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- 2016/08/19 掲載
「大企業を辞めたい」 キャリアを捨てるときに考えるべきこと
ライフネット生命 出口会長と島澤 諭氏が議論
日米の「大学生の就職人気企業ランキング」にみる違い
島澤:解雇を含めた労働の流動化が日本で上手くいかないのは、中途採用の市場が闊達でないからです。さらにいえば、「解雇」という言葉に抵抗があるのかもしれません。
そういえば、役所の1年生の頃、景気判断を行う部署にいたのですが、旧労働省から出向されていた上司に、景気判断の報告書に労働需給が云々とあるのを見て、烈火のごとく怒り出した大臣がいると伺ったことがあります。その理由は「需給とは何だ! 人を物扱いするな!」ということで、それはそれでうなづける気もするのですが、それと同じメンタリティーかもしれません。解雇という言葉には、どうしてもマイナスな印象は拭えませんからね。
まずは大企業が率先して労働の流動化をはかり、大企業であふれた人が中小企業や人手不足な業界に入れば、日本経済の循環はさらによくなるはずです。ところが日本人は大企業にとどまりたがるので、なかなか上手くいかない。
出口:それはいわゆる「大企業病」ですね。アメリカと日本の就職希望企業のランキング(図参照)を見ると、それがより顕著に出ていると思います。
アメリカのランキングを見ると、金融機関はひとつもランクインしておらず、国際機関(国際連合)が1つ、公務員(国務省、FBI、CIA)が3つ、NPO団体が3つ、民間企業(ウォルト・ディズニー、グーグル、アップル)が3つと実によくバランスがとれています。また、大企業ではないベンチャー企業に進む若者も多い。アメリカにはベンチャーマインドの文化が根付いているので、起業者に出資する人もたくさんいます。対GDP比で見たベンチャーキャピタル投資額(OECD調べ)を見ると、アメリカはイスラエルに次いで第2位となっています。
一方、日本のランキングは大銀行と大保険会社が上位を占めており、ほかにも大商社や大メーカー、大インフラ企業など、誰もが知っている大手企業に人気が集中しています。
島澤:雑誌などで「大学生の就職人気企業ランキング」が発表されますが、こういうものに影響を受けすぎていますね。
高度成長期からバブル期にかけては、「誰もが知っている名の知れた大企業に入り、終身雇用・年功序列で安定した収入を得て、定年後はローンを払い終えた一戸建て住宅で悠々自適の老後を過ごす」という成功モデルがありました。しかし、このモデルはすでに過去のものであり、幻想でしかありません。
【次ページ】キャリアを捨てる、大企業を辞めるという勇気
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