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  • 2016/08/22 掲載

ハッカーの祭典で「サイバー攻撃のAI化」が注目された理由

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国際的なセキュリティカンファレンス「Black Hat USA」と「DEF CON」では、毎回新しい攻撃手法や最先端のサイバーセキュリティの攻防技術が発表される。2016年の目玉のひとつは、CTF(Capture the Flag)をすべてコンピュータによって自動化する「Cyber Grand Challenge(CGC)」だ。サーバーへの侵入や防御、セキュリティパッチの作成・適用までコンピュータが行うのだが、狙いは単なるAI技術の研究ではない。AIによる攻撃、サイバーセキュリティの無人化はどのような未来をもたらすのか。

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DEFCON 24の無人CTFが意味することは

セキュリティ技術を競うコンテストがAI化された?

 一般的なCTF(Capture the Flag)は、1チーム3名から4名で構成され、自チームのサーバーを守りながら、相手チームのサーバーに攻撃を仕掛け、侵入する技術を競うセキュリティコンテストだ。主催者の用意したサーバー(群)を解析(リバースエンジニアリング)、脆弱性を発見して侵入し、所定のデータを取り出す、または正解を導きだす時間や数を競うクイズ形式のCTFも存在する。

 各チームの選手は、プログラミング、システム解析、パケット解析、マルウェア、脆弱性といったハッキングスキルを動員し、主催者の用意したサイバー空間で攻防を繰り広げる。今回行われたCGCでは、これらの攻防をすべてコンピュータにまかせてしまおうというのだ。

 CGCプロジェクトは2013年にスタートした。ルール策定や予選など準備期間を経て、2016年8月4日DEFCON 24の会場でファイナリスト7チームによる本大会が開催された。

 このCGCを主催するのは、米国国防総省の内部部局のひとつ、DARPA(Defense Advanced Research Projects Agency:アメリカ国防高等研究計画局)だ。DARPAといえば、2005年にスタートした自動運転競技Grand Challengeや、日本のベンチャーチームであるシャフトが優勝したRobotics Challengeなども主催している。

 CGCでは、どのような作業がAI化されたのか。まず、相手サーバーの脆弱性探索、実際の攻撃・侵入。自サーバーへの攻撃検知、侵入検知、マルウェアや脅威の排除、脆弱性の発見、脆弱性改修のためのプログラム修正(セキュリティパッチ)などだ。

CGCが目指すものはAI研究? 無人サイバー戦争?

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 CTFとしては画期的な試みといえるが、無人化することにどのような意味や意義があるのだろうか。可視化画面の表示でしか攻防がわからないことから、競技性やイベント性を追求したものではない。

 参加者のセキュリティスキル、ハッキングスキルを高めるためだとしたら、その効果はある程度期待できる。しかし、確かにAI技術とサイバーセキュリティの接点は多いが、検知や防御を自動化する技術には有効だとしても、攻撃まで無人化する意味はあるだろうか。

 シグネチャ分析やIDS、サンドボックス製品にAI機能搭載をうたう製品は少なくない。今年に入ってからは、MIT、NEC、シスコなど、攻撃検知にAI技術を応用するソリューション、AI搭載の攻撃検知プラットフォームのリリースしている。このような製品開発にCGCが貢献する可能性はあるが、AIによる攻撃が一般化していない現状では、人間による攻撃対応を自動化する競技のほうがスキル向上が期待できるはずだ。

 エクスプロイトキットによるマルウェアの生成、ボットによる攻撃など自動化された攻撃は以前から行われているではないか、という意見もあるかもしれない。しかし、自動化されていたとしても攻撃意思の発現は人間であってAIが自発的に攻撃しているわけではない。今後、純粋なAIによる攻撃リスクが高まるとしたら、それは国レベルのサイバー戦争のような場面が考えられる。

 米国国防総省は古くから戦闘の無人化技術を研究しており、遠隔誘導ミサイルや巡航ミサイルから始まり、偵察および攻撃用ドローンを実戦配備している。現在は無人戦闘機や軍用車両の無人化の研究も進めている。DARPAはGPSを開発し、軍事転用を考えてインターネット(の原型:ARPA-net)を開発した。もともとDARPAは民間の高度研究を軍事転用するための機関だ。

  【次ページ】AI搭載のサイバー攻撃兵器が開発される?
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