0
会員になると、いいね!でマイページに保存できます。
新型コロナウイルスの感染拡大による航空路線の相次ぐ運休で、静岡県の静岡空港など1日に1便も発着しない空港が出てきた。国際線の運休が中国、韓国など東アジア路線から世界に広がる一方、政府の緊急事態宣言全国拡大を受けて国内線も急速に縮小しているからだ。運休や減便によって空港側の損失が膨らんでいるが、事態が長期化すれば民営空港が赤字を支えられるかどうか不透明な状況。島根県立大総合政策学部の西藤真一准教授(交通政策論)は「少なくとも地方自治体や空港会社が描いてきた成長戦略は大きな見直しを迫られそうだ」とみている。
関西空港の運航本数は前年のざっと3分の1
広い館内に人影がほとんど見えない。大半のチェックインカウンターは路線の運休で照明が落ちている。関西空港第1ターミナルビル4階の国際線出発フロア。運航状況を知らせる電光掲示板には、欠航の文字が並ぶ。
新型コロナの感染拡大に伴って国際線、国内線とも運休や減便が東アジアから欧米路線に拡大し、運航本数は前年同期のざっと3分の1まで落ち込んだ。15日には国際線で搭乗客を乗せた便がゼロという事態も発生している。
3月の国際線、国内線を合わせた総旅客数は62万人。前年同月比79%減で、1994年の開業以来、過去最低となった。国際線旅客数は89%減の24万人、うち外国人旅客数は93%減の9万人。過去最大の減少幅を記録している。
12日から18日までの1週間で国際線37便、国内線156便が運休しており、4月の総旅客数はさらに落ち込む見通し。空港内の飲食店や土産物店もざっと半分が営業自粛中で、閑散とした雰囲気に包まれている。空港を管理運営する関西エアポートは「開業以来最大の危機だが、新型コロナの終息を待つ以外にどうしようもない」と表情を曇らせた。
静岡、茨城の両空港は運航ゼロに
運航本数が少ない地方空港には、より深刻な影響が表面化してきた。1日に1便も発着しない空港が出てきたことだ。静岡空港は3月までに中国、韓国、台湾の国際線が運休したが、フジドリームエアラインズ(FDA)が全便運休に入ることで28日から運航ゼロになった。
静岡空港は2018年度に目標の70万人を上回る71万人の旅客を集めていた。訪日外国人観光客の需要を集めた国際線の拡大が功を奏した形で、2023年度の旅客101万人を新目標に路線拡大を進めようとしていた矢先に新型コロナが直撃した。
管理運営に当たる富士山静岡空港会社は、売上高の半分を占める直営免税店の収益が消え、経営に大打撃を受けている。静岡県空港振興課は「今は新型コロナの感染拡大防止が第一。早期終息を願うしかない」と渋い口調だ。
航空自衛隊百里基地との共用空港である茨城県の茨城空港は、国際線がすでに全便運休しているほか、スカイマークの沖縄線、福岡線が運休期間を延長、札幌線が5月1日、神戸線が2日から運休に入るため、2日から運航ゼロとなる。ターミナルビルもスカイマークの払戻窓口を除いて休館する。
茨城空港は10年前の開港当時、国内線の定期便がなく、「税金の無駄遣い」「飛ばない空港」などと批判されたが、スカイマークの誘致で苦境をはね返し、2019年に82万人以上の旅客を集めた。首都圏第3空港としての地位を固めつつある時期だったわけだ。
全便が運休となるのは5月10日までの予定だが、政府の緊急事態宣言が延長されれば、さらに延びる可能性もある。茨城県空港対策課は「利用が伸びていただけに非常に残念。今後の対応は連休中の状況を見ながら検討したい」と述べた。
神戸市の神戸空港は4月、ざっと半分の便が運休したが、FDAが3月から運休中の出雲線に加え、青森、松本、高知の3線も28日から運休した。岡山市の岡山空港は3月までに国際線4路線がすべて運休したのに加え、国内線も札幌線が運休するなど路線縮小が続いている。香川県の高松空港は1日に東京羽田線2便程度の運航しかない。
【次ページ】航空会社、空港会社の経営に赤信号
関連タグ