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「ビッグデータ」というキーワードが世間を賑わせている。なぜビッグデータが自社にとって重要なのか?なぜ時間とコストをかけてまで取り組まなければならないのか?といった疑問をなかなか払拭できないのも無理からぬことだろう。ただ、ガートナー リサーチの鈴木雅喜氏は「ビッグデータの意義と未来を見誤れば、ITを企業経営に生かすうえで、大きく立ち遅れることになりかねない」と注意を促す。ビッグデータが自社にもたらす価値をどのように見出せばよいのか。インフラへの要件や注目するべきベンダーとは?
ビッグデータは本当にバスワードなのか?
ビッグデータの企業活用について、「企業がビッグデータに関する行動指針を考える前に、まず企業から見たITで対処可能な範囲や、活用対象となるデータの範囲について、従来の常識を一旦取り払い、ビッグデータとは何か? という点についてしっかり理解する必要がある」と説くのはガートナーの鈴木氏だ。
ビッグデータは、テクノロジーの飛躍的な進歩に歩調を合わせながら、企業IT部門をより戦略的、自立的で強固な組織とし、自社ならではの価値の創造を進めることを促している。
ではビッグデータとは一体何なのであろうか? ガートナーでは、ビッグデータを理解するために「速度」(Velocity)、「量」(Volume)、「多様性」(Variety)、「複雑性」(Complexity)という4つのパラメータからみているという。
ビッグデータの意味は文字通り「大きなデータ」であるが、現在議論されているところは、これらのパラメータのいずれか、あるいはその組み合わせによって、これまで対処できなかったことを実現できるようになった点だ。
ビッグデータは、ソーシャルメディアやセンサーなどのデータソースとともに語られるが、必ずしもそれらに限定されるものではない。ビッグデータは、IT活用の幅を飛躍的に広げる可能性を持つため、こうした新しい活動や考え方を指す場合もある。
4つのパラメータのうち、たとえば「速度」(処理速度)と「量」(データ容量)の組み合わせでビッグデータを捉えると、より理解が深まるかもしれない。もし扱うデータ容量が数百ギガバイト程度であれば、この容量自体はさほど大きくはないだろう。しかし、そのデータ処理が遅くて現実には使えないこともある。それが新テクノロジーで使えるようになれば、ビッグデータと考えられる。
従来からの技術で対処できたものはビッグデータとは言い難いが、より幅広いデータを取得・保存し、容量が増えるか高速化により新しい価値をもたらすならば、それはビッグデータなのだ。「ビッグデータは新しい機会であり、限界への挑戦」(鈴木氏)。
ではビッグデータの将来への可能性や展望はどうだろう。想定される典型例は、ソーシャルメディア分析、Webログ分析(クリック分析、高度なレコメンデーションなど)、店舗分析(顧客動向、会話分析)、POSデータ分析といった「小売業種/マーケティング」へのビッグデータであろう。
ソーシャルメディア上のデータ活用はトレーディング、株価へのセンチメント分析など「金融業界」にも広がっている。対象となる株の銘柄に関連性の高い言葉を抽出して辞書を作成することで、顧客への有効な情報提供を目指す動きもある。
また社会基盤を織り成す交通・電力・ガス・水道など「公共分野」下の適用も考えられる。警察・犯罪、道路渋滞といった情報を活用できるし、いま注目を浴びている電力需給の最適化やスマートグリッド、スマートハウスなどにも対応する。ビッグデータへの模索は、これらの分野以外にも展開されている。
ビッグデータがもたらす真の価値とどう向き合うべきか?
とはいえ、なぜビッグデータが自社にとって重要なのか? なぜ時間とコストをかけてまで取り組まなければならないのか? といった疑問をなかなか払拭できないのも無理からぬところだ。
こうした疑問の背景には3つの要因がある。1つ目は、ビッグデータが先述の3つのV、1つのCといった多様なパラメーターで捉える概念であり、理解が容易でないこと。2つ目は、現在の延長線上で戦術を考ると、ビッグデータがもたらす未来像が実体として感じにくいこと。そして3つ目は、競合との差別化もその方法や有益なデータが業種・業態、企業ごとに違うこと。これらが足踏みの要因になっている。
「ビッグデータの方向性は企業によって異なる。捨てられていたデータや見逃されていたデータなど、ソーシャルをはじめとして、社外にセンサーとして機能するデータはないのか、自社データに着目した探索を進めることが重要だ」(鈴木氏)。
ビッグデータは自分たちに無縁の話だと思う前に、まず不要論の誤解を解消し、どう向き合うべきか考えたほうがよいという。ビッグデータは「経営からITインフラまでに関わる話」であり、対象データは幅広く、特定の使い方に閉じたものではない。
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