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インターネットの利用拡大、スマートフォンやタブレットに代表されるモバイルデバイスの普及などにより、個人の行動にともなう膨大なデータが生成され、ビッグデータとして蓄積されていく。では、このビッグデータをどうやればビジネスで有効活用できるのか―。その最前線に立つのが、自らを「マルチビッグデータカンパニー」と称するYahoo! JAPANであり、将来予測をベースとしたマーケティングへの取り組みを加速させている。
ビッグデータで将来の社会を垣間見る
ビッグデータ活用において、最も期待が高まっている領域の1つがマーケティングだ。
「マーケティングの本質は、生活者が何をやろうとしているのか、明日の気持ちを知ること」と語るのは、スマートフォン&モバイルEXPOの特別講演を行ったヤフー代表取締役社長の宮坂学氏だ。インターネットによってマス広告からワン・ツー・ワンへの劇的な変化を遂げてきたマーケティングが、ビッグデータによってさらに大きく変わっていくと示唆し、「タイムマシンがなくても、ビッグデータによって明日、明後日、1年後の社会のことを垣間見られるようになるかもしれない」と語る。
宮坂氏が例の1つとして紹介するのは、2012年に行われたアメリカの大統領選挙である。ニューヨーク在住の統計学専門家、ネイト・シルバー氏はビッグデータを使った数理モデルによって、各州における勝敗を予測した。その結果、著名な政治評論家たちが予想を大きく外していく中で、シルバー氏は実に50州で予測を的中させたというのである。シルバー氏が作成した数理モデルが、専門家の勘や経験に基づく推測よりも、圧倒的に優れていることを証明した形だ。
もう1つの例が、映画「マネーボール」でも話題になった、メジャーリーグにおけるセイバーメトリクスによる野球革命である。1997年、深刻な財政難にあったオークランド・アスレチックスのGMに就任したビリー・ビーン氏は、裕福なチームに比べて3分の1の低予算で、いかに勝てるチームを作ることができるかと考えた。そこで行き着いたのがデータを駆使した野球であり、打率よりも出塁率を重視したチーム編成を追い求めた。こうしてビリー・ビーン氏は、全米で最も勝率の高いチームを作り上げたのである。すなわち、1勝あたりのコストは3分の1になった。
では、Yahoo! JAPANにおけるビッグデータ活用の取り組みはどうなのか。宮坂氏によると、現在同サイトの月間総ページ数は約507億、1日あたりのユニークブラウザ数は約5,600万に達している。
「この数字は、ユーザーが行った1つ1つのクリックやタップの積み重ねであり、そこには何らかの意識や意図が込められている。こうした膨大な“気持ち”を汲み取ることで、さまざまな将来が見えてくるのではないかと、取り組みを進めている。」(宮坂氏)
Yahoo! JAPANにしかできない個人のモデル化とは
将来予測に向けた試みの1つとして行われているのが、「Yahoo! JAPANの検索キーワードから、景気動向を先読みできるか」というテーマである。
同社は、年間約75億種類におよぶ検索キーワードから、毎日一定以上検索された約60万種類のキーワードを抽出。さらに、これを数理モデルで分析することにより、内閣府が毎月発表している景気動向指数と高い相関を持つ196のキーワードを抽出することができた。これを「Yahoo! JAPAN景気指数」と名付け、運用を開始したという。
「景気動向と正の相関を表すものとして、『ターニングポイント』『年収1000万円』『ヴィトン ショルダーバッグ』『ショートヘアカタログ』といったキーワードが抽出された。一方、負の相関を表すものとして抽出されたのが、『ろうきん』『帝国データバンク』『商工リサーチ』『雇用』『減損会計』といったキ-ワード。これらのキーワードがどれくらいの頻度で検索に使われているかを分析することで、景気が良い方向に向かっているのか、悪い方向に向かっているのかを読み取ることができる。」(宮坂氏)
【次ページ】マルチビッグデータカンパニーが手がける個客マーケティング
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