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- 2015/07/29 掲載
医療ツーリズム、徳島県が「ピンチをチャンス」にできなかったワケ
がん検診で中国人観光客受け入れ
こうした一般観光客とは別に、医療目的の観光客受け入れも始まっている。4月には帯広市の病院に中国から51人の医療ツーリストが訪れ、がん検診を受けた。札幌市に設立された医療観光会社「メディカルツーリズム・ジャパン」が企画したもので、同社は中国人の医療通訳を養成し、月に治療目的で10~15人、健康診断で20人程度の医療ツーリストを中国から受け入れ中だ。坂上勝也社長は「受け入れ先はまだ関東、関西が中心だが、北海道のニーズはある」と将来に期待する。このほか、大手旅行代理店の近畿日本ツーリストもがん検診と北海道旅行をミックスした中国人向け旅行企画を進めている。
医療ツーリズムとは、検診や治療、手術などを目的とした旅行を指す。国際的な医療ツーリズムが本格的に登場したのは1990年代。米国では費用が安く、待機時間のない診療を求めて南米へ向かう医療ツーリストが出現した。中東の産油国では富裕層が先端医療を求めて欧米へ向かうが、2001年の同時多発テロで欧米の入国審査が厳しくなると、渡航先を経済成長が目覚ましいアジア諸国へ切り替えた。こうした世界の流れを受け、日本も2010年、成長戦略に「国際医療交流」を盛り込み、受け入れへ舵を切っている。
2020年の市場規模5,507億円と推計
中国、台湾、香港など東アジアの中間所得層は現在、ざっと5億人と見積もられている。2020年にはそれが17.5億人まで増える見込みだ。将来、どのくらいの外国人医療ツーリストが日本を訪れる可能性があるのだろうか。日本政策投資銀行が2010年5月に発表した『進む医療の国際化~医療ツーリズムの動向~』によれば、2020年で中国から31.2万人、ロシアから5.4万人、米国から5.9万人と予測している。観光を含めた医療ツーリズムの市場規模は5,507億円で、うち1,681億円が純医療分。さらに、経済波及効果は2,823億円と推定した。医療ツーリズムが大きな可能性を秘めていることを示したわけだが、この数字が楽観的過ぎるとして、否定的な見解を示す専門家もいる。
国内では、神戸市がポートアイランドに医療機関を集積する神戸医療産業都市構想を打ち出し、そこで医療ツーリストを受け入れるとしている。大手旅行代理店のJTBは社内に医療ツーリズムの専門部門を立ち上げた。
そうした中、全国の先鞭をつける格好で、医療ツーリズムに乗り出したのが徳島県だ。徳島県は人口当たりの糖尿病死亡率が長年全国トップを続けてきた。この不名誉な記録の下で培った糖尿病の検診、治療技術を医療ツーリスト誘致に結びつけようと、鳴門海峡の渦潮観光とセットにした中国人向けツアーを発案した。
【次ページ】ピンチがチャンスに変わらなかった
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