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自動車大国ニッポンの象徴でもあった国際見本市「東京モーターショー」の地盤沈下が顕著となっている。2年に1度の開催年である今年は、10月24日~11月4日に幕が上がる。だが、海外の主要メーカーがほとんど参加せず、今年のショーは国内メーカーばかりとなる可能性が高くなってきた。モーターショーに出展企業が集まらないというのは、東京に限った話ではなく、実は全世界的な傾向といって良い。一部からは、自動車の見本市は時代遅れになったとの指摘が出ているが、見本市というのは、常に時代を反映するものである。自動車産業が100年に1度の変革期を迎えている以上、見本市のあり方が変わるのは当然のことと考えるべきだろう。
もはや“国内”モーターショーに変貌?
東京では2年に1度、自動車の国際見本市「東京モーターショー」が開催されてきた。東京モーターショーは歴史が長く、前身となる見本市が開催されたのは1954年のことである。パリ、フランクフルト、ジュネーブ、デトロイトと並んで東京モーターショーは、世界5大モーターショーと呼ばれ、自動車業界において最も重要なイベントと位置付けられてきた。
航空業界も同じだが、グローバルにビジネスを展開する業界では、各国のメーカーがそれぞれ個別に新製品を発表するよりも、国際的なイベントに合わせて発表した方が圧倒的に効率が良い。
国際的な見本市があれば、メーカーの関係者やマスコミ関係者が一堂に会することになるので、多くの商談や会合、取材を同時並行で進められる。メディア側も大きなイベントがあると記事にしやすいので、各社の新製品が誌面に取り上げられる確率も高くなる。
こうした経緯から、各社は主要なモーターショーに合わせて新型モデルを発表し、メディアがこれを一斉に報道するという流れが確立していた。だが、近年になって、自動車業界におけるこうした定例行事がうまく機能しなくなっているのだ。
2019年10月に開催される東京モーターショーは、主要な海外メーカーが出展を見送っており、国内モーターショーに近い位置付けとなる可能性が高まっている。しかも、前回と比較して会場が狭くなり、一部の展示は近隣エリアに設けられた別会場で行われる。
会場については、東京オリンピックを控え、メイン会場として使ってきた東京ビッグサイトの利用が制限されるという事情があるものの、逆に言えば、狭い会場でも十分との判断が働いたともいえる。かつて東京モーターショーの来場者数は100万人を超えたこともあったが、前回の2017年の来場者数は77万人にとどまっているのが現実だ。
SNSの普及は要因の1つでしかない
東京モーターショーに出展する企業が減っていることには主に2つの理由があると考えられる。1つは相対的に日本市場の重要性が低下したこと、もう1つは自動車という商品の位置付けが根本的に変わってきたことである。
自動車業界における主要市場は北米と欧州であり、かつての日本市場はそれに次ぐ準主要市場というポジションだった。リーマンショック以降、世界経済は大きく成長したが、日本の自動車市場だけは縮小が続いており、全世界的に見て日本市場の重要性は大きく低下している。
一方、中国経済の飛躍的な発展によって同国の自動車市場は北米市場に代わって世界の中心となりつつある。中国で開催されている上海モーターショー、北京モーターショーの重要性は年々高まっており、各メーカーも東京ではなく中国で開催されるモーターショーを重視するようになってきた。
ここまでは、経済発展の違いによって地域格差が生じているという話だが、問題はそれだけにとどまらない。実は、欧州や米国で開催されるモーターショーでも出展企業が集まらなくなっており、全世界的にモーターショーを敬遠する動きが顕著となっているのだ。
一部からは、ネットの普及によって各メーカーがSNSを使ったマーケティングにシフトしており、見本市そのものの重要性が低下しているとの声が出ている。
たしかに近年、SNSの重要性が高まっているのは事実かもしれないが、一方で自動車というのは依然としてマス・マーケティングの頂点に立つ商材の1つである。
大量のCMを打ち、全国の販売代理店で一斉に販促活動を行うのが基本路線であり、その意味では、国際的な見本市と自動車との親和性は依然として高い。ネットの普及という理由だけで、モーターショーが衰退しているというのは、少し言い過ぎではないだろうか。
【次ページ】自動車の役割が激変したことで見本市の役割も変わる
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