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地方自治体が住民向けに発行する住民参加型市場公募地方債(ミニ公募債)の発行休止が相次いでいる。日銀が打ち出したマイナス金利の影響で市場金利が低下し、住民にとって魅力的な金利を設定できなくなったからだ。2016年度は兵庫県神戸市(こうべ市民債)や千葉県千葉市(ちば市民債)が発行を休止、発行総額はピーク時の3割以下に落ち込む見込み。香川大経済学部の長山貴之准教授(財政学)は「いくら住民参加型といっても現状で適切な金利の設定は難しい」と指摘している。
住民参加の資金調達法として分権改革で登場
ミニ公募債は自治体が地域の住民や法人、団体を対象に販売する地方債。2001年からの財政投融資改革で地方債に投入される政府系資金が減少したのに伴い、資金調達の多様化を図るため地方分権改革の一環で創設された。
病院の建設や道路整備など資金を充てる事業を具体的に明示して起債されるケースが多く、複数の自治体が共同発行することもある。取扱金融機関の窓口で直接販売するか、はがきやインターネットで応募者を集め、応募多数の場合は抽選で購入者を決めている。
発行年限は3年から10年で、購入者に債権の長期保有を好まない高齢者が多いこともあり、5年が主流。利回りは大半が国債や全国型市場公募債の利率に上乗せ金利を加算して設定している。
地方債協会のまとめによると、第1号となったのは2001年度末に発行された群馬県の愛県債。当初は利回りが預貯金の金利より高いことなどから人気を集め、年ごとに発行する自治体が増えた。ピーク時の2006年度には全国124団体が3,513億円発行している。
当時は1%を上回る利率だったが、金利の低下で利率が下がるとともに、発行する団体数や発行額が減少。2015年度は52団体、発行額1,486億円まで落ち込んだ。
総務省のまとめでは、2016年度は4月1日現在で40を超す団体が1,000億円以上の発行を予定していた。4~5月には福島県、神奈川県海老名市、三重県熊野市などが、90億円余りを発行したが、相次ぐ休止で年度内の発行団体数、発行額はさらに減少する見通しだ。
マイナス金利で有利な利回りが困難に
兵庫県神戸市は阪神大震災後の道路改修や建物の耐震化に役立ってきた「こうべ市民債」の発行を休止した。購入額を10万円単位に設定、市民が買いやすいようにして、例年だと6月と12月に発行していた。2016年度も2回の発行で計20億円を調達する計画だった。
市債の格付けは「AA+」と国債と同等の高い信用力。ピーク時には年間44億円を調達した。しかし、発行額が徐々に減少し、2015年度は26億円にとどまった。金利も2002年度発行当初に0.3~0.5%、2009年度に1.01%をつけたが、2015年度は0.12%まで落ち込んでいる。
市にとって民間からの資金調達全体に占める市民債の割合は1~2%に過ぎない。それでも市民参加の意義が大きいとして発行を続けてきたが、マイナス金利になっていよいよ市民に買われる利回りを提示できなくなった。
神戸市財務課は「マイナス金利の現状ではどうしようもない。2017年度以降の発行については金利情勢を見ながら、あらためて検討する」と苦しい胸の内を打ち明けた。
千葉市は「ちば市民債」の発行を休止した。5年満期で、1口1万円から1万円単位で3,000万円まで購入できる。2003年度から年1回30~50億円を発行し、総額470億円に達する。調達した資金は公園や小中学校の整備に充ててきた。
2006年度には1.36%の金利をつけていたが、じりじりと低下を続けて2015年度は0.13%。2016年度は12月に30億円の発行を予定していた。
千葉市資金課は「市場金利の低下で魅力ある商品性を維持できなくなった。市民から資金を得てやりたい事業はいくつもあるのだが、現状ではやむを得ない」と対応に苦慮している口ぶりだ。
このほか、神奈川県横浜市は5年満期の「ハマ債ファイブ」、北海道札幌市は7月に予定していた「ライラック債」の発行を休止した。理由はともに住民が購入したい金利を設定できないためとしている。
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