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- 2020/04/20 掲載
JR四国「最大の危機」、人口減少にコロナショック…窮地を脱するには?
2019年度の運輸収入は10億円程度の減収
4月中旬、徳島県徳島市のJR徳島駅を発車した牟岐線のワンマン列車。昼前の便とあって乗客は10人ほど。4人掛けの座席にお年寄りが1人ずつ座り、空気を運んでいるような状態だ。乗客の女性(84)は「最近はいつもガラガラ。座れない日はない」と笑っていた。途中駅でわずかな乗降客があったものの、終点となる徳島県阿南市の阿南駅に着くまで車内の閑散とした状態が続いた。もともと混雑することが少ない路線だが、コロナショックの影響が色濃く表れてきた。
JR四国によると、3月の運輸収入は15日現在で前年同月比58%減と大きく落ち込んだ。訪日外国人観光客向けのフリーパスは91%減とほぼ壊滅状態。唯一の黒字路線である瀬戸大橋線の乗客も45%減っている。
主要駅の乗降客は高知県高知市の高知駅が59%減、香川県高松市の高松駅が51%減、愛媛県松山市の松山駅が47%減。JR四国は一部の列車を運休するとともに、トロッコ列車や観光列車の運行を取りやめているが、2019年度の運輸収入は10億円程度の減収になるという。
首都圏や京阪神で感染が拡大する現状を考えると、コロナショックの収束時期を見通せない。高松市で記者会見したJR四国の半井真司社長は「会社発足以来、最大の危機的状況。列車を切っていかないと、本質的なコスト削減は難しい」と廃線や減便を検討せざるを得ないことを示唆した。
四国の乗合バスを下回る営業係数
JR四国の経営は新型コロナの感染拡大前から危機に陥っていた。運賃収入は瀬戸大橋が開通した1988年度に349億円あったが、2018年度は225億円に落ち込んだ。運んだ旅客数に乗車した距離を乗じ、実質的な輸送量を表す輸送人キロは、1988年度の21億人キロが2018年度に14億人キロまで低下している。2013~17年度の線区別収支を見ると、全18線区のうち黒字は瀬戸大橋線だけ。100円の収入を得るために必要な経費を示し、数字が大きくなるほど経営状態が悪いことを意味する営業係数は、JR四国全体で144。四国内で運行する乗合バス12業者の2015年度平均営業係数116より悪かった。
最も赤字が大きいのは、予土線・北宇和島-若井駅間の営業係数1159。牟岐線・阿南-海部駅間が635で続く。黒字の瀬戸大橋線は瀬戸大橋開通から30年以上が過ぎ、設備維持や更新の費用が今後増える見込み。JR四国は「赤字に転落する可能性がある」とみている。
四国には政令指定都市がない。しかも、総務省の人口推計によると、4県の人口は2018年10月時点で375万6000人と、1985年の423万人をピークに減少を続けている。国立社会保障・人口問題研究所が2018年にまとめた推計では、2045年の人口は282万3000人。2015年に比べ、26%に当たる102万3000人減少するとされている。
高知県大豊町は70%前後、愛媛県久万高原町は60%強の人口減が見込まれている。市町村別で人口増加が予測されているのは、徳島市のベッドタウンである徳島県北島町だけという厳しい状態だ。
【次ページ】国交省が経営改善求める文書を交付、コロナショックが追い打ち
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