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政府によるオープンデータ化への取り組みが活発化している。その代表例が、昨年4月にスタートした地域経済分析システム「RESAS」(Regional Economy Society Analyzing System:リーサス)だ。内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局でビッグデータチーム企画官 兼 経済産業省 地域経済産業調査室長の田岡卓晃氏が地方自治体や教育機関における活用事例を解説した。
ローカル・アベノミクスのカギ、「RESAS」
RESASは、経済産業省が開発してきた地域経済分析システムを、さまざまな分野のビッグデータに広げて分析できるようにしたものだ。数十年後には、いくつかの地方都市が消滅する恐れもあると言われるなかで、いま国全体として地方創生に本腰で取り組み始めている。政府は、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を練り、この2016年から地方創生への活動に着手しているところだ。
「今年、地方創生は実行段階のステージに入りました。2060年代でも1億人の人口を維持することが目標です。そのために出生率を高めて、人口減少に歯止めをかける必要があります。また東京一極集中を是正し、地域経済を活性化させたい。まち・ひと・しごと創生基本方針 2016 にある『ローカル・アベノミクス』の実現に向け、各分野の施策の実行と拡充が求められています」(田岡氏)
創生基本方針2016のポイントとなるローカル・アベノミクスでは、観光資源を最大限に活用することでブランドを高めたり、モノづくり企業によって地方のイノベーションを促進したり、地方のサービスの生産性向上や人材育成を推進することなどが掲げられている。地方企業にIT投資を促し、稼ぐ力をつけてもらうことがベースになっている。そのなかでRESASの位置づけは、地方創生3本の矢「情報支援」「人材支援」「財政支援」のうち、情報支援を担うものだ。
田岡氏は「人口減少・過疎化が進み、疲弊する地域経済を活性化させるためには、自治体が地域の現状を把握し、その将来像を予測したうえで、地域の実情や特性に合わせた施策を練る必要があります。そこでRESASは、企業間取引・人口動態・人の流れなど、さまざまなビッグデータを収集し、マップやグラフに落とし込んで、わかりやすく見える化するシステムにしました」と、各地域で次の一手を考えるツールとしての目的を説明する。
現在、RESASは「産業」「地域経済循環」「農林水産業」「観光マップ」「人口マップ」「消費マップ」「自治体比較」といった7分野で、合計253の分析マップを閲覧することが可能だ。
たとえば産業マップでは、企業数・雇用・売上で地域を支える企業や、行政区域を超えた産業のつながりを把握できる。地域経済循環マップでは、自治体の生産・分配・支出の金流を分析することが可能だ。農林水産業マップは農産部門の販売や金額の割合が分かる。
また観光マップでは、観光客がどこからどこに来たのか、インバウンドの観光動向を見える化している。人口マップは、人口の推計・推移・人口ピラミッド、転入・転出などが分かる。消費マップでは、飲食料・日用品の購入金額・点数を商品別に比較することが可能だ。
「もし対象企業が農林水産業ならば農林水産マップを、観光業・サービス業ならば人口マップや観光マップを活用できます。地域産業構造の分析だけでなく、地域企業が属する産業の財務状況の分析も可能です。産業間と地域間を比較することで、地域企業が属する産業の正確な位置づけが行えます」(田岡氏)
【次ページ】RESASによる地方活性化事例と大学・高校におけるRESAS活用事例
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