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- 2015/09/02 掲載
ネスレ日本 高岡浩三社長「IoT・AI時代には従来の産業構造は意味をなさなくなる」
「コーヒー自体にイノベーションはない」状況でのマーケティング
SoftBank World 2015に登壇したネスレ日本の高岡氏は、日本のような競合他社の多い市場で高成長、高収益をもたらすために、「ソリューション・サービス」を提供することを差別化ポイントに掲げていると語った。「食品メーカーは、商品の品質や味を差別化ポイントとして、美味しい、栄養価の高い製品の開発、改良に日夜取り組んでいる。我々は、消費者の課題を解決するソリューション・サービスを提供する点が差別化ポイントと考えている」
「私が入社した頃は、自動販売機で温かい缶コーヒーが選べるようになって、冬場の缶コーヒーの売上が急増した。しかし、これは飲料メーカーではなく、自販機メーカーがもたらした機械のイノベーションだ。そして、スタバをはじめとするカフェの台頭を背景に、自宅でもおいしいカフェを飲みたいニーズに応えたのがバリスタマシンだが、これもマシンの革新といえる」
「日本は人口が減少している一方、総世帯の60%を単身、2人世帯が占めるといわれるように、コーヒーの個人消費機会は増加している。一人ひとりの好みに合わせ、本格的なカフェのバラエティを、自宅でも簡単に楽しみたいというニーズに応えた」
2点目は、「ネスカフェアンバサダー」プログラムである。主にオフィスを対象に、ネスレのコーヒーマシンを無料で貸出し、コーヒーは「アンバサダー」が自費で購入、あとで職場のメンバーから代金を回収する仕組みだ。これも、「オフィスにおけるコミュニケーションの価値を見直す」というソリューションを提供した結果、開始から2年でアンバサダー応募者が20万人を突破し、家庭外のコーヒーの需要を喚起することに成功した事例だ。
「バリスタマシンのおかげで、わざわざ外に買いに出なくても、1杯20円、30円で本格コーヒーが職場で飲める。しかし、アンバサダーが自主的に飲料メーカーの“代理店”役を買って出てくれているのは経済的な理由だけではない。今、オフィスでの会話、コミュニケーションの機会は徐々に減っている。インターネットにモバイル、業務のコミュニケーションも対面や電話でなく、メールが中心だ」
オフィスのメンバーがコーヒーを中心に集まり、コミュニケーションを取る機会が増えた。「アンバサダーは同僚からありがたがられるからこの役目を引き受けている」と高岡氏は語る。
【次ページ】ECの売上を2020年までに売上全体の20%にする
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