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  • 2016/05/10 掲載

オキュラスリフトはVR市場で勝てるか?ビジネスモデルとソニー、MSら競合との戦略比較

ビジネスモデル解説:VRヘッドセット

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VRヘッドセット「Oculus Rift(オキュラスリフト)」の本格展開が開始され、3D映像の中に自分が入り込んだかのように錯覚するVR(仮想現実)の体験が、消費者の手に届くようになりました。VRヘッドセットは、迫力あるゲームはもちろん、製造現場での設計支援をはじめとしたビジネスシーンでの活用も期待されています。20億ドルもの多額の資金を投じてオキュラス社を買収したFacebook(フェイスブック)は、VR市場の主要プレーヤーとして、ゲームやアプリを開発するパートナー企業とユーザーをつなぐプラットフォームの開発に注力しています。果たしてVR市場の勝者は誰なのか。オキュラスリフトのビジネスモデルや、ソニーの「Playstation VR」、マイクロソフトの「Hololens」、HTCの「HTC Vive」といった競合企業のVR戦略を紹介します。
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フェイスブック、ソニー、マイクロソフトなど主要プレーヤーのVRプラットフォーム戦略とは

そもそもVRはどうやって儲けるのか?

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フェイスブック(オキュラス社)の「Oculus Rift(オキュラスリフト)」
 2016年3月28日、オキュラスリフト製品版の出荷が開始され、仮想現実(VR)用ヘッドセットが手ごろな値段で消費者に届く時代が到来しました。視野を全て覆いつくせる大型のゴーグルのような形状をした製品は、頭の動きに合わせて空間が動く双方向性により、あたかもCGの世界に入り込んだかのような没入型の体験を味わえます。

 オキュラスリフトを開発したオキュラス社は、2014年にフェイスブックに買収されましたが、本格展開前にもかかわらず20億ドルもの評価額がつき、大きな話題になりました。フェイスブックCEO マーク・ザッカーバーグ氏はVR市場に情熱を傾けており、人々が自分の体験をシェアする「次世代のプラットフォーム」にすると意気込んでいます。テキストから写真、写真から動画とメディアが変わっている中で、同氏は360度のCG映像をVRで再生する世界を実現させようとしています。

 そんなオキュラスリフトは、どのような仕組みで利益をもたらすのでしょうか。オキュラスリフトのビジネスモデルは「プラットフォームモデル」です。一方で、ゲーム開発などを行うパートナー企業がオキュラスリフト上で動作するゲームやアプリをユーザーへ提供した際に、その収益の一部を徴収するという仕組みです。ハードウェアのVRヘッドセット単体は599ドルと決して安くはありませんが、これは製造コストが高いため。ヘッドセット自体は原価に限りなく近い価格で販売されるので、利益はほとんど期待できないとオキュラス社 共同創業者のパルマー・ラッキー氏は語っています。

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オキュラスリフトのビジネスモデル
(作成:高橋 博伸)


 プラットフォーム戦略は、プレイステーションなどのゲーム機や、iPhoneアプリなどと同じビジネスモデルであり、高い利益率を達成できるのが特徴です。パートナー企業がコンテンツを作成しやすい開発環境を用意するのがプラットフォーム戦略を成功させる鍵と言われています。優れたコンテンツが多くのユーザーを呼び、多くのユーザーがさらなるコンテンツ開発を促すという好循環が作れるからです。

競合他社のソニー、MS、HTCのVR戦略を比較

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 VRの用途はさまざまですが、まず挙げられるのはゲームです。臨場感のあるアクションゲームは誰でも魅了されるでしょう。しかし、VRにはゲーム機以上の可能性が秘められています。自動車や建築の設計を3次元で行ったり、教育用コンテンツを作成したりする応用も提案されているのです。

 米ゴールドマンサックス社の調査レポートによれば、2025年のVR及びAR(拡張現実)の分野別市場規模は、ゲーム(116億ドル)、医療(51億ドル)、製造(47億ドル)、ライブ・イベント(41億ドル)、動画エンターテインメント(32億ドル)と予想しています。

 オキュラスリフトの他にもソニーの「Playstation VR」、マイクロソフトの「Hololens」、HTCの「HTC Vive」、などがハイエンド向けVR製品として登場しています。いずれの企業も、パートナー企業と消費者をつなぐプラットフォームとしての戦略をとっていますが、それぞれが持つ既存事業の強みによって戦略の方向性が若干異なっています。

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ソニーの「Playstation VR」
既存のプレステユーザーが強みのソニー
 ソニーには世界3600万台を出荷したPlaystation 4があり、他社には真似できない多くのゲーム・ユーザーを抱えています。よりよいゲーム環境としてVRを求める強い動機があるため、ソニーの主要顧客は「ゲームのユーザー」となるでしょう。さらに、Playstation 4とパソコン向けの開発環境は親和性が高いため、ゲーム開発会社はPlaystation 4と「Playstation VR」で同じゲームタイトルの出荷が可能です。ゲームを中心に据えたVRプラットフォームの構築がソニーの戦略であると考えられます。

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マイクロソフトの「Hololens」
ビジネスユーザーを意識するマイクロソフト
 ゲーム用途を強く意識したソニーに比べ、消費者向けの発売予定を未だ発表していないマイクロソフトはビジネス用途に強く傾いています。具体的には、製造業の開発現場、都市計画、教育用の3D人体模型、宇宙探査といった専門的な使用方法が提案されてきました。機能面でも相違点があり、「Hololens」はメガネの中に仮想空間を映すのではなく、現実世界の中に3D映像が浮き上がる手法を採用しています。Office製品やサーバー向けソフトウェアなど、ビジネスユーザーの多いマイクロソフトならではの戦略といえるでしょう。

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HTCの「Vive」
ゲーム、アプリを持たないHTCのねらいは
 HTCはスマートフォンなどのモバイル端末メーカーとして知られています。ゲームやアプリなどのプラットフォームを築いた経験のないHTCにとっては、端末の売り上げを増やす起爆剤として、VRに期待をかけていると考えられます。「Vive」はパソコンと接続する製品ですが、将来的にはスマートフォンからVRが見られる環境を整える可能性が示唆されています。2016年3月には、日本国内のVR事業においてソーシャルゲーム会社のグリーと業務提携したことを発表しましたが、今後もパートナーとの提携が重要になってくるでしょう。

【次ページ】VR普及へ、オキュラスとフェイスブック最大の強みとは
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