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  • 2015/05/28 掲載

ヒット商品の芽は半径3メートル内にあり!「行動観察」という手法

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商品をヒットさせたい。マーケターなら、いや全てのビジネスパーソンが、願ってやまないことだろう。そのヒットを生むための手法として、従来は意外と活用されていなかったものがあるという。「行動観察」だ。それを駆使して有名企業のコンサルティングで実績を挙げているのが、フィンチジャパンの髙橋 広嗣 氏。先ごろ同氏は『半径3メートルの「行動観察」から大ヒットを生む方法』を上梓した。同氏が実践する「行動観察」、その鍵を握る「エクストリームユーザー」の探し方などについて、話をうかがった。

(聞き手は編集部)

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フィンチジャパン 代表取締役社長
髙橋 広嗣 氏

マーケティング3.0時代には行動観察を

――これまでのご経歴について教えて下さい。

髙橋氏:大学、大学院では、破壊力学を勉強しました。飛行機の亀裂がどのように進み、壊れるのかといったことを解明するような学問です。大学院では宇宙科学研究所に行かせてもらい、ロケットで使われる新素材の基礎研究に参加していました。その後、野村総合研究所でコンサルタントとして7年ほど働きました。学生時代は理系だったので、モノづくりに近い専門領域でコンサルティングをしたい思いがあり、2006年にフィンチジャパンを設立し、「もうひとつの、商品開発チーム」をスローガンに掲げて、今に至っています。

――今はマーケティング3.0の時代だと言われています。マーケティング手法の変遷について簡単に教えて下さい。

髙橋氏:マーケティング1.0は、メーカーやサービス業者が商品を売るためにCMなどを流し、認知してもらうものでした。特別なターゲットはなく、興味を持った人に買ってもらうモデルです。それがマーケティング2.0の時代になって、女性向け、シニア向け、というようにターゲットが明確になり、そのためのデザインや機能が商品に盛り込まれるようになりました。誰がどんなニーズで買うのか、それに合わせてモノづくりをやっていこうという世界です。多くの企業の商品開発の現場では、マーケティング2.0の考え方がベースになっているように思います。

 それが最近では消費者はモノを買うとき、メーカーと自分、という相対する立ち位置ではなく、友達に評判を聞いたり、ECサイトのレビューを見て判断したりと、社会的価値や世の中の影響を受けて購入を決めるようになってきました。これが、マーケティング3.0の時代です。どうやって口コミを広げていくのか、企画を立てる段階から口コミなど社会的影響を仕込んで、商品化するやり方への模索が始まっています。まさに今、企業ではマーケティング3.0時代に合った、次世代の商品開発への挑戦が始まっていると思います。

――では、それを踏まえまして、ご著書に書かれた「行動観察」についてご紹介下さい。

髙橋氏:端的には「人間観察」のことです。その人自身を全体的に見て、一体何が欲しいのか? どんな生活をしているのか? 身の回りにはどのようなモノがあるのか? 多くの変数を使って観察することを、行動観察と言っています。人の生活に深く入り込み、その人の価値観、考え方、生活ポリシーなどを理解する手法と言えるでしょう。

 観察すべき変数は、テーマによって変わってきます。この変数は非常に重要ですが、最初はうまく決められないこともあります。行動観察を使って商品開発を行う際は、仮説を頭の中からひねりだすのではなく、先入観のない新しい発想を、つまり新しい変数のヒントを示してくれる、「エクストリームユーザー」に出会うことから始めます。

 以前、柔軟剤の調査をしていたときのことです。ある女性ユーザーが、たくさんの柔軟剤をずらりと並べて使っていました。調べてみると彼女は、好みの香りを下着や枕に付けるために使い分けていたのです。柔軟剤を、香りのために。このような新しい使い方をしているエクストリームユーザーから、ヒット商品の発想が生まれることがあります。

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『半径3メートルの「行動観察」から大ヒットを生む方法』

――行動観察には「探索」「検証」と2つの段階があるとのことですが…?

髙橋氏:商品のアイデアを出すとき、自分が出会った人や本など、頭の中の情報を組み合わせることになりますが、新しい発想をパッと思いつくのは難しいものです。当たり前でない何かに出会わない限り、先入観から脱することはできません。そういう出会いの機会を多く作るのが「探索」段階の行動観察です。ここでは、とにかく多くのユーザーに当たる必要があります。もともとエクストリームユーザーは多くいるわけではありませんから、確率の問題で、たくさん出会ってみることが大切です。

 一方、商品企画が決まり、実際に商品を世に出そうとするときに、本当に売れるかどうか確信が持てないことがあります。いざモノができあがった段階でコンセプトがぐらつくこともあります。そのコンセプトを再確認したり、決め手を見つけたりする際に活用するのが「検証」段階の行動観察です。すでに投入した商品が予想より売れなかった場合に、その原因を検証してみるときにも用いられます。たとえば、P&Gの消臭芳香剤「ファブリーズ」は、じつは家が清潔な人ほど多く利用しているという調査結果が出て、コンセプトの決め手になりました。

【次ページ】 エクストリームユーザーはどこへ現れた?
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