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「現在の顧客は常に“オン”になっている。だからマーケティングも常にオンに変えていかなければならない」。そう指摘するのは、ノースウェスタン大学 ケロッグ経営大学院のモーハン・ソーニー教授だ。今後、企業に求められる「オールウェイズ・オン・マーケティング(Always-On Marketing:AOM)」とはいったいどのようなものか。ヤフーやアスクルの社長も取り組みを語った。
これからは“オールウェイズ・オン・マーケティング”の時代
「ワールド・マーケティング・サミット・ジャパン2015」で登壇したノースウェスタン大学 ケロッグ経営大学院のソーニー教授は、戦略マーケティングやイノベーションなどの研究分野に取り組むだけでなく、現場のコンサルタントとしても活動している。
ソーニー教授によると、
米国の調査では1人が1日にモバイル端末の画面を見た回数は163回におよぶという。実に9分に1回。日本ではこれがさらに多い可能性が高い。「
デジタルの世界では顧客は常に“オン”の状態になっている。だからマーケティングも(一時的な)キャンペーン型から(常時オンの)会話型へと変えなければならない」と指摘する。
また、商品の情報や機能は顧客の手元に溢れている。「今考えるべきなのは、顧客の心、あるいは感情と繋がることだ」(ソーニー教授)。
そのためにはソーシャルメディアなどから人々が何を話しているのかを知り、それに基づいて「ブランドストーリー」を作り、さまざまなチャネルを複合的に使って、そのストーリーを伝えていくことが必要だ。
「エンゲージメントを深めていくことで、顧客からの支持を得ることが可能となる。今後はカスタマージャーニーの後押しをしなければならない。顧客の求めるコンテンツを発信し、会話を続け、商品やサービスはその中に埋め込んでいく。継続した取り組みが求められる」(ソーニー教授)
そのためにはビッグデータを活用し、コンテンツベースのマーケティングを実現する必要がある。
「
常に“オン”であるためには、コンテンツに十分な“ストーリー性”がなければならない。またオムニチャネルでコミュニケーション体験をリアルタイムに提供していかなければならない。このような考え方が“
オールウェイズ・オン・マーケティング(AOM)”だ。これが今後、向かうべき目標となる」(ソーニー教授)
ソーニー教授は、オールウェイズ・オン・マーケティングを実現した企業として、米ナイキを採り上げた。
ナイキはマーケティングのやり方を完全に変えたという。
「以前は商品中心の従来型マーケティングを行っていたが、ここ2年間は従来の広告に対する投資を4割も削減し、
広告そのものの位置付けも顧客がより優れたアスリートになるための“サービス”を訴求することとなった」(ソーニー教授)
現在ナイキでは、シューズの中に取り付けたセンサーやスマホアプリなどを活用して、顧客が“アスリートになるための道”を支援しているという。そして自分自身へのチャレンジ、自分のパフォーマンスの改善、あるいは友人と繋がること、コミュニティに参加することといったさまざまな“体験”を顧客に提供している。
「
以前のナイキでは、商品が消費者体験の最終点となっていた。しかし今のナイキにとって商品は、消費者体験を提供するための“出発点”に過ぎない。商品が顧客にコミュニケーションと体験を届けるためのツールになっているということだ。」(ソーニー教授)
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