で125万頭に達していたが、年々減少して当時の1割以下まで下がった。

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全国の犬、猫の引取り数の推移
(出典:環境省「犬、ネコの引き取り数及び負傷動物の収容状況」


 飼い主に返還するか、新しい飼い主に譲渡されたのは、犬3万頭、ネコ2万7,000頭の計5万7,000頭。引き取り数のうち、返還・譲渡された犬やネコの割合は、1979年度の1.6%が、50.4%に上昇している。

 環境省は2013年から国を挙げて殺処分ゼロを目指す「人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクト」を始めた。国民の間でも殺処分に対する厳しい目が向けられるようになった。これらが引き取り数の減少に影響したとみられる。

 しかし、収容中の病死などを含めて年間5万6,000頭の犬やネコが殺処分されている。環境省動物愛護管理室は「引き取り数の減少と返還・譲渡の推進を進める必要がある」としているが、国全体で殺処分ゼロを実現するには時間がかかりそうだ。

【次ページ】ふるさと納税は原点回帰するのか?
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