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- 2019/06/07 掲載
J、V、Bリーグで激論、誤解していた「“ファン”と“来場者”の違い」とは
J、V、Bリーグに共通する課題とは?
近年、グローバルで大きく成長を遂げている産業の1つに、スポーツ産業がある。日本でも成長戦略の1つにスポーツ産業を据えており、2012年の5.5兆円から2025年には15.2兆円の急拡大を目指している。この成長の鍵を握るのは、デジタル化の加速で従来と大きく変わりつつある「顧客体験(CX)」のデザインだ。先ごろ都内で行われた「CX DIVE 2019」では、サッカー、バレーボール、バスケットボールのプロリーグを担うキーマンたちが、どうすればさらに来場者を増やすことができるのか、真剣に議論を交わした。
まずは、国内での競技人気も高く海外プロリーグの成功も著しいバスケットボールだ。2016年、日本の男子バスケットボールのプロリーグである「ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ」(Bリーグ)が開幕した。
およそ3年が経った現状について、Bリーグの常務理事・事務局長を務める葦原 一正氏は「今はどれだけ規模を大きくするのか、それが主眼になっています」と明かす。
「2年間でリーグとチームの売上は2.3倍になりました。野球やサッカーのCAGR(年平均成長率)は約4%なので、Bリーグは成長率だけは良いと思います。とはいえ全体で約270億円なので、始まったばかりの状況です。Bリーグは、スマホを活用したデジタル入場を導入し、若い層を取り込めるような設計にしています」(葦原氏)
一方、1993年に開幕した「日本プロサッカーリーグ」(Jリーグ)はどうか。2018年には開幕25周年を迎えたが、Jリーグには地域サッカーを核としたスポーツ文化の確立を目指す「100年構想」があり、ようやく四半世紀を終えたところとも言える。
Jリーグのデジタル コミュニケーション戦略部で部長を務める杉本 渉氏は、「やっていることは他のスポーツと同じで、市場規模の拡大です」とした上で、Jリーグの現状を語る。
「25年も経つと環境もかなり変わってきます。かつてJリーグが大ブームとなり、有名な選手が活躍して、チケットを取れない状況でした。(Jリーグのチェアマンや日本サッカー協会の会長を歴任した)川淵 三郎氏は、データの感度も高く、顧客へのメッセージングも明確でした。トップの姿勢は大事だと思います」(杉本氏)
一方、司会を務めた「日本バレーボールリーグ機構」(Vリーグ)所属のヴォレアス北海道を率いる池田 憲士郎氏は、エンターテインメントを重視したゲームの演出や斬新なチーム運営の手法から「バレー界の異端児」と呼ばれている人物だ。わずか2年という短期間で、旭川を拠点に1000名規模の来場者を集めることに成功している。
世界で成功しているリーグが上手くいっている理由
視野を世界に拡げるとどうだろうか。スポーツビジネスで現在、世界で最も上手く行っているのはNBA(北米の男子プロバスケットボールリーグ)と言われており、マーケティング施策も進んでいるという。では、なぜ上手く行っているのか。その理由はシンプルで、コミッショナーが顧客視点に立ち、顧客の呼び込みに熱心だからだ。そういう意味で、最近はJリーグもマーケティング施策に取り組んでいる。
「この3年ぐらいで、社内で情報共有を始めるようになりました。来場者数を予測してAIの分析と比べるなど、仕組みが出来上がってきました。Jリーグのブームが依然より少しずつ下がり、ようやくいろいろな施策を講じていく雰囲気になってきたと感じています」(杉本氏)
【次ページ】チームを盛り上げるためにデータ分析は重要だが、熱いパッションも必要
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