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イーロン・マスク氏のスペース Xが、民間人2名を乗せた有人飛行を2018年に実施すると発表した。一方、インド宇宙研究機関(ISRO)は先月15日、104個の人工衛星を積んだロケットを打ち上げ、全ての衛星を軌道に乗せることに成功したと発表した。インドの宇宙開発は、米国・ロシア・日本・EU・中国に次ぐ世界6位のレベルに達しているが、厳格なコスト管理を重視する方向性が特徴だ。アジアでの事業者活動を支援するエクシール・エフ・エー・コンサルティングのインド人コンサルタント ガガン・パラシャーが、インドの宇宙開発動向を掘り下げる。
執筆:エクシール・エフ・エー・コンサルティング ガガン・パラシャー
(訳:エクシール・エフ・エー・コンサルティング 大塚賢二)
人工衛星104個を一気に打ち上げたインドの宇宙開発技術
ISROによると、これだけの数の人工衛星を放出したのは世界に前例がないとのことだ。これで1994年以来、インドは38回連続で極軌道打ち上げロケット(PSLV)の打ち上げに成功したことになる。これはインドの宇宙関係者にとって快挙だ。打ち上げプロジェクトの成功の積み重ねによって、インドの宇宙開発技術の高さを誇れる時代になった。ここ数年においても依然、世界中の人々がISROを賞賛しているのだ。
ISROは目覚ましい成功を収めており、宇宙開発技術の急速な発達は近年注目を浴びていた。たとえば、最も低コストの火星開発や国産の極低温エンジンといったものだ。この極低温エンジンは、人間や大型の衛星のような大量の搭載物を宇宙空間に運ぶ最初のステップである。
今回の取り組みで、信頼性とコスト効率の高い衛星打ち上げのオプションを示したとして、インドの技術は評判を高めている。ISROによれば、ロケットはインド東部のスリハリコタ宇宙センターから打ち上げられ、1年前にロシアが記録した37個を破る個数の衛星を軌道に乗せることができた。衛星のほとんどは重さ10キロに満たない小型衛星であるが、714キロの重量を持つ地球観測用衛星も1基含まれている。
小型衛星の多くは米国のものだが、オランダ、カザフスタン、イスラエル、スイス、UAEのものもある。打ち上げの様子はインドの公共放送で中継され、指令室で高く打ち上がったロケットを見て喜ぶ科学者たちの様子が放映された。インドのナレンドラ・モディ首相は「この偉業はわれわれの宇宙科学分野、そして国にとってさらに誇り高き瞬間だ」とツイートした。
費用対効果で独走するインド、イーロン・マスクに勝てるのか
ここで注目したいのは、ISROの取り組みの採算性だ。昨年7月に議会で公表された政府データによれば、ISROの商業部門であるAntrix社の2016年3月期の売上は、23億ルピー(約39億円)であるが、これは全世界の市場の0.6%に過ぎない。
特にこの数年にわたっては、ISROは商業活動に精力的に力を入れてきた。1993年から2006年の14年間で9件だったロケット打ち上げが、いまや昨年1年だけで6件を数えるほどになっている。政府や民間の宇宙開発業者は、ロケット打ち上げ件数を年平均で20程度にしたいという野心的な目標を掲げている。
インドの宇宙開発プログラムは低予算で運営されることが多い。ISROは、宇宙開発プログラムのコスト管理に大きな責任を負っている。2014年にインドの探査機が火星の周回軌道に到達したが、このミッションのコストは、わずか7,400万ドル(約83億円)だった。これに対し、米国NASAは、数か月後の火星ミッションに6億7,000万ドル(約751億円)も投じたのだ。経済効率が良いプログラムと高度なハイテクが、技術面で両立したとして、インドの功績がもてはやされた。
【次ページ】インドの小型衛星とイーロン・マスクの小型衛星、高いのは?
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